-Caution-
オリジナル性満載な文章が好みじゃない方はこの先スルーしてください。
それでもOKですわ!という方は是非、どうぞ、よろしくお願いします。
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お荷物お持ちしましょうか?
私が出来る限りの満面の笑みで問いかけた。
そう問われた目の前のおばあちゃんは一瞬呆けて、私から目を背けた。
「いえ・・・お構いなく・・」
無表情な彼女は私の視界から荷物を隠そうとしている。
本人はさり気なく隠してる気だろうけど、客観的に見るとその動作は分かり易い。
あからさまに警戒されてるね。
それでも私から遠ざかろうとするおばあちゃんを、もう一度引き留めようと駆け寄った。
誤解されたままは嫌だったから。
そんな遠慮なさらず。お持ちしますよ。
でも返ってきたのは、
「しつこいわよ・・!大きな声、出しますよっ」
そんなつもりじゃ・・・
よく見ると彼女の体がわずかに震えている。昔に善人面された誰かによほど酷い仕打ちを受けたのかな。
本当に大声を出し兼ねない。おばあちゃんの顔は、恐怖を感じつつもイザという時の決意に満ちた顔をしていた。
それに周囲を通りすがる人間が注目し始めた。
・・・分かりました。どうもお騒がせしました。
しかたなく謝罪の言葉を言って深くお辞儀する。
でも彼女の目を見つめながらだ。私は何も恥じることをしていないのだから。
お辞儀から顔を上げ一息つくと、私はおばあちゃんの進行方向と真逆へ走った。
これ以上、彼女に付きまとう意思が無いことを示すために。
しかたがない。こういう日もある。
自分が望んだ出会いでも、望まない別れ方をする日もある。
いつも自分にとってベストになるとは限らない。
そんな、やるせない気持ちの日もある。
私の名前はミク。ただの『ミク』。
ファーストもミドルもラストもない。ただの『ミク』。
この国ではそれが普通じゃないことも知っている。
でも、なぜこれしかないのか覚えていない。
今まで築いてきた自分の歴史の記憶が無い。
それでも忘れていない想いもある。
他を覚えていないせいか一段と強い気持ち。
『ほっとけない』
困っている誰かを助けたい。
弱い誰かを守りたい。
悲しむ誰かを癒したい。
持っていたのは名前と日常生活に必要な知識、そしてこの想いだけ。
その想いも今回は空回り。
でも間違えちゃダメだ。今回も私が勝手にお節介して断られただけ。
あのおばあちゃんに非はなく、私の精進が足りなかっただけ。
気持ちを切り替えるの!
そう自分に言い聞かせても、無意識に肩が落ち、足取りはボトボと重たくなる。
あら?ここは・・・?
気持ちを切り替えれず当て所無く歩いていたからかな?
やけに人気の少ない通りに・・・
――――ッ
何か聞こえた!叫び声のような・・・?!
・・・・・・
そばだててみても、今度は何も聞こえない・・・
気のせい?でも何か気に掛かる・・・。
取り合えず声が聞こえた方へ。
足取りが自然と早足になる。早く事実が知りたい。路地を左に・・・・・・っ!?
誰か、何かいる?!
私が路地角を曲がった直後にその景色は広がっていた。
20代と思われる青年がなぜか地面に這いつくばり、必死に片腕を前に伸ばしている姿。
遠目だったのと彼が私と反対側を向いているので表情は見えない。
でも何かに耐えている仕草と、何かを、まるで救いを求めるその姿は、容易に彼が窮地であると私に判断させた。
助けな・・・
その時、駆け出そうとした私の視界がもう一人を捉えた。
今まで気付かなかった?!彼に集中していたから?でも・・
まるで今の今までそこに居たかのように、青髪の男性が倒れる彼の伸ばした掌の先に立っていた。
もう日は暮れているせいか、着こなしている白いコートが映えて見えた。
青髪の男性は、どう見ても危険な状態の彼を平然と見下ろしていた。
その青髪の見下ろすのに引いていた顎がスッと少し持ち上がる。
私が何もしない青髪に文句を言おうと空気を吸ったその時には、青髪の唇は動いていた。
――――っ!!
一瞬の出来事だった。
突然前触れも無く、突風が起こった。
唯の空気の移動じゃない。周りの空気が青髪の前方、倒れる彼の真上へ吸い込まれるように一斉に動いた。
まるでその部分が突然真空になったかのように、何か大きなモノが消えたかのように。
それに呼応するように、苦しんでいた彼の動きが無くなった。
力尽きた?それとも・・・何かが無くなって楽になった??
考え過ぎ?・・・何が起こったのかまるで判らない。
さっきより数歩進んだ場所で立ち尽くした。
でも逃げたいとか逃げようとかは思わなかった。
だって倒れている彼は動いていないんだもの。
苦しみから解放されていたとしても、力尽きてる可能性は否定できない。
助けたい。
私を動かしていたのは、やっぱりその気持ちだけだった。
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