大人になればなるほど
代名詞ばかりが増えてきて
誰も私の名前を呼ばなくなって
自分の輪郭すらあやふやだ
雑踏に紛れた景色に成って
無色透明の薄い影
どんなに産まれた瞬間想いを込めて
名をつけてくれたのだとしても
このまま誰にも呼ばれないのなら
この名詞には何も意味がない
愛されることよりも
新聞の一面を飾るほうが
まだ気軽に叶うような
気がしている
匿名性が望める歳でもないから
誰も彼もが私を読んで
私を呼んで私を知って
好きに囲まれ趣味に溺れて
毎度のように 品を変え
何もないのは寂しいから
楽しみがなきゃ生きられないから
集めたアクリル板 絵付きの記章
数年経てばただのゴミ
理解していても見ないふり
生存欲求の成れの果て
でも何をやってもどうしても
愛だけは手に入らなかった
誰か私を満たしてくれ
無償の愛を注いでくれ
名前を呼んで 声を枯らして
叫べば どこかの世界の
誰かに届くのか
埋まらない欠片はなんだ
次は何を欲したら
この寂しさはいつ埋まるんだ
教えてくれ 教えてくれ
いくら好きになったって
積み重なるのは有償の
一方的な私の想い
慰めのような子守唄
私に向けた歌でもないのに
ありがとう と礼を言う
偽名で書いた感想文
名前を呼んで 私の名前を
ここに晒す勇気もないが
無機物に囲まれて
綿が詰まった縫いぐるみを抱いて
縋るように触った電子の箱は
少しだけ温かった
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