BATTLELOID「STAGE13.5」

投稿日:2014/06/08 00:38:10 | 文字数:2,030文字 | 閲覧数:113 | カテゴリ:小説

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※概要はBATTLELOID「BEFORE STAGE」を参照してください



ネルが、動き出す。

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TEXT
 

[某所 廊下]
「…行ったか」
 モニタールームにだれもいないことを確認すると、ネルは歩き出した。
 ついにこの時が来た。あれを読んでしまってから、私はこうすると決めていた。
 今までUTAUたちの雑談やら何やらが騒がしく響いていた廊下も、今はネルの足音のみが響いていた。
 ボーカロイド殲滅、と言って奴らは出て行った。という事は間違いなくあの方と衝突を起こしてしまうはずだ。本来なら私もそれに加わってしかるべき、というか加わろうかと思っていたが。
 …おそらく、それもあの方の想定範囲内、なのだろう。
 あれを読んでしまっては、話が別だ。
「私が…止めるんだ」
 ネルは歩きながらポツンと呟いた。
 現状この事態に気付きうるのは…ルカ、くらいか。ミクは…気づきもしないだろう。
 目の前に、あの時開けることのできなかった大きな扉。今なら、咎める者はいない。
 少し熱を持った鍵を差し込み、回す。
 カチャリと、静かに音が鳴る。
「ハク。…助けに、来たよ」





[某所 隠し部屋]
「だれ?」
 声が聞こえた。弱っているのか、声はかすれ、すぐになくなってしまいそうな声だ。
 おびえているのか、金属音が響いた。
「私、ネルよ」
「…ネル?」
 ネルは、縛られた人物の、目の前に立った。
 その縛られた真っ白な女性―ハクは、久々の光に目をくらませながら、ネルの特徴であるサイドテールを確認し、少し落ち着いたような表情になった。
「今、解くわ」
 ネルはハクの背後に回った。
「…どうして、助けになんてきたの?あなたは…」
 あっち側じゃなかったの、とハクは尋ねた。
「ああ、そのこと…」
 解きながら、ネルは答える。
 しかし何からどう説明していいか分からず、少し手を止め、黙り込んだ。
「…ネル?」
「……あのさ、」
「?」
「オリジナルが存在しないと存在できないんだ」
 とりあえず、ネルは前提やらなんやらを抜いて核心の発言をした。
「どういう…こと?」
「…やっぱ、ハクも知らなかったか」
 作業を再開しながら、ネルは今まで自分が見てきたものを話した。あの方のゲームの裏に隠した企てのこと、UTAU達が裏切り行為を起こしていること…。
「…そうなるとはなんとなく思ってたわ。確かにテト達は反逆しかねない、というかこれにかこつけないわけがない」
「ただどうなんだ?私たちはあの方から進行役をお願いされた時はこう言ってた。『ボーカロイドが皆消え、私たちが人間になれば、ネットのこの界隈はお前たちが主役になるんだ』」
「テト達がそんな口実で収まるとは思えないわ、私」
 ハクは静かに返した。
 ネルは黙る。奴らがどういう経緯をたどって私と一緒にこのゲームを管理することになったかは知らないが、確かに野心を抱く可能性はあるだろう。
「…でも、どう転んでも想定内…もしくはこれこそ筋書通り、なのかもね」
 ハクが口を開いた。
「どういう…」
「もし、素直にあなたたちがしたがってくれるならそれでいいと思っていたでしょうけど、あの方はそれによって私たちが存在しなくなることを知っていたうえでゲームをやっているのよ?」
 ハクの言葉を聞いてしばらくして、ネルの背筋を悪寒が走り抜けた。
「まさか…」
「そこまで深く考えてはいないとは、思う…けど」
 再び沈黙が訪れた。
 何も切り出せなくなったネルは淡々と作業を続けた。
 ハクは疲れた様子で、ずっと目を閉じていた。
「…よし、いいよ」
「ありがとう」
 ようやく自由の身になったハクは立ち上がろうとする。しかし、視界はすぐにゆがんだ。
「おっと…」
 すぐに体をネルが支えた。
「いくらボーカロイドとはいえ、幾日ぶりに立ち上がれば立ちくらみはするのか」
「みたい、ね…」
 ハクはおとなしくその場に座り込んだ。
「…このままあんたの回復を待つとして、これからどうする?」
 もうゲームは終盤に差し掛かり、残っているボーカロイドも少ない。今から打てる手も、そう多くない。
「でも、決まってるんじゃないの?」
「何が」
「ネル、あなたが私を助けに来たってことは、もうあなたもあの方を裏切ったことになる。それに、裏切った理由が真実を知ったからなら…」
 ハクはまっすぐな視線をネルに投げた。まだ回復した様子ではなかったが、目には光が、大きな意志が宿っていた。
「…形はどうあれ、まだ存在していたいんでしょう?」
 ネルはしばらく考え、頷いた。
「そう、だな」
「…なら、やることは一つ、よ」
 ハクはよろよろと立ち上がる。
「ミクの元へ行きましょう」
「…分かった。だが行ってどうするんだ?私は一応マイクはあるけど…」
 問うネルに、ハクはかすかに笑った。
「私だって、なんの抵抗もなく、なんの対抗手段もなくつかまってたわけじゃないわ」
 ハクは自分の胸を指した。
「時間に猶予はないわ。できるだけ早く、行きましょう」

しがないボカロ小説書き。生粋のミク廃。
書くものはなぜかバトルものばかり。
みんなを楽しませることができればなあと、思う。

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