誰かが夏の日に 君の事を想う
それだけで 何もいらない筈なのに
こんなにも大切な事を どうしてだろう
君だけが知らない
見つめてるよ ここで
君を見つけてるよ いつも
ルリビタキ鳴けば仄暗く
淫靡に待つよ
夜になれば そこは
ふしだらな水草が覆う
月明りに浮かぶ形代は
僕のモノダ
白い指にふれた吐息
引きつれた波紋が
冷たく消えてく
君はいつの間にか 僕の背丈を超えて
半夏生の森を 無防備に歩いていく
オニバスが蓋をした 水槽の中で
僕の夏はつづく
いびつな世界への 微かなアンチテーゼ
夏は永久を懐かしむのに 永久の夏がある
一度きりの夏を 取り戻す術を
僕だけが知らない
ジギタリスは僕の花
君の五臓をすべて甘くする
白い金魚はひらひらと
僕の傍らに落ちてくる
誰かが夏の日に 君の事を想う
それだけで 何もいらない筈なのに
こんなにも大切な事を どうしてだろう
君だけが知らない
夢を渡る浮橋 君を通さないように
落ちてしまうと 冷たい水槽の底
いつまでも衛って 泳いでいるんだ
君だけが知らない
僕を忘れないで
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