夏だよ。
暑い、暑い。夏だよ。
いつのまに、こんなところに置いてかれちゃったんだろう。
「今日も暑いな~」
「だね~、もう病気になっちゃいそうだよ」
「あはは」
今日は8月15日。
夏休みの真っ只中、私たちは学校に行き、その帰り道、公園で話していた。
この会話は、もう何度目かわからない。
「どうした?なんか、顔色悪いけど」
ふいに声を掛けられ、すぐさま顔を上げると、そこには少し心配そうにこっちを見る君の姿があった。
「あ、ううん。なんでもない、あはは」
笑いながら、ちょっと引きつってしまったかもと思ったが、気付かれなかったようだ。
すぐそこにあるブランコにゆっくりと腰かけ、にゃーと鳴きすり寄ってくる猫を撫でる。
「でもまぁ夏は嫌いかな」
呟くと、君は「文句言うなよ」と笑う。
(…わかってないなぁ)
口に出さずに、そのまま猫を撫でてると。
「あっ……」
猫がいきなり走りだした。
驚いて、猫を追いかけようとすると。
すると、そんな私をドンと押し、君が道路へ飛び出る。
その瞬間、通ったトラックが君を轢きながら叫びにげていった。
まただ。
「……っ!」
その瞬間、君はバカにしたような笑みを浮かべた。
それが私に対しての笑みではないのは、すでにわかっている。
ジリリリリリリリリリリリリ!
「もう嫌……」
時計を確認すると、8月14日の午前12時過ぎ。
まただ。まただ。
もう、これは何十年も続いたこと。
自分でも、これは自分が死ぬしかないなんて、わかりきっているのに。
君は私の邪魔をする。
代わりに私が死んでもまたすぐに君が助かろうと、陽炎から逃げようとトラックの中へ飛び込んでしまう。
”ならもう、私がずっと君の身代わりが出来れば良いや”
そう思ったのは自分。
そのために君が死ぬのを何度も見送ったのも自分。
それを何度も見すぎたせいか、すでに泣くことすらできなくなったのも自分。
そのたびに陽炎がバカにするように自分のことをあざ笑うのだってわかっている。
私が代わりに死んだって、君が苦しむだけ。
でも、君が死ぬのは耐えられない。
(壊れる……)
涙をぬぐうほどの意識なんて、もう残ってない。
ただただ、君を助けたいからこのままでいる。それだけだった。
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