【二次創作】翻案・遠くへ【掌編小説】

投稿日:2011/06/27 21:40:04 | 文字数:1,541文字 | 閲覧数:71 | カテゴリ:小説

ライセンス:

※この作品はSweet Revenge様の楽曲『遠くへ』(http://piapro.jp/content/qkpqouyhpbq50tub)をもとにした二次創作です。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

※この作品はSweet Revenge様の楽曲『遠くへ』(http://piapro.jp/content/qkpqouyhpbq50tub)をもとにした二次創作です。

『翻案・遠くへ』 日枝学

 僕がいるこの場所は、フェンスで囲まれた収容所なのだろう。フェンスは三メートルぐらいの高さで、その上には、中にいるものが外に出られないように閉じ込める、有刺鉄線が張られている。
 有刺鉄線は赤く錆び付いている。その向こうに、飛行機雲がある。
 僕はフェンスに両手と右足をかける。力を入れて僕の体を上に持ち上げる。浮いた左足をフェンスにかける。右、左、右、左……と、手足を少しずつ進めていく。
 フェンスが途切れ、ここから先は有刺鉄線のみになる。意を決して右手を有刺鉄線にかける。刺が刺さり、赤い血が右腕を伝う。神経が痛みを訴える。力を入れて、体を持ち上げる。
 左手を有刺鉄線にかけようとして手が滑った。足がずり落ちる。左手が空を掴む。バランスを崩した体が宙に投げ出される。仰向けのまま、体が自由落下する。有刺鉄線の向こう側には、青空と飛行機雲が――


 講義が終わる。それと同時に、多くの人がそれぞれの行く先に足を向ける。友人らしき人と話している人もいれば、荷物を片付けてそそくさと帰る人もいる。まだ授業のノートをとっている人もいる。そんな中、僕は、高いフェンスと赤く錆びついた有刺鉄線を幻視した。
 最近、思うことがある。
 こんなにも大量の人が一箇所に集まって、その中の一人ひとりが今まで生きてきただけの豊富な経験とその結果得た人格を持っていながらも、お互いに関わる人数はごく僅かだ。
 そこにいる人の数と、人と人が精神的な交流をする量は、比例の関係ではないのだ。
 僕は、ここにいる誰とも繋がらないし、交わらない。
 なんとなく、机に広げたノートと筆記用具を片付ける気にならなくて、とりあえず窓の外の景色に目をやる。そこには青空が広がっている。
 空は、どこも区切られていない。空にはフェンスも無ければ有刺鉄線もない。ただ一筋の飛行機雲があるだけだ。
 誰とも繋がらない、交わらない。そんな空想は、偽物なのだと分かる。人と人の間を、フェンスと有刺鉄線で阻んでいるのは、僕の妄想でしかないことが分かる。
 けれど分かっていながらも、あるはずのないフェンスと有刺鉄線を乗り越えることが、僕には出来無い。

 彼女が、席を立つ。

 それが視界に入った。
 聞くところによると、彼女は卒業したらここを離れて遠くの県に行くらしい。卒業まで、残り半年。この夏が終わって、秋が過ぎて、冬になったら彼女はもう去ってしまう。
 ここにはこれだけの人がいて、けれど僕は、その中の誰とも関わらない。この先もずっと、僕は誰とも繋がらず、交わらずに生きていくのだろうか。
(僕は、本当に、このままでいいのか?)
 彼女が教室を去る。
(僕はこの先、誰とも繋がらないまま生きていくのか?)
 彼女が去っていった教室の前の扉を横目に見ながら、一秒間考えた。
 そんなはずはない。
 僕は急いでノートと筆記用具を鞄にしまい、席を立って彼女を追う。教室を抜けて右、階段を駆け降りて、建物の外へ。そこに彼女はいた。
 僕は意を決して声をかける。
「あのっ、すいません――」






※後書き
 人と人の繋がりって、自分から動き出さないと始まらないよなあ。けどその動き出すのがちょっと億劫なんだよなあ。けれどそれ乗り越えないと人生面白くないよなあ。
 などということを考えながら書かせて頂きました。最近思うのだが、埋れている良曲って、とてつもなく多い。
 とりあえず、夕 飯 を 食 べ た い で す 

なにかの素材になればいいな、っていうテキストと、好きな作品をモチーフにした掌編小説を投稿できればいいなって思ってます(2013.12.25)

もっと見る

作品へのコメント2

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
  • userIcon

    ご意見・感想

    この話を読んで、私も常々感じていたことだったので、どきっとしました。

    満員電車などで肌の触れ合う距離にいても、となりの人は私が物語を書いていることを知らないし、トランペットを吹いてきたことも知らないし、ついこの間まで科学者の卵であったことも知らない、と思うと、創作心がぞくりと来ます。
    また逆に、いま私に触れている人の歴史を、こちらは何もしらないわけで……。
    身体は近いけれども心は遠い、まさにこの心境を言い当てるこの小説と曲に出会えたことが、明日の心の支えになりそうな気がします☆

    そして、例によってさっそく曲を聴いてきました!これからも楽しみにしています!

    2011/07/03 15:50:22 From  wanita

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >wanitaさん
    おおおおコメントありがとうございます!
    そうですよね、もし通り過ぎる人々の今までの歴史が目で見えるようなことがあれば情報過多でどうかしそうになるぐらいあるはずなのに、そんな目はないし、傍目で見たら分からないんですよね。
    人が多く行き交うところで大量の人々が視界に入っても、一人ひとりの表情とか仕草とかは本当に頭の片隅にすら残らないのに、この人たち一人ひとりに、語り尽くせない程の人生や感情があって、同じように頭の中で何かを考えながら歩いているかもしれないのだと想像すると、なんだか妙な気分になります。嬉しいわけでも悲しいわけでもなく、なんというか当たり前のはずなのに不思議な、よく分からない気持ちになって、最終的に創作意欲に繋がります(笑
    いやあ楽しみにしていると言われるととても嬉しいです。ありがとうございます!

    2011/07/04 11:10:26 日枝学

  • userIcon

    ご意見・感想

    日枝学様、こちらのコメントでは初めまして、enarinです。

    拝読させて頂きました。リアルな表現で、収容所で、有刺鉄線で、これは脱出物かな? と思ったら、学校で、展開が面白かったです。

    そうですね、特に”学校”となると、友達になるだけでも、なんかの”きっかけ”、部活でも学校行事でも、そういうので繋がる事もありますが、なかなか難しいですよね。特に女性友達となると、ほんと、自分からアタックしていくのは至難の業。

    収容所、有刺鉄線という表現は、”自分の殻”であり、そこからの脱出は、”自分の殻を破る”事でもあるんですね。

    素敵な作品でした。これからも楽しみにしてますね。ではでは~♪

    2011/06/27 21:55:03 From  enarin

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >>enarinさん
    おお読んでいただけましたか! ありがとうございます!!!
    展開に関しては、歌詞に有刺鉄線やフェンス等の表現で人の内面的なものを書いているようだったので「よし、これを学校に通っている悩める青年に当てはめよう」という考えに至り、ああなりました。
    ああやって、個人の内面を他の例えで書くのはあんまりやったことがなかったので、書いてて楽しかったです
    今後ああいう内面の表現使ってみようかな

    批評ありがとうございました!!! 嬉しいです!

    2011/06/27 22:50:02 日枝学

▲TOP