このコンビニは色々とおかしい。そして、それに順応してしまっている自分もおかしい。
いや、正確には順応というよりか、諦めみたいなものだが。
ほぼ毎日、こんなところでバイトしていたら順応せざるを得ないというか。


まず何がおかしいのかと言うと。


――――店長がおかしい。


「挨拶の角度には三種類あってね、時と場合によって使い分けが違うの。」
「はぁ」

何やら人差し指を突き立て得意そうに解説を始める店長。

店長の印象は働きはじめてしばらくたった今でもなれない。
どっちかって言うと、コンビニの店長ってイメージよりもキャリアウーマンっていうイメージが強かったからだ。

「それなら私知ってますよ。会釈が15°、普通の礼が30°、謝罪なんかで使うのが45°。ですよね?」
「いいえ、違うわ。ワタシ流の挨拶はね、会釈45°、普通礼90°、謝罪が100°よっ!」
「何ですかソレ!?」

大体90度も腰曲げたら折れちゃいますよね!?

「あーちなみに、もう絶対に取り返しがつかない!!っていう時の謝罪の挨拶は360°よ」

なに一回転してるんですか。



――――店員がおかしい。


「えーっと……、今日から働く鏡音レン君ね。よろしく」
「お願いします」

店長は履歴書をまじまじと見て、次に目の前に立った人物を見つめる。
今日からこのコンビニで働き始めるらしい。
髪は黄色く、男子にしては長いそれを後ろで一つに束ねている。
だが、身長が低く、ひょっとしたら中学生くらいに見えない事もない。一応私と同じ高校生と言うことらしいけど。

「んじゃ、まず最初に教えておくわ。挨拶の角度について。」

あぁ、始まったよ店長流挨拶。

「それなら俺知ってますよ?」
「一応聞いといて。ワタシ流の挨拶。」

店長は意味ありげにコホンと咳払いをする。

「えー、まず会釈が45°、普通礼90°、謝罪が150°よっ!!」
「はぁ。なるほど。」

納得しちゃ駄目ええ!!それ実際にやったら腰壊れるからあ!!
てか店長、謝罪の時の挨拶の角度、私に教えたときよりも50°増えてませんか?



――――店員がおかしい。そのに


新しく入ったバイトの鏡音レン君。
ちょっと無愛想な感じだけど、根はいい人みたいだって店長は言っていた。

丁度今日はそんなレン君とバイトをやっています。

「レン君」
「……何すか」

うっわー、何かすっごい無愛想。でもイケメンだし、ゲームに出てきそうないい感じのクーデレ。
いや、これはよくよく考えたらツンなのかな?

「レン君は、好きな人とか居ないの?」
「俺っすか?んー……いますよ。」

へぇ……やっぱりレン君にも好きな人はいるんだ。かなりのイケメンだけに、ちょっと残念かも。

「二次元に限りますが」


………二次元?



――――感性がおかしい。


休憩中の事。

「昨日午後3時頃、○○銀行に覆面を被った二人組の強盗が……」

テレビはそんなニュースを伝えていた。
どうやら昨日とある銀行に強盗が入り、約1億円を奪って逃げたらしい。
犯人たちは未だ逃走中とのこと。

「1億円かぁ……。いいなぁ」

1億円もあったらわざわざこんなコンビニでバイトなんかしなくても、生活費だけなら一生生活していけそうなお金だ。

「店長、もし1億円あったら何に使います?」

同じくテレビを傍らで見ていた店長に聞いてみる。

「それだけのお金があったら、チョコボール何個買えるのかしら?」


………あなたはチョコボールだけで人生を過ごしていくおつもりですか。



――――感性がおかしい。そのに


「レン君は、もし1億円あったら何に使う?」
「ん?何すか突然」
「まぁ、ちょっと気になって」

私は店内で掃除をしていたレン君に向って呼びかける。レン君なら、少しはまともな事を言ってくれるだろう。

「ん~、そうっすねぇ……」

動かしていたモップを止め、腕組みをして考え始める。

「それだけあったらメイドさん何人雇えますかねえ?」


………メイドさん?



――――会話がおかしい。


店長はこの上なく英語が苦手だ。
だから会計をやっていて、偶然外人が並んでしまった時、テンパってしまう事も少なからずある。
丁度今もそうだ。

「い……いらっしゃいませ」

ぎこちない日本語とぎこちない動作で、商品のバーコードを読み取っていく店長。

「ドゥーユーハバポイントカード?」
「Yes」

お、店長の使う英語が珍しく合ってるかも。
もしかして中学一年程度のレベルの英語なら少しは出来るのかな。

「スプーンツケマスカ?今ナラオ安イデスヨ?」
「Y……Yes」

いや、スプーンは普通無料ですよね店長……?
外人のお客さんの方もその意味を理解しているのかは分からないけど、苦笑いしている。

「ハイ、ボタモチハ私モ好キデス」

どうしてそんな会話になった。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コンビニ店員の日常 【コメディ?】

時給310円氏の巡りすぎシリーズに触発されて、コメディというモノが書いてみたくなりました。

自分が書いたのはおもしろいのかどうかは分からない・・・。
私の場合だとセンスがおかしいし、知り合いにも「突っ込みどころが違う」って言われることも何回かあります。

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投稿日:2010/10/28 22:04:25

文字数:2,043文字

カテゴリ:小説

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