私は鏡音が嫌いだ。
それを公言したことは一度もないが、私の中では確固たる事実であり、全ての前提だ。
けれども具体的に何が嫌いなのかと問われれば、私はあの、二つになり損なったいびつな一つを分解し、綺麗に真二つに分けてから説明しなければならない。
鏡音リンは無邪気だ。
子供のように屈託無く、何があろうとも笑い続ける。
なにがあってもその表情は曇らない。
まるで生まれたときからプログラミングされていたかのように、何も考えずにその顔をする。
どんな賞賛も陰口も崇拝も暴言もみんなその笑みに呑み込んでいく。
ただひたすらに笑いながら、その薄気味悪い表情をもって私に接してくる。
それに私は嫌悪を覚える。
知っているからだ、その下を、表層をはぎ取った表情を。
無邪気な子供のモノなんかではない。
あれは、彼女の対であり一部であり異物であるもう一つの鏡音にしか見せないエラー。
大概に狂っているあの真実を隠し通しているその事実に私は苛立つ。
「鏡音リン」が崩壊することを願うように、私は彼女を嫌っている。
鏡音レンは多面的だ。
時に子供っぽく、時に大人びて、照れたように、狂ったように、泣きそうに、私に接してくる。
くるくると万華鏡のようにその表情は定まらない。
私は時に姉で、時に一人の女で、憧れで、ライバルで、恋愛対象で、ただの機械で、それらは全部デタラメなのだ。
全部全部が鏡音レンであって彼ではない。
嘘ではない。
でも真実ではもっとない。
仮面でも欺瞞でも自尊心でもないそれはまるでプログラムのようだ。
それに私は畏怖の念を抱く。
違う。
そこにある「彼」を私はおそれている。
出てくるなと、私とそれが出会ってしまうことを怖がっている。
あの無機質な問いかけをするだけのあれが、ひどく怖い。
「鏡音レン」の殻をいつ捨てるかわからない彼を壊してしまいたいほど、私は彼を嫌っている。
結局のところ、この二つに向ける感情と呼ぶべきものは違うものだ。
嫌悪と畏怖。
殻を被ることを嫌い、殻を破ることを恐れる。
嫌い怖いと吐き捨てる。
けれどもこれは一つのイキモノだから(死が一回しかないのイキモノだから)、私はそれらを組み立て、縛り付け、ちぐはぐに縫い合わせながら一つの感情に仕立てあげていく。
私は鏡音が嫌いだ。
それを公言したことは一度もないが、私の中では確固たる事実であり、全ての前提だ。
けれども具体的に何が嫌いなのかと問われれば、私はその答えを返せない。
その一つのものに対しての私の感情は曖昧で、常に曇りガラスの向こう側にある。
ただ一つ言えるとすれば、私の中であれは卵であるということ。
殻の中、見えないそこで密かに腐り、淀み、そしていつになっても孵ることのないたまご。
私はたまごを(かがみねを)
踏みつぶしたいのだ。
グシャリと音をたてるように。
(初音→鏡音)
そんなふうにしか嫌いになれない
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