都合のいい恋を始めましょう

　およそ太陽に届かぬわたし
　地べたを這いずって　泥を啜るの
　熟れた果実から溢れたしずく
　骨身に徹えるほど　芳しくある

　テストの点も　既読無視も　SNSも忘れて
　月の下で踊りたいと　ただ憧れた

　曖昧に濁して
　微笑みながらかわして
　逃げ道を作って
　頷きながら拒絶して
　都合のいい恋を始めましょう


　死んだ神様には　わからぬでしょう
　哀れな仔羊は　泡沫の中
　ここは仮初の楽園なのか
　それとも　逃げられぬ煉獄なのか

　"愛してる"も　"抱き締めて"も　とっておきの台詞も
　夢の中で告げるのなら　勇気はいらない

　丁寧に育てた
　わたしのこころ　壊して
　丹念に愛した
　わたしのからだ　穢して
　……想像でなら気が狂えるのに

　曖昧に濁して
　微笑みながらかわして
　逃げ道を作って
　頷きながら拒絶して
　都合のいい恋を始めましょう



３　５　４　３
およそ　たいように　とどかぬ　わたし
４　５　７
じべたを　はいずって　どろをすするの
３　５　４　３
うれた　かじつから　あふれた　しずく
４　５　７
ほねみに　〈こた〉えるほど　かぐわしくある

６　６　６　４
テストの〈てん〉も　きどくむしも　えすえぬ〈えす〉も　わすれて
６　６　７
つきのしたで　おどりたいと　ただあこがれた

５　４　７　４
あいまいに　にごして　ほほえみながら　かわして
５　４　７　４
にげみちを　つくって　うなずきながら　〈きょぜ〉つして
６　８
つごうのいい　こいをはじめましょう


３　５　４　３
しんだ　〈かみ〉さまには　わからぬ　でしょう
４　５　７
あわれな　こひつじは　うたかたのなか
３　５　４　３
ここは　かりそめの　らくえんなのか
４　５　７
それとも　にげられぬ　れんごくなのか

６　６　６　４
あいしてるも　だきしめても　とっておきの　せりふも
６　６　７
ゆめのなかで　つげるのなら　〈ゆう〉きはいらない

５　４　７　４
ていねいに　そだてた　わたしのこころ　こわして
５　４　７　４
たんねんに　あいした　わたしのからだ　けがして
６　８
そうぞう〈でな〉ら　きがくるえるのに
５　４　７　４
あいまいに　にごして　ほほえみながら　かわして
５　４　７　４
にげみちを　つくって　うなずきながら　〈きょぜ〉つして
６　８
つごうのいい　こいをはじめましょう

※〈〉内は１音で２文字