#10 人の記憶を喰らう病
レン「うぐっ」
警備ロボはレンを檻にぶち込み鍵を掛けた。
ムージン「まあ積もる話は後だ。侵入者を捕らえたらじっくり聞かせてもらうよ」
レン「このやろう…!!」
そしてムージンが戻るのを確認した後に、レンは檻のつくりを確認した。
レン「…これならいつでも壊せるな。だけど、タイミングが重要だ…」
______
ミク「着いた!!」
サクマ「気をつけろよ、気付からたらあの数の警備ロボ全員を敵に回すことになるからな」
2人は大部屋の天井裏に隠れている。穴が空いててそこから部屋が見渡せる。
ミク「あ、あれは…」
大部屋で見えたのは、リンを捕縛しながらムージンの帰りを待つ警備ロボだった。リンは全力でもがくものの、全く解けない。
ミク「やっぱり捕まっちゃったんだ…」
状況は最悪だ。カナタ達と合流出来るまでは、ミクとサクマしか戦力は居ない。
サクマ「こうなったら俺たちだけでどうにか…いや待てよ。あの手錠、レンなら壊せるかもしれない!!」
ミク「!?」
カナタ「とりあえず、ここまで来れたか…」
シャンラン「それにしてもこんな廃屋にこんな綺麗にしてある研究室があるとは思わなかったわ」
カナタ達も無事だった。地下に逃げ込んだら不思議な事に警備ロボ達が一切居ないのだ。
カナタ「…シャンランさん、さっきはありがとうございます」
シャンラン「…何言ってるの?さっきのは紛れもなく貴方の力でロボを止めたのよ?」
カナタ「!?」
前にも検証した通り、カナタには歌唱力というものは存在しない。あの時、シャンラン以外がロボを足止めする事は出来なかったはずだ。ならば何故…?
カナタ「シャンランさんの方こそ何を言ってるんですか?僕には戦う術は無いんですよ?」
シャンラン「そうね… 貴方はまだ戦えないだけよ。いずれ戦力になってもらうわ」
カナタ「さっきから色々、マジで意味分かんねぇよ…」
すると、奥の部屋から何かのノイズが聞こえて来た。
カナタ「この音、まさかマジカルノートが!?」
シャンラン「いえ、これはまさか…」
2人は一番奥の部屋に突入する。何かの鍵となるはずだ…!
リン「嫌あぁ!!」
ムージン「さて、念の為君にも聞いておかなければいけないのでな。エナジーサイリウムがどこにあるか、知っているだろう?」
今度は大部屋にリンを連れてきて情報を吐かせるムージン。
リン「知らないわよ!!離して!!」
ムージン「お前達下級調律員がよく国家最高機密を知ったもんだな。我々としてはカモでしかないぞ?」
リン「こんの…!!ゔっ…」
リンの髪の毛を強く掴む。もう見てられない…
すると、隣の部屋から爆音が聞こえ、扉が吹き飛んだ。
レン「てめぇ、いい加減にしろぉぉぉぉぉぉ!!」
リン「レン!!」
レンが手錠を壊し突撃してきた。
ミク「私達も行きましょう!!」
これで戦力は3人。
ムージン「何!?手錠を壊したのか!?」
レン「オレの歌エネルギーは爆炎に変化するんだ!!手錠ごとき吹き飛ばしてやったよ!!」
そして襲いかかる警備ロボを爆風で吹き飛ばす。
ミク「レン!!助けに来たよ!!」
ミクも負けじと歌声を並べる。
レン「ミク!?久しぶりだなぁ!!」
サクマ「俺はリンの手錠を外す!!鍵も見つけた!!」
ミク「敵は私達がひきつけておきます!!」
ようやく状況が好転した。今なら、この数の警備ロボと渡り合えるかもしれない…!!
リン「もう終わりよ。貴方の計画もここまでよ!」
全ての警備ロボを倒した今、ムージンを守る物は無い。
ムージン「…警備ロボを倒しただけで私に勝ったつもりか?こうなる時もあろうかと、[完全なる知能]となるラボno.0だって、兵器としていつでも動かせるようにはしてたのさ!!」
すると、ムージンは後ろの大きなスイッチを押した。周りの照明が消えて、ラボno.0が動き出した。
レン「どういうことだ!?[完全なる知能]はエネルギーが足りないんじゃなかったのか!?」
ムージン「今この機械に搭載した人工知能は動いちゃいないさ。これはただの兵器として動かしてるだけなのだよ!この施設に張り巡らせた電力を切ってラボno.0に全部送れば起動するのだ!!さぁ、こいつらを始末しろ、私の最高傑作よ!!」
そして、巨大な機械がゆっくり動き出した。
[[[はい、マスター。私は貴方の思うがまま…]]]
…これはもう、感情を捨てたただの兵器だ。
リン「うわぁぁぁぁ!!!」
4対1でも苦戦を強いられる。アームのリーチが広く、鋼鉄が恐ろしく固く、紛れもなく強い。
サクマ「レン、避けろ!!」
レン「うおぉっ!!」
もはや自分の身を守るので精一杯だった。
さっきまでの警備ロボとは比べ物にならないくらいの強敵だった。
ミク「この…負けるもんか!!」
ミクは少し後方に下がり歌エネルギーを溜め始めた。
リン「きゃあぁ!!」
リンの頭上から鋼鉄の腕が振り下ろされ…
レン「おらぁ!!」
レンが腕を吹き飛ばしリンを助ける。
ミク「これ以上、暴れるなぁぁぁ!!!」
ミクの渾身の一撃。かなり長い時間溜め込んだエネルギーは、ラボno.0の巨体を全力で吹っ飛ばした。
ラボno.0は部屋の壁を突き破り下の階に落ちた。これならしばらくは登ってこれない。
ムージン「貴様ら… 私の最高傑作をよくも…ッ!!」
カナタ「そんなガラクタに頼るからこんな結果になったんだ」
ミク「っ…!」
振り返ると、カナタとシャンランが謎の少女を抱えながら別の扉から入ってきた。
カナタ「天才科学者ムージン・ラボメイカー、アンタがなぜここまでして[完全なる知能]を求めるのか、よく分かったよ」
するとムージンはカナタが抱えてる少女を見ると血相を変えて叫ぶ。
ムージン「貴様、なぜサランを連れてきた!!」
ムージンの怒号に耳も貸さず、サランという少女を研究台に寝かせた。
カナタ「リン、この子は生きている。お前ならこの子の症状が分かるだろう?」
リン「分かった、ちょっと診てみるよ」
するとリンはその少女の体を調べ始めた。
ミク「どうなってるの!?ムージンさん、この子は一体…」
シャンラン「ムージン、貴方の今回の事件の動機は、この子が関係してるのよね?」
ミク「え!?どゆこと!?」
ムージンは頭を抱えて膝をついた。先程までとは違い顔が青ざめてる。
ムージン「よく分かったな… 今思えば、こんな外道な研究を始めたのもサランが倒れ込んでからだ。サランが…」
どうやらこの少女が原因不明の病で寝たきりになって、彼女の形見として[完全なる知能]を作り上げ、孤独を紛らわせたかったのだろう。
ムージン「それで、この少女はサランの症状が分かるのか…?」
サクマ「この子は医療調律員として育てて来た。よっぽど専門的な病気じゃない限り症状を特定出来るだろうな…」
サランの体を調べ終わったのか、少し難しげな顔をするリン。
レン「リン、この子の症状が分かったのか?」
リン「これは… 普通の病気じゃない…っ!!」
震えた声で呟いたと思えば、強く机を叩いた。
リン「この子はマジカルノート本体にやられてるのよ、[音憑き]よ!!」
ミク「音憑き?何それ…」
カナタ「調律員マニュアルにあっただろ?マジカルノートでは普通は無機物に取り憑いて化け物を生み出すけど、今回の相手は人間だ。倒し方次第で彼女は死ぬんだぞ!!」
そう、[音憑き]。滅多に見られないが、マジカルノートを戻す上で1番厄介な現象だと国家調律員の面々は口をそろえて言うのだ。
ミク「どうやってこの子を助けるの!?」
リン「まず無機物に取り憑いた場合とは違って化け物を殴ると本体もダメージを受けるのよ。マジカルノートを取り出すまで戦ってたら、中のサランちゃんは死んじゃう!サランちゃんも助けたいなら、歌唱力依存の封印術式で完全にマジカルノートを止めてマジカルノートだけとりださなきゃダメなの!」
ミク「封印術式!?」
レン「大丈夫だ、俺達にはとっておきの術式がある!ミクは相手の動きを止めてて!!」
ミク「よく分かんないけど、分かった!!」
すると、サランの体から黒いオーラが溢れ出てきた。ここからが本番だ。
音憑き「モット...オトヲヨコセ...!!」
リン「絶対助けるよ!!」
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