この世界は、皮肉だ。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。毎年決まった時期になると、必ず季節は巡ってくる。
つまり何が言いたいのかというと、ずばり言おう。
「でもさぁ、夏と冬は嫌いかな」

いきなり何言い出すんだと思った方もいるだろう。でもそうなのだ。
だって、夏は暑いし、宿題多いし、冬は寒いし、雪が降るから学校来るのが超辛いのだ。
今も例年に習い、吹雪がこの地域を襲っているのだ。



窓ガラスに恐ろしいほどの雪が叩きつけられている。外の景色はまったく見えず、見なくても想像が付く。
窓際のこの席が外の冷気をもっとも感じる場所ということが、もう一つの皮肉だった。
今日はいつもよりも寒い気がする。最高気温が氷点下、ということもあるだろうが、それとは違う何か。
頭を振り、考えを消す。きっと、気のせいだ。この天気がそう思わせているだけだ。
教室はストーブがきちんと働いていて、窓もドアも一部の隙間もなく閉められている。
「お前、どうした?」
後ろの席から声が聞こえた。背中が何かで突かれる。振り向くと、シャーペンを持ったクラスメイト、レンの姿。
「どうした、って、何が?」
「いや…なんか顔色が悪いぞ?」
「え?」
鞄から折りたたみ式の鏡を取り出そうとするが、あることに気が付く。
「鏡忘れた…」
「女として身だしなみは大切だぞ?」
「昨日お姉ちゃんに貸して、返してもらうの忘れてた…」
彼氏とデートだとか言って、さりげなく私の鞄から鏡をスッていった姉の顔を思い浮かべる。
「大丈夫よ。私はいつも通り」
「まぁ、リンが言うんならいいか。でも、無理はすんじゃないぞ」
真剣な目のレンをじっと見つめてみる。
「何変なこと言ってるの?大丈夫?」
「心配してたの俺だろ!?」
いつも通りのこのやりとりで、さっきまでの考えも消えうせて行った。



三時間目が終わり、教室移動の為に立ち上がると、くらりと視界が揺れた。頭が痛い。ふらふらとする体を叱咤し、歩き出そうとすると頭痛がひどくなり、目の前が暗くなっていく。
霞んだ視界がぐらりと傾き、体が冷たい床に叩きつけられる。
誰かが私の名前を呼んだ。




目を開けると、見慣れない天井が目に入ってきた。ゆっくりと上半身を起こし、ここがどこなのか、自分はなぜここに居るのか考える。
自分が寝ていたのはどうやらベットで、学校の中でベットがある部屋といったら、一つしか思いつかない。
それにしても、何故保健室にいたのだろう。記憶の糸を辿るが、さっぱり解からない。
とりあえず教室に戻ろうとベットから降りると、ゆらり、と体が揺れた。
踏みとどまろうとしたが足が間に合わず、目の前に床のタイルが迫ってきた。
顔から倒れると思い、硬く目を瞑ったが、痛みが体に走ることはなく、誰かの腕が私を支えた。
「おい、大丈夫か!?」
頭上からかけられた声は見知ったレンのものだった。おぼつかない足取りでなんとか立ち上がると、レンと目が合った。
「大丈夫。ちょっと目眩がしただけだから」
「大丈夫なわけないだろ!さっき大丈夫だって言っておいて倒れたのはどこのどいつだ!いいから休んでろ!」
「はい…」
いつもとは違うレンの迫力に私は押され、つい折れてしまった。
素直にベットの上に横になる。するとレンはベットの端のほうに腰をかけた。一つ溜息を付いて、一言。
「無理やりでも連れて来ればよかった。お前なぁ、無理してたらひどいことなるぞ」
「さっき倒れたって言ってたけど…私、なんで倒れたの?」
「熱。三十九度五分だって。それで気付かないなんて、お前鈍感にも程があるだろ」
さすがに言い返せない私は唇を尖らせた。
「じゃあ、俺は行くぞ」
「え?連れてきてくれた人が帰っちゃうの?」
「つーか、なんで俺が連れてきたって知ってるの?」
「だって、保健室にまで連れてきてくれて私が目覚めるまで傍にいてくれる人、レンしかいないじゃん」
「…」
「傍にいて」
レンはくしゃくしゃと髪の毛を乱すと、ベットの端に座った。
「ここにいてやるから、早く直せよ」
顔は見えないけれど、とても安心できた。

皮肉な世界だけど、たまにはこんなこともあるから、いいかもしれない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

雪と目眩と優しさと

昨日お友達のお誕生日だったので書きました。
おめでとう!

今更ですが、あけましておめでとうございます。
去年は温かいメッセージをありがとうございました。
今年もよろしくお願いします。

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投稿日:2013/01/10 20:25:20

文字数:1,736文字

カテゴリ:小説

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