森の小道を歩く。
赤ちゃんを抱っこして、籠を持ちながら。


「…ふぅ」


赤ちゃんを二人、抱っこしながら歩くのも楽じゃ無いわ。
でも嫌じゃないのは自分が腹を痛めて産んだ子だからね。
すやすやと天使の様な寝顔を浮かべた二人を見て、疲れが吹っ飛ぶ思いがした。


「そうだわ、きっと眠いからよ。確かこの森に川が…あら、あったわ!」


赤ちゃんが川に落ちない様にとても目立つ、大きなきの根本に赤ちゃんを置いた。
大丈夫よ、きっと。熊なんていない。
そう軽く思って顔を洗いに行った。


「……あら?」


私の赤ちゃん二人を抱っこしている人がいる。
灰色のローブを着ているから顔が見えない…けど細さから女の人ね。
でも、どうして私の赤ちゃんを…?


「あっ!」


思わず声をあげた。
だって、その人は私の赤ちゃんを抱っこしたまま…

何処かへ、向かおうとしているの。


「まっ、待ちなさい!」

だっと地面を蹴って追い掛ける。
その人はこの辺の人かしら?何処の人かしら?
変に冷静な頭がそう考える。


「返しなさいっ!返してっ!」


どれくらい走ったのかしら。
気が付いたら私は泣いていた。
赤ちゃんも泣いている。
おぎゃあ、おぎゃあ、と。


「返してっ!返してよ!!私の赤ちゃんを!!」



誰かの…恐らくその人の家の明かりが見えた頃、私は腕を目一杯伸ばした。
しめた、ローブを掴んだ、と思ったけど、それは糠喜びにしか過ぎなかった。


「…うっ…!?」


急に腹に痛みが走った。

何?
何が起こったの?
痛みに耐え切れずに私はそのまま地に倒れた。
かしゃん、と籠が落ちた。
嗚呼、ミルクは無事かしら。
痛む箇所を押さえると、ぬるりと生暖かい感触がした。


「渡さない…私の…幸せなんて」


緑色の冷たい目が私を見下ろしていた。
手には、赤くなったナイフ。
おぎゃあ、おぎゃあと我が子の泣く声が聞こえる。


「、返し…っ…わたし、の、」


また激痛が走る。
イタイ痛いイタイいたい!
女の腕には何時の間にかあやされている我が子がいた。


「待っ…て…あか、ちゃ…」


女は無情にも嬉しそうな顔をして家に入った。
私は、と言うと緩やかに意識を手放す事しか出来なかった。
三日月がミルクの入った瓶を照らしていた。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】moonlit bear【メイコ視点を勝手に書いてみた】


悪ノPさんの『moonlit bear』を熊……メイコさん視点で書いてみました。

殆ど勢いと自己解釈です。

閲覧数:456

投稿日:2010/03/22 03:00:24

文字数:975文字

カテゴリ:その他

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  • 癒那

    癒那

    ご意見・ご感想

    はじめまして。癒那といいます。

    やったぁ!熊視点だ♪ということで読ませていただきました!!

    メイコ母さーーーーん!!死なないで!!

    最後の方泣きそうになりました。すごくよかったのでブクマさせていただきます♪

    ではありがとうございました!これからも頑張って下さいね^^

    2010/03/22 23:43:44

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