<Dear My Friends! ルカの受難 第7話 各陣営の思惑>

(アフス城・魔導研究棟・魔導研究室)

 所変わって、こちらはルカをさらっていったテルの魔導研究室。アペンド達が秋葉原に向かった頃、テルもルカを抱えて、自分の部屋に到着していたのでした。

 チュッ

 テルはルカをベッドに寝かすと、ルカの右手の甲を口元に持ってきて、軽くキスをしました。そろそろルカを起こすことにしたのでした。

ルカ:うっ・・・・・こ・・・・・ここは・・・・?
テル:お目覚めですね、姫・・・いや、姫代理のルカさん?

ルカはゆっくりながらも、起きあがり、ベッドに座るような形で、ぼーっとしてました。

ルカ:えーーーーっと、確かアペンドさんの部屋に行って、そこで・・・・! そ! そうだ! 気を失って!
テル:そう、私にさらわれたのですよ。完成版魔法陣の受け渡しのための人質としてね
ルカ:…確かあの部屋は開放されていたし、私を“姫代理”って呼んだということは、私の事や事情は筒抜けだったってことね
テル:Exactly(その通りでございます)
ルカ:異世界の秋葉原から来た“対応人物”であって、姫本人ではない私なんかさらっても、国家間での取引で“完成版魔法陣”を手に入れることなんか出来ないんじゃないの? アペンドさんは事情を知っているんだし
テル:完成版魔法陣が欲しいのは、国家ではないです。私の個人的欲求です。国家上層部には一切話をしてません。それにこの未完成版の魔法陣を頂いてきたから、当面の“侵攻作戦”に支障はないだろう

 そういうとテルは魔法の杖の先の“球体”で、床をコツンと叩くと、未完成版の魔法陣が現れたのでした。

ルカ:侵攻作戦…魔法陣…。つまり、貴方の真の目的は、自分の策略で私たちの世界を侵略すること、そういうですか
テル:さすが、賢明なルカさん、コッチのルカ姫とは偉い違いだ。そのとおり、国家を介さずして、あなた達の世界を侵略してしまえば、そのトップは私になる。そうなれば、こんなちっぽけな国家に遣える必要もなくなる。逆に向こうの技術を使って、コッチの世界全てを統べてやるわ
ルカ:随分と野心旺盛な方ですね。しかし、この未完成版は、“対応人物と交換”、で向こうの世界に行けるわけだから、貴方一人だけではどうしようもないのでは?
テル:さすが聡明だな。しかし、私の野心は私だけで進んでいるわけではないぞ。待たせたな、入ってくれ

 バタン、ガヤガヤ

木戸が開いて、3人の兵士が現れたのでした。

トニオ:全く、待たせやがって!
プリマ:まぁ、そういうな、計画は一歩一歩だ
ミリアム:やっと出番が来た…

ルカ:こ、この人達は…
テル:我が帝国と国交のある“フォーリナー軍政国家”の兵士達だ。報酬の代わりに、ある依頼を頼んである

トニオ:ルカ姫っちなんて、軽く潰してやるよ、へっへっへ
プリマ:その魔法陣で、アキハバラって所に行けばいいんだな?
ミリアム:謎の機械が一杯って、楽しそう…

ルカ:…向こうへ行ったルカ姫を始末する、と…
テル:そう。こっちと向こうの世界を支配した後は、重要な役職に就いて貰う、それと大金の報酬の代わりに姫を暗殺して貰うことになっている。取引にしても、これからの事にしても、君がいれば十分なので、本物には消えて貰う事にした。ちょうど良い好機なのでな
ルカ:涼しい顔して、やることは残虐なわけね
テル:何とでも言ってくれたまえ。では、フォーリナーの3人、魔法陣の中央に立ってくれ

 フォーリナーの3人は、武装した状態で、少し怪訝そうにしながら魔法陣の中央に立ちました。

テル:では。魔法陣よ! この3人をアキハバラに連れていってくれ!

 ギューーーーーーーン!!!!

 金色の光の粒が3人の体を包むと、足先から徐々に3人を消していき、遂に全部を消してしまいました。そしてルカの時と同じように、フォーリナーの3人に対応する、アキバの3人が倒れた状態で魔法陣の中央にやってきたのでした。

テル:なるほど、これは凄い! コピーできるから、当面、これを使うのも手だな
ルカ:こうやって私も来たわけね。凄い魔法というか…
テル:さて、この3人には静かにしていて貰わないといかんな…

 テルは気絶している3人を縛り上げて、部屋の片隅に座らせたのでした。

テル:さて。これで第1段階は終了か。次はアペンド達の反応を一応確認するか。今頃必死になって“完成版の魔法陣”を作っているはずだが…
ルカ:(あのアペンドさんが、無策でいるはずがないと思うけど…)

 テルは、部屋に設置されていた“対象を感知できる魔導レーダー”を使って、アペンドのいる位置を調べてみたのでした。

 ピーーーガガガ… ハンノウナシ デス

テル:なに!? いるはずなんだがな…

 テルは感度を最大まで上げて、もう一度調査してみたのでした。

 ピーーーーーーーーーーーガガガガガガガ…     ハンノウナシ デス

ルカ:(やっぱり…)
テル:あいつが未完成品を使って異世界に行くとは考えられない・・・・・・アペンドめ・・・・・・もう完成版魔法陣を完成させていたか…
ルカ:そして、当然、ルカ姫を助けに行ったわよね
テル:くっ! こちらに渡す前に使いおって…こっちのルカの安全をちゃんと考えた上での行動なのか?
ルカ:アペンドさんは、私を信じた上で、行ったんだと思うわ。私ならこういう場面でも切り抜けられる、と
テル:大した自信だな。まぁどっちにしろ、完成版魔法陣をアペンドから受け取らないと、計画は最初からコケる事になる。故に、お前を殺す事はいずれにしてもできん
ルカ:そういう事よね。私も暴れる気はないわ
テル:当然だ。今の時点では、どちらも動けないのだからな

 そうこうしているうちに、フォーリナーの3人と交換でこっちに来てしまった3人が目を覚ましたのでした。

トニオ:う…いてて…。なにがどうなったんだ!?
プリマ:って! なんか縛られてる!
ミリアム:誘拐!?

テル:ようこそ、ファンタジーワールドへ。ここはアフス帝国の魔導研究室。私は魔導師のテルと申します
トニオ:はぁ?
プリマ:最近は凝った誘拐方法があるのね…
ミリアム:そんな事より、私たちの関係者に何を要求したのよ!
テル:正確には誘拐ではない。交換ルールで、来てしまうことになっただけだ。お前達に対応するフォーリナーの3人が帰ってきたら、自動的にお前達も帰る事になる。それまで静かにしていなさい

トニオ:!?!?!?
プリマ:なに、こいつ、うざい…
ミリアム:なんなのよ、もう…。はぁ、帰りたい…

ルカ:テル、あんたホントに国家に内緒で策を企てているのね。いずれ足下すくわれるわよ?
テル:心配ご無用。この国は“帝国”とか言っている割に、策略が古典的で毎回クリプトン王国とインタネ共和国の連合に追い返されている。協力しているフォーリナーの兵士達にしても、私が作った魔導兵器もちゃんと使いこなせず、正直、三行半(みくだりはん)を付けていたところだ
ルカ:じゃあ、あの兵士3人だってだめなんじゃ…
テル:彼らは、ビジネスに徹したエリート軍人だ。貴重な特殊能力も持っている。国に仕えて最前線で戦う犬にはならん、そういう輩だ。私との繋がりも強く、特務をしっかりこなしてくれている

 そんな事を話していた矢先に、縛り付けていた3人の姿が、足下から金色の光の粒に包まれて消えていき、代わりに、先ほど向かった兵士3人が、先ほどとは違う状態で、魔法陣の中央にあらわれたのでした。

テル:こ・・・・これは・・・・・・
ルカ:あーあー、一人は氷漬け、一人はこぶを作って気絶、最後の一人だけが足を不自由にされながらも喋れる…と

テル:トニオ、これは、どういうことなんだ?
トニオ:す、すまん。クリプトン王国の連中にやられた…。奴らとルカ姫は、コッチの世界に帰ってきているらしい。レーダーで調べろと言われた
テル:まさか、あいつら…

 テルは慌てて魔導レーダーを操作して、世界間であった変化を検索した。

ピピ・・・・・ガガガ・・・・・魔導師アペンド、僧侶リン、勇者レン、ルカ姫、剣士学歩の5名がこちらの世界に戻ってきており、別に1名、向こうの世界からこちらに到着しました。

ルカ:(別の1名?)
テル:あいつらはともかく、なんだ? その別の1名とは!?

 ピピ・・・緑の髪の女性で、ツインテールですね。魔導の銃を持ってます。そこのルカという人物に関連があるらしいです。

ルカ:!? もしかして…ミク!?!?
テル:お前の知り合いか!?
ルカ:どうして、こんな危険なところに…

テル:くぬぬ…、姫暗殺に失敗したばかりか、よりにもよって、取引に手練れの兵士を付けてきたとは…。交換取引には一人で来る、と言ってあるが、伏兵で奴らを呼ぶことは十分考えられるな… ならばこちらの取引も、考えんといかんな

トニオ:そ、そんなことより、俺達をさっさと助けてくれ!

 しかし、テルは冷たい目線をトニオ達に向けて、そして、手を振り上げたのでした。

テル:…隠密作戦に失敗し、あげくに、こんな事態まで作ってしまったお前達は、“万死”、に値する…

トニオ:お、おい!!!

テル:消えろ

 テルは振り上げた手を振り下ろしたと同時に、巨大な火炎球をトニオ達3人に向かって放った。火炎球はトニオ達3人を包み込み、そしてあっという間に3人を骨も残らない程に焼き払い、そして、消してしまった。

ルカ:あ・・・・・あなたって人は・・・・・
テル:情報を帝国や軍政国家の上層部に漏らすわけにはいかん。まだ、こちらには内通しているフォーリナーの手練れの駒が沢山いる。そんなことより、彼らに取引の連絡をしなければいかん。時間を与えるわけにはいかんからな

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Dear My Friends! ルカの受難 第7話 各陣営の思惑

☆オリジナル作品第15弾である、「Dear My Friends! ルカの受難」の第7話です。

☆今回は交渉準備の状況です。

*****

hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf

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投稿日:2011/10/03 19:58:47

文字数:4,064文字

カテゴリ:小説

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  • 愛夢☆ソライト

    愛夢☆ソライト

    ご意見・ご感想

    テルさんの陰謀、国家どころか別世界を巻き込んだ大きなものになってきましたね。
    その上思った以上にテルさんが冷酷な人物だったので少々驚きです。

    文章全体が、彼の策士家っぷりや冷酷さじわじわと感じさせてくれるものでした。

    2013/08/21 15:07:47

    • enarin

      enarin

      愛夢☆ソライト様、今晩は!

      > テルさんの陰謀、国家どころか別世界を巻き込んだ大きなものになってきましたね

      はい、今回の1期のとんでもない軸はこれです。まさに現実世界すら統べてしまう力を、この魔方陣は持っていたということです。

      > その上思った以上にテルさんが冷酷な人物だったので少々驚きです

      これは2期のある所でまた出てきます。ただ、テルも変わっていくので…

      > 文章全体が、彼の策士家っぷりや冷酷さじわじわと感じさせてくれるものでした

      今回はそこは要点となります。テルの知的行動が大事なんですね。彼は基本的には策士です。

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2013/08/21 19:35:42

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