「…初音は、本当にいいのか?」


「んー?何がー?」


「世界自体をリセットするんだろう?」


「そりゃ世界を全てリセットするんだから、当たり前でしょ」




世界を全てリセットする。

それは、世界という名前だけを残し、今世界に存在する全てを消去して、新たなものを作り出すことなのではないか。

だが一度消去したものを新たに作るということは、決して再生ではない。

だったら、初音自身も消えてしまうのではないか?

そもそも、人類が再び作られる可能性があるとも言い切れないのではないか。

ていうか初音は神だから、人間じゃなかったっけ――

いや、でも人間らしいし…




「私のことを心配してるのかしら?
 
 全てリセットされたら、私も消えてしまう。

 もしかしたら、生まれ変わってくることなんてありえない…
 
 考えていたのは、そんなところで確定したわね」


「なんでわかるんだよ。っていうか勝手に確定するなよ」


「でも大体あってるでしょ?」


「うん、大体っていうか全部あってる」




初音は、いつのまに読心術を使えるようになったらしい。

たぶん。




「全てリセットされたとしても、私達はリセットされずに世界を見届けたら?

 まだ何もかも決まったわけじゃないの。

 私達が残る可能性もあるでしょ」


「まぁそうだけど…神が消えたら、新たな世界はおかしくなっちゃうんじゃあ…」


「そうかもしれない。

 でも、人間もバカじゃない。

 せめて、何かを見守ることはできるかもしれないでしょ?

 それさえできないのなら、たとえ記憶がなくなったって、私は愚かな人間を叩きのめすわよ」


「君は、何万年…いや、もしかしたらそれ以上の年月を、時代ごとに体を変えて、世界を監視してきたんだろう?」


「監視ねぇ。人間達は見てておもしろかったよ。

 でも、私は人間のように振舞って、神の仕事をしていたわけ。

 私はね…早く楽になりたいの。

 世界の何もかもがリセットされない限り、私の命は形を変えて永遠に生きることになる。

 永久の命を持つのは神、それだけよ。

 神なんか理解されない、だから信じている人間なんて少数派。

 今まで見てきた人間は、時が変わるごとにつまらなく、信じなくなってきた。
 
 その永久の時間の中で、私のことを理解して話しかけてくれたのは、あなたたちぐらい。

 かなり永い時を生きてきた。それで、今やっと人間の良さについてわかってきたの。

 でも私を、神を理解してくれる人なんて、めったにいない。

 所詮あなたたちは人間。そのうち寿命がきて命は尽きてしまう。

 人間の寿命は百年ぐらい。私が生きてきた時に比べたら、あまりにも少なすぎる。

 そうしたら、私はどうなる?

 やっと幸せに近いものを手にすることができたのに、それを与えてくれた存在はすぐ尽きてしまう。

 何が神なの?人間は神が気楽だなんて想像してるけど、永遠の寿命があるから、孤独で悲しくて辛くて苦しいものなのよ…?

 もう嫌、全てが嫌!!早くこの鎖から解放されたい…

 でも世界が終わるときまで、私は本当に死ぬことができない。

 たとえ肉体が朽ちても、新たな肉体に存在は移る。私は生き続ける。

 自殺しようかなって考えたことあったわよ、神なのに。

 でも、どんなに自分に刃を向けても、存在は生きる。魂は朽ちない。自分の意思で、本当に死ぬことができない。

 …だったら、全て壊さればいい!!私はこの世界から出られない、でも全てリセットされれば、何もかも終わる!!

 もう役目を終わりたい!!普通の人間になれるのだったら、そうしたい!!!

 幸せな今のうちに、大切な人達が生きている今のうちに楽になりたい…!!!

 前に世界が再構成される前、私が私じゃなかったとき、記憶がなかったときに、あなたがあのまま私を殺してくれれば良かったのに!!

 何もわからないあのままなら、七つの大罪を犯したあの時なら、私は本当に死ぬ権利があったのに!!

 あの時のあなたは、私を裁く権利があった!!

 なのに、どうして手を止めたの!?どうして私を殺さなかったの!!??

 あなたがあのまま私を殺せば、私は無限ループから解放されたかもしれないのに!!!

 理解してくれたあなたは私の大切な人、その人に殺されるなら本望よ!!

 私自身のスゴロクは止まったまま、私の人生を終わらせてくれる存在はない!!

 あなたは影神、他人のスゴロクならいじることができるはずよ!!

 だから、今の私、『初音ミク』としての私の運命を変えてよ!!

 あなたが私のマスに、何か書けばいいじゃない!!

 そうしたら全て終わる!!世界のリセットは簡単にできる!!

 …今の世界は、神がただ見ているだけだから、悪い方向へ向かっている。

 だから壊して、リセットして。この世界を、私の命を…」




僕は、今まで彼女が苦しんでいたことを知らなかった。

永遠に近い時を生き、自らが作った世界に縛られ、それでも常に笑顔を保っていたはずの彼女が。

その彼女が、世界を壊せと言う。自分を殺せという。


僕は、本当に彼女に手を下していいのか?運命を変えてしまっていいのか?

世界をリセットしていいのだろうか――?



その時の僕は、静かに苦しむ彼女をただ見て、迷うことしか出来なかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【リレー】僕と彼女の不思議な世界 04

なんかえらいことになってるけどこんな展開にしたの誰だよ!俺だよ!!((((一人称とかおかしいぞ

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閲覧数:616

投稿日:2012/03/06 23:25:15

文字数:2,265文字

カテゴリ:小説

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