「行きたい? リンちゃんの所」
唐突にミクがそう切り出したのでレンはポカンとした表情でミクを見つめた。
「え・・・?」
「行きたい、て顔がそう言ってるよ」
クスクスと笑いながらミクはレンの顔を指してみせる。そして、フ、と息を付いた後に
「いって来なよ」
と言った。
「は・・・?」
「言いたい事、言って来な、て言ったの。分かって来たでしょ? 自分の気持」
そう言うとミクは不意にレンの方に近付き、トン、とレンの胸板に手を置いた。
「自分が誰を思ってて、誰に会いたいのか、て事が、もう此処で分かってるでしょ?」
此処、と言った時にミクは力強くレンの胸板をグイ、と押した。レンは下げていた頭を挙げ、ミクの方を見る。その表情を見てミクはニコリと微笑むとス、とレンから手を離した。
「分かったみたいだね。じゃ、これから言ってらっしゃい!」
「え? でも・・・」
「仕事の方なら大丈夫! 私が社長に言っとくから! 私、此処の社長よりも権力あるし!」
いや、知ってるし。
「ん? 何? それともお金の事? レン君って・・・○○県だったっけ、出身。なら・・・新幹線使えば二時間ちょいで着くか・・・。新幹線って大体大人一万以上使うからなぁ・・・。あぁ、めんどい!」
頭を抱え、悩んでいた素振りを見せていたが不意に大声でそう叫ぶと自分のバッグから財布を取り出し五万ほどの札をレンに押し付けた。
「それ位なら帰りも足りるでしょ! あ、残ったお金は自由に使って良いから! 私に返そう、何て思わないでよ! 一度あげたんだから、そのお金はもうレン君の何だからね!」
力強い口調で言われ、色々と突っ込み点は多いもののレンはあえて深く突っ込まずミクから札を受け取った。そしてそれを己の財布にしまいながら、
「有難う御座います、ミクさん」
と言った。ミクは先程の気迫とは打って変わった何時もの表情に戻り、
「如何致しましてなんだよ」
と微笑みながら言った。その微笑を見た後、レンも微笑み返し、軽く身支度を整えるとスタジオを出て行く、前に入り口で一回立ち止まり、ミクの方を見た。
「何かな?」
その視線に気付いたミクがレンに問うと
「ミクさん、リンに会ってるでしょ? 本当は」
と聞いてきたので此処は包み隠さずに言った方が良いね、とミクは判断し、うん、そうだよ、と応えた。
「やっぱり・・・。でなかったらこんなに俺にリンの所行け、何て言いませんもんね」
「迷惑、だったかな?」
やはり少し罪悪感を感じミクがそう問うと、「いや、全然」とレンは首を横に振った。
「俺の気持に気付かせてくれたんですから、それに、お金まで・・・。ミクさんには感謝ですよ。有難う御座います」
それだけ言ってレンは入り口から去って行った。
一人、残されたミクは「さーぁ、社長を黙らせるぞぉ!」と意気込んで社長室に向かったとか向かわなかったとか。
♪~♪♪~♪
リンの携帯が鳴る。その音にリンはハッとした。この着信音は、たった一人だけにしか設定してない、リンにとって、大切な、音。
急いで携帯を取り出し確認する。Eメールの着信。そこに表示されていたのは、
「Len」
の文字。慌ててメールの内容を確認する。其処には簡潔に、こう書かれていた。
「今から帰る。待っててくれる?」
たった一行の短いメールだったがリンには涙が出る程嬉しいものだった。慌てて手(正確には指だが)を動かし、返信する。
「待ってるに決まってる。あの、丘の上で待ってるから」
丘の上。それだけでレンには通じるはずだ。小さい頃、良く二人で遊んでいた、思い出の場所。
少し街よりも上の方にあり、夜になってあの丘の上に行くと街中がイルミネーションで彩られた様でとても綺麗だったのを覚えている。特に、冬、クリスマスの時期ともなるとその鮮やかさは何時も以上だ。
その、丘の上、時期はクリスマスよりも少しずれた時期、リンとレン、二人の誕生日の日。其処でリンはレンに最初で最後の―今は最後の―プレゼントを貰った。それは今も髪を結う時に用いている、あの白いリボンだ。
何時もは素っ気無いレンが自分の為に買ってくれた、その出来事がリンにとって何よりも嬉しかったのだ。
ねえ、レン、今からキミに会えるんだよね。あたし今、すっごく嬉しいよ。
でもね、生きてるからこそ、悲しい事だってあるんだよ。
時を止める、なんて言って見るけども、出来るはず無いのは分かってるよ。
でもね、「どうか」って願うんだ。unteach・・・
思うよりも早く、リンは駆け出していた。目指すは、レンとの思い出がある、あの丘の上へ。
ねえ笑っていいの? ねえ泣いてもいいの?
ねえ怒っていいの? 好きになっていいの?
ねえキスしていいの? ねえ抱いてもいいの?
アタシだけのキミにしてもいいのかな・・・
辺りが僅かずつ、仄暗くなっていく。それでもリンは走り続けた。息が辛い。苦しい。けれど、足はもう、止まらない。そして、辿り着いた、丘の上。まだレンは来ていない。
はぁ、はぁ、と切れている息を整え、ハァ、と盛大に息を吐く。そしてとぼとぼと丘の上目指して歩き始めた。もう、頂上は近い。
丘の上につくと、リンは其処から街を見た。リンとレンが育った街。今はクリスマスが近いからか、イルミネーションが仄かに派手になっている。
暫くその景色を眺めていたが、不意に鳴った携帯の着信音によってリンは現実に引き戻された。
着信音は電話で、リンは慌ててボタンを押し、「もしもし?」と声をかける。
「ごめん、待たせた」
声が二重に聞こえた。ハッとして携帯から耳を離し、振り返ると其処にはレンがいた。手に携帯を持ったまま。
「・・・笑ってる」
「リンだって」
「泣いてるの?」
「レンだって」
「・・・・・・・・・好き、だよ」
「俺だって」
「また、会えるから」
「・・・待ってる」
「何時になっても、あたしは、待ってるから。ずっと、ずっと、待ってるから」
「待たせてばっかだけど、でも、絶対、絶対、迎えに来るから。・・・待っててくれ」
待ってる
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