「ヤアッ!ハアッ!」
バン!
「面ー!」
「はあっ…やっぱメイコ先輩は強いな~。勝てないや」
「いえ、一回取られそうになったわ。あなたも強くなってる。いつか私に勝てるかもしれないわよ?」
「…えへへ、有難うございます、先輩」
ここは剣道部。その中の一人、咲音メイコは、将来有望な、真面目で、後輩や先生からの信頼も厚く、部活内トップの強さを誇る女生徒だった。
「おつかれさまでしたー!」
「あー、つかれたー。帰ったらシャワー浴びて寝ようかしら」
「せんぱーい!一緒に帰りましょー!」
「ええ、いいわよ。」
幸せな時間。いつまでも、ずっと続いてほしかった。
ガチャ…。
「ただいま~。って言っても誰もいないわよね」
荷物をその辺に置き、ソファーにどさっ、と座り込んだ。
そしてそのまま、メイコは疲れからかゆっくりと、深い眠りについてしまった。
「ん…?ここは…何処かしら…」
目覚めるとそこは見覚えのない森の中。
空は青く明るく、昼であることが分かった。
立ち上がると、体が少し重いことに気が付いた。
「え…何かしら、これ?」
体には来ていたはずの制服ではなく、赤い鎧が纏っていた。
「アリス」
不意に、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、そこには少年が立っていた。
「えっと、誰かしら?アリス、って人を探してるのなら人違いよ」
「いいえ、あなたですよ、ハートアリス。ぼくはゆめ。あなたのほしいもの……力、でしょう?」
舌足らずな幼い声が脳内に響く。
「……え?どういう、ことよ…?」
「力が、ほしいんでしょう?…それを、プレゼントしますよ。」
少年が指差した先にあったのは、すらりと長い剣だった。
太陽に照らされ銀に輝くそれは、メイコの心を掴んで離さなかった。
「そのけんは、なんでもきりすてることができる。あなたがつよいいしをもっていれば、ですが。あなたのこころがよわくなれば、そのけんのきれあじがよわくなる。……がんばってくださいね、ハートアリス」
「ちょ、ちょっと待ってよ!これからどうすればいいの!?この剣で何を斬ればいいのよ!?アリスって、どこの誰なのよ!?」
「だから、アリスはあなたです。すきにしてください、あなたのおもうままにうごいてください」
そう言うと、少年は消えていった。
「なんなのよ…」
そう言いながら、メイコは自分の頬をつねった。
「うっ、いたい…夢じゃ、ないの…?」
夢が登場するのに夢じゃないなんて、と思いながら、森の奥へと入っていった。
勿論、剣を片手に。
十分は経ったろうか。
森に入ったはいいものの、何時まで歩いても出口はもちろん、周りには草木が生い茂るだけでなにも無い。
「好きなように、って言われてもなぁ…てか、ここどこかしら?迷っちゃった…」
「おい」
声がしたほうへ向くと、自分と同じ栗毛の青年がいた。
「えっと…私?」
「それ以外に誰がいんだよ…お前、アリスだろ?」
アリス。
夢、と名乗ったあの少年にもそう呼ばれた。
「…違うわ。さっきも小さい男の子にそう呼ばれたんだけれど、人違いよ」
「いや、お前は絶対ハートアリスだ。俺は元ハートアリス。人違いとかじゃない」
何の根拠があってそう言い切れるのだろう。しかも、元・ハートアリスと言った。
誰だ?何なんだ?アリス、とは。
「迷ってんだろ?こっちだ。」
手を引いて青年は歩き出した。
繋いだ手から伝わる柔らかな体温。
一人暮らしであるメイコには、なんだかとても懐かしく、そして安心出来るものだった。
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