携帯の画面に薄く映る自分の目をみる。
青というより蒼。そう言ったのは親友。
「ルカちゃん。」
なんだよ。
その呼び方で私を呼ぶな。
私をそうやって呼んでいいのはあの子だけ。
リンだけって決まってるのに。
「女好き。」
「ひどい。そこまで女好きじゃないし。」
「浮気者。」
「彼女がいないんだから浮気も何も。」
「リンに言ってやる。」
「……それだけは勘弁して。」
『昨日、駅前で誰といた?』
そうメールを送ったら、教室まで押しかけてきた。
鏡音レン。親友の好きな人。
「なんでこっちくんの。リンには絶対近づかないでよ?」
「無理だよ。」
「無理じゃないでしょ。リンは私の義妹になるから。」
「それはルカちゃんが勝手に言ってるだけでしょう。」
「半分本気。」
「半分は嘘なんだね。」
そう。
リンが私の弟と付き合うなんて嘘。絶対にないことくらいわかってるのに。
だってリンは、好きな人と両思いだから。
「許さないから。」
「何を?」
「私はリンに言わない。」
「…本当?」
驚いたようにこっちを見る鏡音。
「だって、駅前で鏡音が初音といたのを教えてくれたの、リンだもん。」
瞬間。鏡音は目を見開いて真っ青になった。
「言わなくても、知ってるってこと。」
「……。」
「わかってる? わかってるよね。これ浮気だよね。」
「……。」
「リンの気持ち知ってるくせに。それでも他の人に手出すんだ。」
「……。」
何も言わない鏡音を見る。
真っ青な顔で、少し泣きそうだったけど。
「最低。」
リンを傷つけたのはそっち。
「好きな子がいるくせに、最低。」
もう嫌われたと思ってるでしょ。
そうだったらどれだけよかったかな。
「もう近づかないで。…リンを傷つけるだけなら、近づくな。」
リンのことが好きなくせに、他の女にも手をだすなんて、最低。
そんなだから、リンを泣かせる。
私の親友を泣かせてしまう。
「話はそれだけだった? リンに言わないでって言うためだけにここまできたの?」
睨みつける。
それだけで、鏡音は少し怯む。
「リンは泣いた。諦めついたんじゃない?」
だから、
「だから鏡音も諦めたら?」
リンがまだ鏡音のこと好きだなんて、絶対教えてやらない。
リンが好きな人は鏡音。
鏡音の好きな人はリン。
二人は両思いらしい。
携帯を操作していると上から声が降ってきた。
「あれ、違うから。」
「…あれ? まだいたの?」
すでに自分の教室に戻ったと思ってた。
ちょっとびっくりして見上げると、鏡音が少し困ったような顔をしていた。
「あのさ、あれ、だから違うんだって。」
「あれって?」
「駅前の。」
駅前。
昨日リンが泣いてた原因。
そこで鏡音がしていたこと。
「言い訳?」
「いや、そうだけど違くて、」
「じゃあなに。」
「だから、好きな人できたから、別れようって、」
「彼女じゃないのに“別れよう”? おかしくない?」
「彼女じゃないけどそういう関係だったから。」
やっぱり最低だ。
そう思った。
「だから、駅前でいったら、えぇと、いきなりキスされて。」
「ほぅ、そこをリンがみたってこと?」
「そう。」
「少女漫画じゃあるまいし。」
「ほんとだって、嘘だと思うならミクに聞いてみなよ。」
ミク、って呼ぶんだ。
リンは鏡音さんなのに。
「ねぇ、それ私にいうの。」
「え?」
「私は、そういうことわざわざリンに言ったりしない。」
「…え、」
「自分で伝えてよ。そういうこと。」
「……。」
鏡音がリンのことを好きになったのは最近のことらしく、リンに近づきたくて私に近づいたらしい。
それをリンが勘違いして、私が鏡音を好きになったら、とか不安になって、泣いて、
「ねぇ、どれだけ泣かせたら気が済むの。どれだけ、苦しませたら気が済むの。」
リンを泣かせる奴なんか大嫌いで、だから、私は鏡音が嫌いなのに、
リンは鏡音が好き。泣かされても、他の女とキスしてても、大好き。
「他の女子とも関係終わらせようしてしてるの?」
本気で好きになった人がいるんでしょ。
「うん。だから、こんなところで勘違いされたら困る。」
全部終わったら、告白しようと思ってるのに、
そういった鏡音が憎たらしくて、泣きたくなった。
「リンはあげないから。」
「残念。俺が貰います。」
「絶っ対っ、ヤダ!!」
私の親友が好きになった人はすごく最低な男だったけど、結構リンの事が好きみたいで、
きっと付き合い始めたらリンのことすごく大事にするんだろう。
そして、私からリンを取っていってしまうんだろう。
だから、
「さっさと振られたらいいのに。」
「お断りします。」
リンと鏡音が両思いなんて、私は死ぬまで言ってやらないのだ。
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