数日たって、リントとレンカのいちゃつきが以前ほどに戻ると、六人の関係は、また落ち着きかけていた。――が、またも問題が起こった。
 グミとグミヤが喧嘩を始めたのである。
「なんでそうなるんだよ!」
「なんでもだもん! グミヤなんかもう知らない! あっちいって!」
「何で俺がお前のいうこと聞かなきゃいけないんだよ! お前があっちいけ!」
 ぎゃあぎゃあ言い合っているのを見かねて、レンが原因を探ってみたが、最早二人とも喧嘩の原因など忘れてしまっているらしいから、ばかばかしい話である。この二人はよく喧嘩をするのだが、たいていは至極単純な話であったり、どうでもいいようなことから始まる話である。
 今回も恐らくその例に漏れはしないのだろうが、今回はどうやら、いつものように次の日にはグミのほうから謝って一件落着、とはいかなさそうである。
 戸惑い気味なのは、二人のマジ喧嘩を始めてみる転校生二人で、あまりの激しさに半ば引き気味である。
「あんなに仲良かったのに…」
「グミヤが切れてる…。珍しいな…」
 対して、二人の喧嘩を嫌と言うほど見てきたリンとレンは、まったく驚いた様子もなく、
「いつものことだよ?」
「大丈夫、何日かたったら、何事もなかったかのようになる」
 と達観しきった様子だ。
 そんなことで、ミヤグミ戦争が始まったのである…。

 次の日、同じクラスの近くの席の二人は、授業中に、一時休戦となっていた戦争を再開した。
 授業を受けていたグミヤの後頭部に何かがぶつかって、膝の上に落ちた。それは何か紙を丸めたものらしく、広げると、シャーペンで殴り書きされた文字がある。どうやらグミが書いた文字のようである。
「バーカ」
 たった三文字を、A4のノート一枚に堂々と書いてある。
 グミヤはその意味を理解すると斜め後ろに座っているグミをキッと睨みつけたが、グミはさも授業に集中している、と言う顔をして、グミヤの視線を横目に見ると、鼻で一笑。(笑)。
(…んの馬鹿…ッ)
 そこで引き下がるほどグミヤは優しくなかった。すぐにそのノートの裏に、グミと同じくらい汚い字で、
「お前がな」
 と書いて、丸めると、グミに向かって力をこめて投げた。こちらを見ていなかったグミは額に攻撃を受けて、面食らったらしく、反射的に、
「いたっ」
 と言った。黒板に向かっていた先生がこちらを見る。バツが悪そうにグミは軽くぺこっと頭を下げて、先生の視線が自分から離れるや否や、グミヤを睨んだ。しかし、グミヤは先ほどのグミよろしくつんと澄まして、ちらとこっちを見ると、またやはり、フッと笑って見せた。
 どうやら二人の間では、グミヤのほうが数段上手らしい。

 休み時間になると、黒板消しを持ち出してきたグミが、それをグミヤに向けて思いっきり投げる。しかし、黒板けしをさっとキャッチしたグミヤは、にやっと笑って舌を出した。そこへ、別の黒板消し(しかも普通の二倍くらいの長さがある奴である)が飛んできて、顔面直撃。
 顔におしろいを塗ったように白くなったグミヤは、黒板けしをグミに向かって投げつけた。ささっとグミがそれを避けると、黒板けしは黒板にぶつかって、白いあとを残して、床に落ちる。
 グミヤは仕方が無いので水道で顔を洗って、嫌がらせに、グミのペンケースのストラップを、チョークの粉まみれにしておいた。

 その後は下校時間で、運動神経がそこそこの二人は、さしてダイナミックでもなく、小学生の喧嘩かとも思われる取っ組み合いをしながら、それぞれの家へと帰っていった。
 二人の家は隣だった。

 それからまた数日たって、次第に異変が露呈し始めていた。いつもならもう仲直りしていてもよさそうな頃だが、二人は一向に仲直りする兆しがないどころか、どんどん中が険悪になっていくばかりである。
「おいおい…。今回ばかりはなんかちょっと…」
「まずそうだね…」
 流石にリンとレンも危険らしいことに気がついたのか、とめに入る。この頃になると、すでにグミとグミあの体には無数の生傷が合った。
「まあ、おちつけって」
「グミちゃん、ドードー」
 今にも飛び掛っていきそうな勢いで威嚇し合っている二人をなだめて、リンとレンがそれぞれの闘志をそぐ作戦だ。
「お前が向きになってどうすんだよ。大人になってやれって」
「一発ガツンと言ってやらないと、あの馬鹿はなおんねぇんだよ」
「何発だってやっていいけど、それで直るなら苦労して無いだろ?」
 グミヤは詰まった。今までにもガツンといって、なおったためしがないからである。
「グミちゃん、女の子が男の子と取っ組み合いなんて、よくないよ」
「でもグミヤが悪いんだよ!」
「グミちゃんがちょっと言えば仲直りだよ? 仲直りしたいでしょ?」
「う、うん…」
 二人の様子が落ち着いた。
「向かい合って」
 リンとレンが二人を向かい合わせた。
「…ごめん」
「…ごめん」
 二人で頭を垂れた。
 そして、二人が同時に顔をあげた。
「誠意がこもってない!!」
「んだと!」
「そっちこそ何!?」
 リンとレンがため息をついた。先は長そうである。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 14

こんばんは、リオンです。
遅くなりましたが、金曜日分です。
六人の中ではミヤグミがダントツで字汚そうなイメージです。
一番キレイなのは多分レンカちゃん。
レンとリントくんはそれなりにきれいで、リンちゃんはノーマルです。

閲覧数:282

投稿日:2011/12/17 00:26:37

文字数:2,123文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • 美里

    美里

    ご意見・ご感想

    こんばんわ!

    いや、やはり、ミヤグミは可愛いですね。それがもう、すごく可愛いです。
    幼稚園児みたいです。喧嘩の原因は何だったのでしょう。
    グミヤ君の方が数段上手でも、どちらも変わらない気がします。
    ミヤグミの後ろの席に行きたいです!そして、二人の喧嘩をほんわかと見物できたら…

    次回も楽しみにしてます!

    2011/12/17 20:52:11

    • リオン

      リオン

      変身遅くなってごめんなさい><

      ミヤグミいいですよね、すごい癒されます。
      多分、喧嘩の原因はなんか『一番美味しいポテチの味』とかそんな感じだと思います。
      結局の所似たり寄ったりで低レベルなミヤグミ可愛いです。
      流れ弾にご注意いただければ、後は安全にご観戦いただけるかと(笑

      これからもがんばりますね!!^^

      2011/12/18 00:50:56

オススメ作品

クリップボードにコピーしました