【第三話:放浪少年の場合】

 「ふむふむ、そういうわけでその≪憂鬱少女≫を捜してるわけね。」

 ぐみが好奇心をもはや溢れさせ、レンに訊く。

 「うむ、しかしなかなかうまくはいかない。何しろ名前も知らぬわけで…」

 なるほど、その≪憂鬱少女≫の考え方が丁度私と似てたわけだ。
だからあんなにうれしそうな眼をしたんだ…。

 「レン、お金はどうしてるの?」

 私は気になって咄嗟に訊いた。

 「お金は…、心配いらない。大丈夫だ。」

 そう言ってレンがとりだしたのは、カード。

 なんてカードが似合わない人なんだろう…。

 否、レンにカードが似合わないんじゃないな。
レンが袴をはいているから、こんなにも似合わないんだ。

 私たちは今、公園にいる。

 あの後、レンは私を気遣って帰ろうとしたのだが、ぐみのことだ。
簡単に帰すわけがない。

 “まず訊きたいことは聞いてから”
これがぐみのモットーだって聞いたことがあるようなないような…。

 「実は俺の家、結構な大企業なんだけど。」

 「え、どこどこ!?会社の名前は?」

 「いわない。」

 つくづく謎が多い。

 この公園で話し始めてだいたい、40分。

 この間にレンについてわかったことが、
≪憂鬱少女≫を捜しているということ。
その為に日本中を行脚しているということ。
そして、とある大手企業の息子ということ。

 「まあ、きっと≪憂鬱少女≫はリンだと思うんだけどなあ…。」

 「そうだったらいいんだがな。」

 「!…―――…」

 突然のことに言葉を失う。

 紅く、紅く、頬が染まるのがわかる。

 否、これはアレだ。
私の性質上の問題だ。

 そう、だからこれはそんなんじゃなくてね。

 と、必死にぐみに目で訴えるが届かない。

 違う。ぐみが受け取ってくれない。

 「おやリン、そんな顔をして、どうかしたのかい。」

 「いやいやいやいや、何でもない何でもない!!」

 必死の否定。
千切れるほどに、首を横に振る。

 「俺の知っている限りでは、リンのような人が何でもないというときは、大抵何かあるときと心得ているのだが…」

 よく知ってるなあそんなこと!!

 「とにかく、大丈夫!ほんとに、ほんっっっとになーんにもありゃしないから!!」

 私はぐみの腕をひっつかみ、その場を去ろうとした。

 そこで、だ。

 「リン、ぐみ。今まで旅をして、こんなに親切にしてくれたのは君たちが初めてだよ。本当に感謝している。またな。」

 その、レンの笑顔。

 また、みっともなかったであろう顔を、戻し「じゃあね!」とだけ言った。

 そして、ぐみを引きずりながら公園を後にした。

 「また会えるといいねえ、放浪少年くんに。」

 「っぐみ!!」

 ホント、こんなに動揺してたら本当にそうみたいじゃん。

 駄目だって。

 もう、あの感情を思い出しちゃいけない。

 思い出したくない。


 だって、きっと――――…



 -とある場所のの木陰-


 やっと、見つけた。

 見つけちゃった。

 
 覚えてるかなあ、君は。

 私のこと。



 「放浪…少年……。」



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

憂鬱少女と陰日向

リンちゃんのツンデレは書くのが楽しい!

ぐみは…Sかな?ww

レンはとてもニブ男ですねww

閲覧数:95

投稿日:2012/06/25 13:52:34

文字数:1,343文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    グミ!かわいいな!

    その無理やりな感じ!
    そんなのが君にはぴったりだ!ww

    2012/07/18 00:21:51

    • イズミ草

      イズミ草

      強引wwぐみですねwwww

      とても無理やりですがww
      お気に召したようで光栄でありんすw

      2012/07/18 18:12:13

オススメ作品

クリップボードにコピーしました