ある土曜日の午後。
その日のかなりあ荘は静かだった。
ほとんどの人が用事により外出していたからだ。


だが、誰もいなかったわけではない。
このアパートの管理人、しるるさんは一人でお茶を飲んでいた。

そして、もう一人。
しるるさんの知らない内に外出し、知らない内に帰ってきた者がいる。
そう。ゆるりーである。
実はこいつも暇だった。





私ことゆるりーは朝のごたごたから、かなりあ荘に帰宅した。
何があったのか?
……面倒なので省略する。


昼、ご飯を食べようと共用キッチンへ行こうとするゆるりー。
その前に冷蔵庫を確認する。
……ほとんど何も入っていない。
入っていたのは昨日買ったばかりの豆腐、卵、ケチャップ、チューブのしょうがのみ。
正直、入り卵にケチャップを少量かけるぐらいしかできない。
せめてハムやベーコンを買っておくべきだった。

仕方がないので外出することにした。
コンビニで昼ごはんを買うことにした私は、鞄を掴む。
そして買い物もしておこうと、メモも書く。
走り書きなので字が少々汚いが、私しか見ないし別にいいだろう。



コンビニで唐揚げと菓子パンを購入する。
何故唐揚げなのかは、なんとなくそんな気分だっただけである。


適当に入った本屋で、欲しかった本を購入。
ビニールの手提げ袋が重い。さすがに本四冊は重かったか。
内二冊はライトノベル、漫画のため軽い。
でも正直に言えば、指が痛い。



そして買い物のためにスーパーに入る。
メモを見ながら、買い物かごに買う物を入れていく。


「えっと…豚肉、キャベツ、醤油、サラダ油…」


買う物が多すぎる。
これを歩きで持っていくのは少々きついが、かなりあ荘から徒歩数分の位置にあるため楽なほうだ。

塩こしょう、砂糖、みりん、小麦粉は部屋にあったはずだ。
今日の夜は豚のしょうが焼きにしよう。

あと今日は暑いし、アイスでも買っていこう。
箱売りのやつでもいいけど、冷凍庫がないから、普通のやつを買おう。
…かなりあ荘に誰かいるかもしれないし、二個ぐらい。




重い荷物を持ってかなりあ荘の階段を上がる。
なんかギシギシいってるけど大丈夫なのだろうか。
そのうち、床が抜けたりしないよね?

202号室の扉を開ける。
勝手に誰かが入りはしなかっただろうか?
鍵がついていないので不安である。

冷蔵庫に買ったものを一通り入れる。
本はみかん箱に投入。本棚が欲しいが仕方ない。
醤油とサラダ油はもう一つのみかん箱へ投入。
冷蔵庫に入れないものはみかん箱にリリースしている。
みかん箱ならいくらでもあるのだ。
虚しい気がする。


さあこれからご飯を食べよう、とコンビニの袋に手をかけた瞬間。



「やあああああああああああ!!!!!!」



下からしるるさんの叫び声が聞こえる。
このアパートはボロい。
以前ターンドッグさんの鳴き声や激しい金属音が、隣の私の部屋どころか階下にも聞こえていたそうだ。
勉強に集中していたところにあの泣き声だったため、こっそり録音できるほどにはかなりあ荘はボロかった。
だからこのしるるさんの声だって、二階までしっかり聞こえる。


「なんだ!?何があった!?」


急いで部屋から飛び出す。
こうしている間にも、あつあつほかほかの唐揚げは冷めていくわけだが、そんなことは気にならない。
階段を迷惑にならないように静かに駆け下りる(超難しいし足首が痛い)。

が、最後の一段を降りる拍子に足首を捻る。


「あだっ!!」


顔面から地面にこんにちはしそうになるが、咄嗟に手をついて顔面ダイブを回避。
ただ、足は痛い。捻挫になってなければ良いが。


「今月三回目…?勘弁してよ…」


ゆっくり立ち上がり、先程の声の主を探す。



『あなたが………だって…らなくて……』


誰かの声が聞こえる。
この声の発生源は…共用リビング?

とにかく状況を確認しようと、ドアノブに手をかけた瞬間。



『ごめんなさい……私は……』




何かが扉と私の体を、すり抜けていった気がした。
体が一瞬ふわっと浮くような、経験したことのない何か。

それが一体何だったのかは私にもわからないけれど。


その何かが…悲しそうに、泣いていたことだけは、なんとなくわかった……



「……?」


しばらくの間、私は呆然としたまま、壊れそうなドアノブを掴んだままだった。
ちょっと経って正気に戻り、慌ててドアノブを回し、扉を勢い良く開ける。



「しるるさん!大丈夫ですわっぷ!?」


勢い良く開けすぎて、足の中指を打ってしまった。
どうしてこのタイミングで打ってしまうのか。
あとなぜ中指なのか…。
あとしゃがみ込むついでに、頭も勢い良く打ちました。


しるるさんは何かを考え込んでいたらしく、突然入ってきた私に目を丸くしていた。
そりゃそうだろう。これほど見事なドジを披露する人間は、三次元には滅多にいないのだから…。



「わわわ!?ゆ、ゆるりーさん!?」


器用に頭と中指をおさえる私に駆け寄るしるるさん。
その姿がとてもかわいいな、とのんきに考える私はどうかしている。

あ、なんか今、走馬灯のようなものが…




*




「へー…それで?一匹見つけたら百匹はいると思う例のGを見つけた、と……」
「その話は全くしたことがないんですが。でも、やっぱり上まで聞こえてたんですね…」


リビングでしるるさんにお茶を淹れてもらい、私は一緒に買ってきたアイスを食べていた。
しるるさんは暑さに弱いらしく、アイスをちらっと見せたら目をうるうるにして「食べたいなータベタイナー…」と目線で訴えてきた。
二つ買っておいてよかった。

あ、もちろんパンと唐揚げは私のお腹に収めました。
昼ごはんですからね。


「で…さっきのしるるさんの話聞いてると、しるるさん…ノックもせずに入ったんですか?」
「ぎ、ぎく……だって鍵ついてないもん…」


確かに、このかなりあ荘には未だに鍵がついていない。
プライバシー?何それ、オイシイノ?なこのアパートは、はっきり言えば結構危険だ。


「だからと言って、ノックもしないというのはちょっと」
「でもっ」
「例えば、私が着替えてるときにターンドッグさんがノックもせずに『ちょーっとどっぐちゃんと遊びに来ましたよ☆』って突入してきたらどうですか?」
「……修羅場です」
「はい」


何故ターンドッグさんで例えたのかは私本人もよくわからないが、とりあえず納得してもらえた。
ターンドッグさん、すみません。あなたの犠牲は忘れませんよ。


「はぁ…でもまぁ、このかなりあ荘って【ほぼお化け屋敷】ですよ?幽霊の一人や二人、出たって不思議じゃないですよ」
「いやー、完っ璧に忘れてました。そうですよね…」


というか、怖いのならば、その頭に装着したシルルスコープ、外せばいいのではなかろうか?
そうすれば見えないだろうに。


「でもその子、可愛かったんですよね?いいなー、見てみたいなー」
「でもでも、お化けですよ?ホラーですよ?怖いじゃないですか!」
「いえ、私ちょっとなら平気ですよ?」


意味がわかると怖い話とかを聞いても、別に私は怖がらない。
怖すぎる画像とか映像とか、イメージが直接頭に流れ込むもの以外なら全然大丈夫なのだ

ちなみにゆるりーは、一時期話題になった、作品から逃げて美術館の脱出を目指す某フリーゲームをプレイし、全クリアまでしている。
EDも全ルートみたし、おまけで美術品を集めるのも全部やったので、完全なパーフェクトクリア状態である。



「…でも、お化けか…」
「その子、前にも会ったことあるんですが…名前思い出せなくて」

「……清花」
「…え?」
「清花、っていう名前じゃないんですか?」


以前、しるるさんが「清花さんが起こしてくれたから、会社にギリギリ遅刻しないですみました」と言っていた。
このかなりあ荘に、清花という人物はいない。
だとしたら、このアパートに住み着く幽霊…それとしか考えられない。



「清花…ちゃん、か」
「まーでも…次会ったときは酷いんじゃないですか?泣かせたんですよねぇーカワイイと噂の子を(黒)」
「いやあああああああ!!!黒い笑顔で言わないでえええええ!!」



しるるさんは完全に涙目だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ある休日のかなりあ荘【かなりあ荘】

しるるさんの「 幽霊ちゃんとお話しませう【byしるる】」http://piapro.jp/t/KUBI
の、(勝手に)別視点となっております。
202号室のゆるりーです。

先日の土曜日、何をしていたかを掲示板に書き損ねました。
ここに書いたことは、買い物以外は本当のことですw
ちなみに唐揚げは、210円でチーズ味のものを昼ごはんとして某コンビニで買いました。虚しいです。

ちなみにランクアップしましたが、私はみかん箱をしばらく使い続けますw
使い勝手が良いんですよ。
あと、先日のイベントで頂いたグミちゃんのフィギュアを飾る場所がないので、仕方なくみかん箱の上に飾ります←
ちゃぶ台でパソコンやってたりすると、グミちゃんフィギュアを置く場所がないのでw

更に言えば残念な鍵(南京錠)もつきましたが、私は南京錠の鍵をよく失くすため、202号室は鍵がなく開けっ放しです←
ただし扉を開けてすぐのところに、【バナナの皮】がたくさん仕掛けてあります←
侵入禁止ですよw

カーテン欲しいなぁ(ボソッ
シャーされたい。

閲覧数:183

投稿日:2013/07/01 18:11:29

文字数:3,467文字

カテゴリ:その他

  • コメント3

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  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    ちょっと待て。ちょっと待てwww
    なぜ俺はこんなにフルボッコにされているっ!!!?wwwww

    まずええ加減にその録音したのを消しなさいwww
    こないだどっぐちゃんにぶっ壊させに行ったはずだがなぜ!!?
    そしてなんという例えをする!?
    それだとさ、『ハーイ☆』と入った瞬間にゆるりーさんが『きゃああああああ!!!おまわりさんこいつです!!』と叫び、ルカさんがぶっ飛んでくる前にどっぐちゃんがダンプをも粉砕する「どっぐあっぱー」で俺を天井にめり込ませさらに俺はしるるさんとルカさんに説教された上天井を弁償させられるっていう負の連鎖じゃないか!!
    修羅場過ぎるわ!!

    これだけ弄ばれたんだから次は俺が弄んじゃうよ?(こら

    まぁいいや、それはおいおい考えるとして。
    とりあえずGはね、『G』を『リンちゃん』に置き換えると悶絶できるからそうしなさいw
    あと中指は私もよく打つ。だが小指はその倍は打つ!!ww
    そして頭はさらにその倍は打つっ!!!(打ちすぎだろ

    しかしいくらプライバシー保護ったってバナナの皮は危ないですねぇ、踏んで滑って頭打ったら危ないし床が抜けたら弁償させられるんですよ?
    ここは一つ『ネル式防犯装置』(15)でもいかが?(宣伝かよ

    2013/07/01 22:10:44

    • ゆるりー

      ゆるりー

      wwwww

      ふっ、いくらでもデータは残っていr(がしゃーん!!)……突然飛び出してきた見覚えのある猫又が奪っていきました←
      しかしそうは私がさせない!←
      多分、「きゃああああああ!!!」は叫びますがその瞬間チョークアタックするだけです!((
      何も壊れませんから大丈夫です!

      どうぞどうぞどうぞ(こら

      あなたそれ前にも言ってましたよね!?w
      小指より中指打ちやすいです(お前おかしいんじゃないのか
      頭はそうですw(お前もか

      床が抜けないようになんとかできるのが私です←
      それしるるさんに怒られる確立がw

      2013/07/02 23:47:40

  • しるる

    しるる

    その他

    扱いはアレで正解ですよ?
    というか、何も不自然がないくらいですw

    元ネタはね、たぶんわかりますよw
    誰かの実況動画をちらっと見た気がしますw
    ただ、あれ、ホラーですよね?なので、全部はわかりません←察してください

    2013/07/01 20:06:20

    • ゆるりー

      ゆるりー

      いいんですか?w

      結構難易度低めのホラーだと思います。
      あ、はい。

      2013/07/01 21:06:26

  • しるる

    しるる

    その他

    うまいわー……あ、アイスがね←
    いやいや、それは冗談で……矛盾ないですしねw
    そして、何よりもしるるさんの扱いが上手ですww

    ミカン箱は、ゆるりーさんは【本棚】として活用しているので、没収されなかったんですねww

    では、要望にお応えして【ゆるりーはカーテン(5)、理解できない美術品(5)を手に入れた】

    2013/07/01 19:26:52

    • ゆるりー

      ゆるりー

      アイスおいしいですよね、本当に。
      なんかちょっと扱いがアレですみませんw

      死守しております←

      理解できない美術品w
      しるるさんって元ネタわかります?w

      2013/07/01 19:38:17

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