「カイトぉ・・・」
「な、何ですか?僕、何もしてませんよ??」
帰ってくるなり、なんだか泣きそうな表情になったマスターに僕は何事かと目を見張った。
そういえば、マスターがここに来るのって・・・かなり久しぶりなような気がする。
「ううん、何でもないの。・・・何でも、ないんだけど・・・・」
「いや、絶対何かあったような顔してるじゃないですか?一体何があったんですか」
僕は久々に見るマスターの顔をまじまじと眺めながら、言った。
「今度こそ、あの人に話しかけようと思ったのに・・・なんであいつがいるの~っ!?」
「え・・・、あいつって、なんだか沢山い過ぎて分かりません」
僕は肩をすくめる。だって、ほんとのことだし。
「あいつ・・・っていうのかな?あ、でもあいつだよね、もう好きじゃないし」
「・・・・年上、ですか?」
「ううん。年下だよ。確か、小学校ぐらいの時に好きになった人」
「・・・会ったんですか?」
僕は、なんとなく嫉妬じみた気分でたずねる。
「さあね。もしかしたら、見間違いって奴かもしれないし」
「・・・そうですか」
もはや煙に巻かれて何も言えない。
「それでね、あの時・・・・」
マスターはそれだけ、言いかけて口をつぐんだ。
「あ、今の彼氏がパンダって知ってる?ほら、これこれ」
そう言って、肩にかけていた鞄を下ろし、ぶら下げている小さなパンダの縫い包みを僕に見せるマスター。
「やぁ、お前がカイトかー、・・・悪いがお前の彼女は寝取ったぞ」
「・・・嫌なパンダですね、それ」
「そんなこと言うなああああああっ!!」
そう言って暴れるパンダだったが、あいにく自由に移動出来る範囲が限られているため、僕のところまで届かなかったのだった、まる。
「・・・・はぁ」
不意に大人しくなるマスター。元気だった輝きも急に鈍くなる。
「カイト、私ね・・・」
「・・・な、何ですか?まさか、あの人が・・・?」
「・・・・・・・・」
「え、そこでだんまりですか?だめですよ、そんなの」
「・・・これ、言ってもいいのかな・・・?」
「いいですよ」
「・・・・すっごい・・・」
そこで黙り込むマスター。
「すっごい・・・?何ですか?」
「・・・なんだろ、・・・なんか2人っきりでいたら即刻襲われそうな雰囲気になってたの」
「・・・・・そりゃまたすごいですね、それ・・・」
ようやく聞き出せた言葉に、コメントをするに良い言葉が思いつかなかった僕がそれだけ言った。
「だから、・・・」
マスターはしばらくしてから、言った。
「できるだけ、2人っきりにならないように気をつけようと思って」
「へぇ・・・それって、誰です?」
さっきからずっと気になっていたことをたずねてみる。
「それが、聞いて驚くなよ!まさかの「なんでパンダが言うんですか、おかしいですよ?」
にっくきマスターの彼氏の言葉を遮る僕。
「だって、パンダは全ての目撃者だもん。ねー、ぱんだおー?」
「それに名前とかあったんですか」
「そうだぜー、俺にも名前があるんだよぉーっ」
「うるさいですね、それ」
それからしつこく騒ぐぱんだおを、僕は一切無視した。
「それで・・・誰なんですか?」
先刻した質問に返答がなかったので、僕はまた質問をぶつけてみる。
「・・・ふたりめの君だよ」
しばらくして、ぼそっと呟くマスター。
「・・・・・ああ、あの物語のですか」
それを聞いて納得した後、ふと違和感を感じた。
「・・・・・・・・・・・・・・え、まさか、あの人が、ですか・・・?!」
思わず目をまんまるにさせる僕。
その人は、マスターの話の中ではかなり違うのだけれど・・・。
でもあれは、だいぶ昔の話だから・・・。
時間は人を変えさせるっていうから、多分、変わってしまっただけのこと。
・・・ただ、それだけの話でしかないのか。
「だから、もう私の手には負えないなぁ。去年とかの方がまだ話しかけ易かったけど、どうにも・・・。もう無理だな。あー、微妙だ、微妙過ぎてもはや何も言えない」
ここまで自暴自棄になるマスターも珍しかった。
「えー、でも昨日、あの人に話しかけるんだって気合十分でしたけど?」
「昨日はそうだったよ・・・でも今日は、うん。・・・・・・・タイミング悪すぎ」
「他に誰かいたんですか?」
「うん」
「・・・・・また、機会はありますよ」
「・・・どうしても、今月中に問題編の想いの残滓が残ってる内に、あの人と話したかった・・・。でも、やっぱりだめで。やっぱ私、だめだよね・・・」
言葉の後半部分になるにつれて、切なげに顔をゆがめるマスター。
・・・そんなマスターをこれ以上見たくなくて、僕はつい、
「もしかしたら、あの人から話しかけてくれるかもしれませんよ?」
「・・・そうかな。もしそうだったらいいけど、でも無理だよ、・・・多分」
「別に、・・・・・・・」
言い返す言葉が無くて、僕は口を閉じるしかなかった。
・・・それでも、
「僕がいますから、いつでも襲ってあ「あー、やっぱいいや。私元気だし、これから見たいテレビあるしー」
そう言って、僕に、にっこり笑いかけたあと、テレビのリモコンを手にとった。
「そうですか。もしもの場合は、いつでも待ってますし」
僕もにこりとして言ったのだった。


      END

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【マスカイ(?)注意!】 想いの残滓が残ってる内に、君と・・・ 【最後作品】

こんばんは、一言言っていいですか。
ただ、ただ、書きたかっただけです。
欲をいえば、あの人に届けばいいと想っただけです。
あの人に届けば、あとはもう構いません。
気持ちが伝われば、その後のことなんて、どうでもいいです。
でも。
もしもそこから続きがあるとしたら。
進展は、してほしいです、ほんとに。
もう今月は終わってしまうので、ある意味時間切れなんです。
いくらでも、機会はあったはずなのに。
悔やんでも悔やんでも、その時は一瞬。
気づけば、もうあの人はいない。
いないの・・・



なんてことを一度言ってみたかったもごもご犬ですこんばんは!
あー、もう時間が無いんだけど、もういいです。
時間なんて気にせずに、今はただ目の前のことに集中するのみです。
今回は、もう最後の作品です。
今度は、最後です。ある意味完結編です。

意味の分からない方は、そのままマスターとカイトの会話をお楽しみ下さい!もうこれで見納めです。今まで意味不明な文章作品も、すっぱりやめます。

もし、届かずにそのままだったなら、また書くかもしれません。
もし、届いたのなら、・・・・・・

閲覧数:153

投稿日:2010/04/26 20:21:28

文字数:2,180文字

カテゴリ:小説

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