「メグ、絶対にあの学校に受かろうね!」

「もちろんっ、ハルカと一緒の学校がいいもん」


指きりをして顔を見合わせて笑いあった時、彼女がいなくなるなんて考えもしなかった。



ハルカと幼馴染のカイ君は学校公認の仲良しカップル。

けど本当は、カイ君は想いを伝えていなくて、ハルカは彼の気持ちにも自分の気持ちにも気づいていなかった。

二人が付き合っていないことを知っていたのはいつも彼女のそばにいた私だけ。
彼がどんなに彼女を愛していたのかを知っているのは私だけ。

そばにいたのに、そしてだからこそ、わたしは何も出来なかった。

彼女が変わってしまうのが怖かった。
彼女が私から離れてしまうのが怖かった。
彼女が彼を好きだと言ってしまうことが怖かった。

なのに、わたしはかけがえのない大切な親友を失った。

「いつもそばにいてくれてありがとう。なのに、約束守れなくてごめんね。わたしね、カイが恋愛感情で好きだったみたい。けどね、一番好きなのはメグだったよ。弱虫なカイをよろしく。」

手紙はわたしにだけだった。
彼には書いていなかった。

私の大切な親友はとても鈍感で不器用で優しい。
そんな子だから、彼には何も残せなかった。

そして、わたしがいたから何も残さなかった。

わたしを当てにして、私に彼を託したんだ。


だけどね、私も彼のこと好きなんだけどな。

ハルカのことが大好きな彼が私も好きなんだよ。

二人とも両想いなのに、私が入り込む隙間なんてこれっぽっちもあるわけないよ。

それに、



ハルカガイナイ世界ナンテ辛スギル



手に力が入り、くしゃっと手紙が折れ曲がる。

文字が霞んで見えなくなり、冷たいものが頬を伝った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ひとつの片想い【十面相】

"十面相"好きすぎて勝手にお話考えてしまいました。

閲覧数:73

投稿日:2012/03/17 15:45:15

文字数:726文字

カテゴリ:小説

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