しばらく動くことが出来なかった思考がのろのろと回り出す。
目の前にいる彼は何なのかと。
(人間じゃないよな…、多分)
明らかに人間のそれとは違う物の詰まっている腹部。
普通に考えれば人ではない。当然だ。
しかし、中身以外の部分を見れば人間にしか見えない。
抱き抱えた際にも生き物の肌と同じ柔らかさがあった。
言うなれば、本物の人間の中身だけを機械に置き換えたような。
もう一度、彼の腹部に目を遣った。
かちん、と歯車が動く音がしたと思った、その瞬間。
「……誰?」
今度こそ、一瞬心臓が止まった気がした。
すぐ傍の、件の彼から聞こえた声。
ぎこちなく顔をそちらの方へ向ける。
「……あなたは、誰?」
あの彼が目を開けて喋っている。
明らかな意思を持ってこちらを見詰める瞳と、滑らかに動く唇。
ようやくまとまろうとしていた考えが一気に崩れた。
人間と変わらぬ姿。
精密機械と同じ体の中身。
それが自ら動くという目の前の事実。
ロックには理解が追い付かなかった。
「……ねえ、あなたは誰?」
彼がもう一度問う。
彼の声はロックよりも少しだけ高いようだった。
それに反応してロックの口がようやく言葉を発する。
「えっと、俺は……ロチェスター・デニール…」
「ロチェスター…?」
首を傾げた。同時に彼の腹からまた歯車の音が聞こえた。
天井の高いこの館で、その音は随分と大袈裟に響く。
やや間があって、ロックが問う。
「……君は、誰?」
「僕?僕は、スミレ」
聞き慣れない名前だった。
「スミレ……」
「うん」
「君は、その……人間?」
もう一つ問う。
スミレはきょとんとした顔をした。
「人間、じゃないよ」
「じゃあ、君は何?」
「人形」
やや途切れがちにぼそぼそと喋るスミレが、その部分だけは妙にはっきりと告げた。
ロックは改めてスミレの体を見る。
人ではない、しかし人の似姿をしたそれは確かに人形であるのかもしれない。
ロックはこんなに良く出来た人形を見たことが無いが。
「…ねえ、ロチェスター」
「え?あ、ああ」
「どうして、ロチェスターは、僕と同じ顔を、しているの?」
ロックがスミレを見て初めて抱いた疑問を投げかけられて、ロックはこう答えるしかなかった。
「…ごめん、俺にもわからないんだ」
「ふうん」
不思議、とスミレは淡々と呟いた。
向こうはロック程にはそのことを驚いていないらしい。
そんなスミレの様子を見ている内に、ロックも少しずつ落ち着きを取り戻す。
そして、先程からスミレが頭以外を動かしていないことに気が付いた。
「もしかして…体が動かないのか?」
「うん、そう」
「どこか悪いのかい」
「中のどっか。自分で直そうと思ったけど、無理」
ようやく状況が飲み込めてきた。
ロックは「ちょっと見せて」とスミレの腹の中を覗き込んだ。
かち、かち、…ぎぎ
微かに異音がするが、暗くて見ることが出来ない。
窓の近くへ移動した方が良さそうだ。
「よし、階段を上がった所に行こう」
そう言ってロックはスミレの体を持ち上げる。
がらん、がしゃんっ、がっしゃんっ
派手な音を立てて腹の穴から歯車が数枚飛び出した。
「……」
「あ、落ちた」
変わらず同じ調子のスミレの声を聞いて、ロックは安堵の息を吐いた。
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