されども、謎多きステータス異常“ホスト狂い”を駆使する屋敷の主、フーガ・バーンシュタインに対しレンは思うところがあった。
 思うことについては、人差し指で頬をトントンと叩いており、心の中に抱える葛藤を仲間たちに示している。

 そして、自分の道徳心を交えた意見を2人に伝えるのだ。

「たぶん…ミクちゃんは同じ考えだと思うけど、僕はこの絵の男の子が悪いようには思わないよ。だってほら…この子の顔、すごく優しそうじゃん?」

「レン君もやっぱり、そう思ってくれてたんだね。私は嬉しいよ」

「まあ…たしかに悪いことするような顔じゃないわね。それぐらい、あたしにもわかるわよレン」

「リンちゃんも考えが同じでよかった。私はね、外に咲いてあるお花さんを見てわかったんだ。フーガさんは、悪いヒトじゃないよって」

 このホールまでたどり着く途中にミクは、自分たちの受けたクエストの結末について決断しようとしていた。

「あれだけ立派な花を咲かせれるヒトが、理由もなしに相手をポスト狂いなんかしないって私、わかったんだ。ただ……」

 たしかに確信はついたが複雑な心境を抱えており、彼女はもの思いに沈んだ表情になっていく。自分が下した結論のせいで、大切な仲間に迷惑が掛かると思うと胸が締めつけらてしまう。
 その理由はクエストを受注する際、依頼者へ成果によっては報酬は必要ないと答えてしまったことに危惧する。

「ただ…私の勝手な考えで、お金が貰えないと2人を宿に泊めることができないの…。だから、どうすればいいか? わからなくなってきちゃった……」

「僕は報酬なんか貰えなくてもいいよ。自分たちの考えが間違ってないって思っているからさ」

「あたしも同意見よ。それにあのオバさん、ちょー苦手なタイプだし。ミクちゃんが悲しい顔してんのにさ『契約成立ですね♡』ってハートマーク使う歳じゃないだろっ! ババアッ!って言いたかったわよ」

「シーッ! 家が近くだから聞こえるかもっ!!」

 仲間のだした答えにミクは嬉しくなっていた。自分より年下の幼なじみであるが、ヒトを思いやる心と正義の志しが同じだからだ。
 お守りとして首から掲げるエメラルドジークレフを胸の前で握りしめ、頼りになる2人へ感謝の気持ちを述べていく。

「ありがとう2人とも。私の悩みは、リンちゃんとレン君のお陰で解決しそうだよ」

「いいのよミクリーダー。それにあたしたち、友だちだから助けるのは当たりまえなの」

「友だちを助けるのに理由がいるかい?」

 リンとレンの2人も、胸の前に掲げるイエロージークレフを握りしめ応えていた。

「私、フーガさんに説得してみるね。もう…女のヒトをポスト狂いにしないでくださいって頼んでみるよ」

「そうときまれば、探索再開よっ!。まだこのダンジョンから、換金アイテムをGETしてないんだから♪」

「そうよね。私もダンジョンでアイテム探しをしたくなってきちゃった♪」

 2人の少女たちは仲間との絆を再確認し、クエストの結末を決めたところで気分が高揚するのだった。

「ミクちゃん……」

 ──ちょっと前までPCLを気にしてたヒトが、なんで葛藤から立ちなおってアイテム探しをしようと意気込んでだよッ!──とレンは胸のなかで思ってしまう。

 異性が持つ思考を切り換える早さに、ますます理解できなくなってしまう男の子であった。

この作品にはライセンスが付与されていません。この作品を複製・頒布したいときは、作者に連絡して許諾を得て下さい。

G clef Link 孤独なバスヴァンパイア10

誰かを助けるのに理由がいるかい?

次話
https://piapro.jp/t/UkJL

閲覧数:119

投稿日:2020/01/02 21:42:23

文字数:1,415文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました