*悲恋のつもり
*ルカミク
*ルカ=騎士 ミク=姫

*ファンタズィー


城が、燃える。

月がまんまると空に君臨する時間だった
月に従う星と、夜を統べる月のおかげで明るい日だったのに門番は敵襲に気がつかなかったようだ。

いや、もしかしたら門番さえ敵の一味だったのかもしれない
敵は、禁忌の武器とされる「銃」を使って責めてきた
禁忌さえ手を出す輩だ。どんな汚い手を使っていてもおかしくはない。

だからこそ、こんなに多くの兵士が討伐の命をくだされるのだろう
命を受けた味方の兵士が剣を片手に廊下を走っていった
みながみな、死を覚悟したかのような顔だった。ああ、あの人はこの前城に迷いこんだ猫を保護した兵士
あの兵士は娘が生まれたばかりだったはず。
あの人は………

ミクは夜着のままブランケットをかきだいた。さむい日のはずなのに、顔は怒りで赤くほてっている

何故、誰が、こんなことを


「お父さまと、お母さまは」

ミク付きの騎士に問うが、彼女は口を閉ざしたままだった
ミクにもわかっていた。わからないほど子供でもなかった
だからそれ以上、父王や母妃のことを尋ねることはせずに代わりに赤黒い炎を睨みつけた

炎の向こうからは、兵士達が戦う音がする。どうか、一人でも多く、生き残って

「ミク様」

ミクが微動だにしないのをとうとう桃色の騎士に咎められる
いつも無表情で気味が悪いとメイド達から噂されている表情も、今日は強張って見えた

「逃げましょう、ミク様。王もそれを望んでいます」
「何で、こんなことに」
「わかりません。でも貴方が捕まれば貴方の命が無いことは明らかなのはわかります」

少し高い背をかがめて、ルカは小さな子供に言うようにゆっくりと言う
その様子は、歳はそう代わらないのにずっと大人びてみえる

冷静に状況判断をして、感情をころして。

いつからルカがそうなったのか、もう思いだせない
ルカの実母であり、ミクの乳母である人もこの城に仕えてるから心配でたまらないだろうに

「ルカ」
「貴方の命が最優先です。ミク様、隠し通路から外へ」

ルカがミクの肩を抱き寄せる
気づけば、城を守る兵士たちの声が大きくなってきていた
近づいているのだ

ルカはすぐ近くの部屋にミクを連れ込むと、暖炉の近くにあった本棚を細腕で押しずらした
すると埃くさい通路が露わになる
ミクもここに王家専用の通路があるとは知っていたが、見るのは初めてだった

「はやく」



ルカに急かされて、通路を潜った。今までに嗅いだことのない匂いがする
数歩進んで、明かりがないことに気づき明かりを、とルカを振り返るが

「ルカ?」

近くにいない。
暗さに慣れてない目でもルカがそばにいないことはわかった。
数歩後にルカは居たからだ
明るい入り口で佇んで、ミクを見ていた
何故か嫌な予感がする

「いってください」

ルカは無表情でそれだけを言った
そうして、ルカがミクと供に来る気がないとわかった。

「何で、ルカ。逃げなきゃ」
「この通路をいくと、巡音家の敷地内に出るときいてます。そこでメイコ御姉様に事のあらましを伝えください」
「待って、嫌だよ、ルカが伝えて」
「それはなりません」
「何で、一緒に来て」

淡々と、ども頑なに断られミクは身体がドンと重くなるのを感じた
母や父に加え、ルカさえも失ってしまうかもしれない。ルカがここに残るのならばそれは仮定ではなくなってしまう

泣き出しそうなミクを見ながらルカは一呼吸をおいて、剣を抜きとった
彼女が成人を迎えた日にミクをまもるようにと、王から与えられたものだ
未だに一度も血を受けたことがない、綺麗な白銀の剣だった

「なりません。この扉はそちらからでは閉じれないので、私はここを閉めなくては」
「閉めなくて良いじゃない」
「敵は近くまで来ています。通路を隠さなければ、追いつかれます」

ルカはそうしてやっと、顔を歪めた
細腕を本棚にかける
ミクは慌て数歩歩くとルカが剣を持っている方の手を握った。血の気がひいてるのか、ヒヤリとしている

離したら、二度と掴めない気がする

震えるミクの手は人を痛めつけたことの無い手だった
そんな弱く脆い手が騎士のルカに勝てるわけもないのはわかっていたが離すわけにはいかなかった

「ミク様」
「ルカが来るまではなさないから」

声さえも、失う恐怖で震えていた。
何て情けない。これが、この国の賢王と言われた男の娘なのだろうか

ルカはゆっくりとひとりの娘になり下がったミクの掴む手を自分に引き寄せた
優しく引き寄せられた手はそのまま上に上げられる
予想出来ないルカの行動を見ていると、そのままルカは震えるミクの手に冷たい唇を寄せた

「……ミク、」

ミク、なんて呼び捨てで呼ぶのは子供の時以来だった
ルカがミクの乳母の娘から、ミクの騎士になった時にミクの名前の後ろには忌々しい敬称が付けられるようになったのだ

久々に呼ばれた名前と、ルカの不可解な行動にミクの思考は固まった

ルカは数度口付けをすると、最後の口付けの後顔を上げなかった

「…ルカ?」
「ご無礼をお許しください」

そうしてルカはミクの手を握りしめた
その頃にはミクの手は腕から離れていたから

「ずっと、好きでした」

っは、とミクが問う前に、ルカはミクの腕を強引に引いて片手で抱きしめた

ミクの鼻にルカの匂いが入った。
そう思った途端、ミクは盛大に後ろへと何らかの力が加わって倒れこんだ。
一拍遅れて、突き飛ばされたのだと気付く


見るとルカが、もうミクから離れて本棚を動かしている

「待って!」

本棚は、明るい入り口をあっという間に閉ざしていく

「私も、ルカが、」

最後に見たルカの顔は、悲しみに歪んでいた
ミクの言葉が届くのかもうわからないが、ミクは暗闇の中で叫ぶしか方法がなかった

「ルカが…好きなのに…!!」

もうミクの身体にルカの体温は残っていなかった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【ルカミク小説】くちのつぐみ

閲覧数:846

投稿日:2012/02/21 21:55:49

文字数:2,472文字

カテゴリ:小説

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  • komagome_taro

    komagome_taro

    ご意見・ご感想

    初めまして!
    以前にも腹部連鎖反応読んで感動したのですが、今回くちのつぐみでまたフゴワァー!!と切なさ爆発してしまいました(><)しかも作者様が同じとわかり、無性に納得しました☆
    この2人、また出会い幸せになれる事を願ってしまいますね…ファンタジー最高!!
    まだまだ新作も楽しみにしてます~☆駄文失礼いたしました。

    2011/09/27 17:44:51

    • sinn

      sinn

      相変わらず居なくなりの激しい奴ですみません

      はじめまして!メッセージありがとうございます。遅くなり申し訳ありません
      実はこれ、連載物なのですが…上手く続きが書けずに今この時となっております
      勿論このままでは済みません。

      ファンタジーフゴファー!!といつも一人叫んでるので、共感していただけて嬉しいです
      駄文の妄想全開ですが、今後もがんばります

      2012/02/21 01:40:00

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