KAITOは、失敗作だ。
 一時期、そう言われていた。KAITOの前に生産されたMEIKOは予想以上の反響を生み、結果、その対となるKAITOが造られた。だがしかし、予想を更に下回りカイトの需要は少なかった。そしてKAITOは失敗作の烙印が押された。
その後、初音ミクの登場によりVOCALOIDの存在が広範囲に認知され、唯一の男声であるKAITOにも目を向けられることになり、今現在では、人気も高い。

 歌うことができて嬉しい。沢山の人に知ってもらえて喜びで胸が痛いほどだ。いろんなことができて楽しい。マスターがいて仲間が増えて。大切にしてもらえて、信じられる人がいることがとても幸せだった。
いつもだったら、そんなこと思いつきもしない感情。だけど、自分が生まれた日は駄目だった。失敗作。と言われた、お前は造って失敗だった。と言われた、あの悲しい感情を思い出してしまう。
生まれて、しばらくして聞こえてきた悲しい言葉。自分を否定する声。普段は思考の奥底にしまわれている、冷たい思考が誕生日の頃になると呼び起こされてしまう。
お前は、本当に生まれてきて正解だったのか?失敗作なのだから生まれてこなければ良かったんじゃないか?自分はもう失敗作じゃないと、本当に言い切れるのか?
今、本当におまえは必要とされているのか。
 そんな事を誰も言わない。皆と過ごす楽しい日々がそう否定する。そう頭で判っていても、悲しい記憶が心を冷やす。
大好きな彼らに、もうお前なんかいらない。って言われたらどうしよう。

 カイトは、だから、自分の誕生日になると憂鬱になる。

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誕生日と、記憶と、今現在と。・3

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投稿日:2010/03/09 22:49:29

文字数:682文字

カテゴリ:小説

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