「レン」
「うん?」
ふと振り向いたレンの優しげな笑顔に、リンは思わず呼吸までも止めてしまった。
「どうしたの、リン?」
「あの…この間、掃除をしていたときに…見つけたの」
そう言って、小さくたたんだルーズリーフを手渡す。何なのか、理解できないレンはそれをぼけっとしたまま受け取り、ゆっくりと開いていく。
それからしばらく、時間が流れた。
じっと小さな紙切れを見つめ、時折レンは怪訝そうな顔をしていたが、読み終えると顔を上げ、それからにっこりと微笑んだ。
「…ありがとう」
痛々しいくらい健気な『作り笑顔』。
「レン…」
「俺だったらきっと、気がつかなかったな。リンに見つけてもらえてよかったんだ」
「…本心じゃないくせに」
「え?」
「いつも笑ってるレン見てると、苛々するの!」
いきなり、リンの中で何かの糸のようなものがぶつりと切れた音がした…様な気がしただけである。実際に何かが切れていたら一大事だ。
「笑顔以外の表情はないのか、怒るとか泣くとか悲しむとか――!!」
「んな理不尽な!」
「泣け!」
「無理だよ!」
「怒るなり泣くなり喚くなりせぇ!」
「何なの!?」
驚いた様子のレンと、自分でも途中から何を言っているのかよくわかっていないリンは、ぎゃあぎゃあと言い合い、仕舞いには何で言い争っているのかすら忘れてしまいそうだった。…実際、そこまで馬鹿ではないが。
今にも竹刀を振り回しながら襲いかかってきそうな剣幕のリンを見て、レンはとりあえず逃げ惑う。後ろには虎が一頭、レンを睨み付けているような気がした。
「――レン、付き合って」
「は?」
「いくよっ」
「どこに?」
「黙ってついてくる!」
「はい!!」
「――どうよ!」
「…どうといわれても…」
現在、二人はとあるCDショップにいた。サンプルCDを聞かされ、いきなりレンは『どう』とわけの分からない質問を投げかけられ、レンはきょとんとしているばかりだった。
曲はどうやら、失恋の歌のようである。
「泣けるじゃん」
「…泣け、と?」
「私、これ、何回きいても号泣するんだけどなぁ?」
「…そう…」
しかし、レンは涙を流すそぶりも見せない。
「――次ッ」
「――今度は?」
「映画!」
「何でまた?」
「超泣けるって友達が言ってた!」
そういう奴は大概の映画で泣いている、とレンは思う。しかし、リンには言わないでおいてやった。正直、レンを泣かせることよりも映画を楽しもうとしているように見えたからなのだが、案の定、リンは映画を見て大号泣した。…レンの方はあくびなんかまでしている始末だったが。
「泣いたでしょ?」
「別に」
「悲しくはなったんじゃない?」
「ありきたりな感じがしたなぁ」
「…えぇい、まだまだ!」
「今度は一体…」
へとへとになった様子のレンは息を切らして立ち止まった。
「次は泣けるビデオを買う!」
「えぇぇっ!そんなお金、どこにあるのさ?」
「レンのおごり!」
「やだよ!なんか人多いし…」
「近くでお祭りやっているみたい。さ、行くよ!」
無理やり連れて行こうとするリンの手を思わず振りほどいて、それから悪かったとわびてやろうと――。
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ご意見・ご感想
癒那
ご意見・ご感想
テストの点数に絶望しそうな癒那です……。
私もテストもうすぐなので猛勉強中です!!
そういえば、昨日TVHで雪ミク雪像でてましたよ。なんか「萌え系雪祭」だかなんだか……。
リオンさんは見ましたか?
それではおたがいテスト頑張りましょ~
2010/02/12 20:03:59
リオン
癒那さん、こんばんは。
テスト…何故この世にそんなものがあるのか理解できませんね。…ね。(同意を求めるな
えぇ!み、見逃した!!何で見てなかったんだ、自分ーっ!!
テスト、よい点になるといいですね!
2010/02/12 22:48:05