こっそりと、扉の隙間から見えた、雑音の姿。
それを見た瞬間、思わずドキッとして、声が出そうになった。
今も、その雑音を見ているうちに、胸の高鳴りが早くなっていくのが分かる。
あれって、もしかして・・・・・・。
雑音は床に座り込んで、白い布のようなものに、顔をすり寄せている。
あれって、博貴さんのワイシャツじゃ・・・・・・。
それに、雑音は顔をすり寄せて、抱きしめて、じっと固まったままだ。
まるで、もう二度と離さないように。
・・・・・・何やってんの?
博貴さんの・・・・・・ワイシャツで・・・・・・。
雑音のやっていることが、まったく分からない。
あたしは、雑音の行動に苛立ちを覚えた。
いや、本当は、その行動の意味が、少しだけ理解できてしまったから。
やっぱり、雑音は、あたしより・・・・・・。
あたしをほっといて、あんな・・・・・・!
今まで、あたしとあんなに、一緒にいたのに、それなのに・・・・・・!!
胸の中に、むせ返るような、湧き上がるようなものがある。
何なの、この気持ち・・・・・・・。
自分でも、両目の間にしわが寄っていくのが分かった。
博貴の匂いがする・・・・・・。
でも、こんなことじゃ全然物足りない・・・・・・。
博貴・・・・・・。
どこにいるんだ・・・・・・。
どこに行ってしまったんだ・・・・・・。
わたしを置いてって、一人で行ってしまうなんて、ずるい・・・・・・。
もう二ヶ月もあってない・・・・・・。
寂しい・・・・・・。
また、一緒にテレビを見たり、出かけたりしてみたい。
せめて、話すことさえ出来れば・・・・・・。
いや・・・・・・もっと、もっとだ。
また撫でてもらったり、抱きしめたりしたい。
切ない・・・・・・。
気持ちだけじゃなくて、体まで・・・・・・。
触れたい・・・・・・博貴に・・・・・・ずっと・・・・・・。
早く・・・・・・早く・・・・・・。
会いたい・・・・・・会いたいよ・・・・・・。
「雑音。」
えっ・・・・・・!
後ろから突然呼ばれて、わたしはびっくりした。
振り向くと、そこにはネルが目の前に立って、わたしを見下ろしていた。
「何してんの。」
何だろう。ネルの目が座って、声も、なんか冷たい感じだ。
「あっ・・・・・・ぇえ。」
そんな、ネルに、何か言おうとしたけど、余りに突然のことで、驚いて、声がうまく出ない。
「何よ・・・・・・これ。」
ネルが、いきなり手を伸ばして、わたしから博貴のワイシャツを奪い取った。
「ッ・・・・・・!」
「これで何してたの?」
ネルが、何か怖いもののように見える。
すぐに取り返そうとしたけど、ネルはすぐにワイシャツを手から落とした。 そして、座り込んでいるわたしを、何も言わずにその場に押し倒した。
「ぅあぁ・・・・・・!」
「やっぱり、雑音はあたしより博貴さんのほうがいいの?」
「・・・・・・!」
そういわれて、初めてそのことを考えた。
ネルは好きだ。でも、博貴だって・・・・・・。
そんなこと、答えられない・・・・・・。
「答えてよ!!」
ネルがわたしの上に覆いかぶさって、叫ぶ。
どかそうと思えばどかせる。
でも、そんなこと言われると、胸が痛い・・・・・・。
「雑音・・・・・・あれの匂いを嗅いで、博貴さんのこと思い出したの?ねぇ、長い間あってないから、寂しくなってんの?あたしがいるのに!どうしてあたしじゃダメなの?!あたしのこと好きじゃないの?!あたしのこと好きって言ってくれたじゃない!!」 「そうだ・・・・・・ネルのことは大好きだ・・・・・・。」
「ウソ!!だったらそんなに寂しがること無いじゃない!!」
「うそじゃない・・・・・・!」
わたしは、目の奥が熱くなって、ますます胸が痛くなって・・・・・・。
どうしよう・・・・・・ネルになんていったら。
「じゃあ、証拠を見せて!!」
「え?」
「あたしのことが好きだって、証拠を・・・・・・。」
「キスじゃ、ダメなのか・・・・・・。」
「ダメ・・・・・・あんなの物足りない。もっと、もっと・・・・・・。」
そう言いながら、ネルが無理やりわたしの服の中に腕を入れた。
「ネル・・・・・・!」
「キスも・・・・・・その先も・・・・・・!!」
いつものネルじゃない・・・・・。
目が・・・・・・目がおかしい・・・・・・。
ネルは、わたしの胸をつかんで、乱暴に握り潰して、動かした。
その瞬間、体がしびれて、力が入らなくなる。
「ほら・・・・・・雑音。雑音ここ触られるのが好きなの?博貴さんに触られること想像してた?こうして乱暴にされるのを想像して・・・・・・。」
「ちッ、ちがぁ・・・・・・ぁ・・・・・・!」
「感じて・・・・・・感じてよ・・・・・・そうすればもっとあたしのこと好きになってくれるよね・・・・・・?そっか・・・・・・胸じゃ不満だよね・・・・・・。」
「う・・・・・うぁあッッッ!!!」
「きゃッ!!」
どうしたらいいか、全く分からなくなった。
そうしたらいつの間にか、ネルを突き飛ばしていた。
ネルの体は床を転がって、壁にたたきつけられた。
そんな・・・・・・。
そんな・・・・・・わたし・・・・・・。
ネルに・・・・・・こんな・・・・・・ひどいことを・・・・・・。
「ネル・・・・・・ネルぅ!!」
わたしはネルに駆け寄った。
「ごめん・・・・・・!ネル、怪我は無いか・・・・・・!?」
ネルは、ぼーっと天井を見上げたまま、動かなかった。
もしかしたら・・・・・・そんな・・・・・・!
「ネルぅ!!」
わたしは、ネルの体を抱いた。抱きしめた。
目から、涙があふれてきた。
こんなこと・・・・・・こんなことって・・・・・・。
わたしが悪いんだ・・・・・・もっと、ネルのことを・・・・・・好きだって・・・・・・言ってあげれば・・・・・・。
「雑音ぇ・・・・・・。」
「・・・・・・!」
小さく、ネルの言葉が聞こえた。
「ごめんね・・・・・・あたし、狂ってた・・・・・・どうかしてた。」
ネルの言葉は、静かで、弱々しくて、そして、涙で濡れていて・・・・・・。
「そんなことない・・・・・・。わたしが悪いんだ・・・・・・もっと、ネルの近くにいてあげれば・・・・・・。」
「雑音は悪くない・・・・・・それはあたしのほうだ・・・・・・もう我がままなこと言わないって、約束したのに。あたし、最低だ・・・・・・ごめんね・・・・・・ほんとにごめんね・・・・・・!!」
ネルの体が、震えてその顔がますます涙で濡れた。
「もういい・・・・・・もういいんだ・・・・・・ネル・・・・・・。」
その言葉を最後に、時間が止まったように思えた。
音もなくて、わたしも、ネルも、動かなくて。
ただ、ネルの暖かさを感じている。
そうだ、さっきネルが、キスの、その先、と言っていた。
その先って、何だろう・・・・・・。
「ねぇネル。」
「なーに?」
「さっき、キスのその先と言ってたけど・・・・・・それってなんだ?」
「やだ・・・・・・忘れてよ・・・・・・あんなこと。」
「でも、キスの先ってことは、もっと、ネルに好きだって伝えられるってことか?」
「ん・・・・・・そう・・・・・・かも。」
「じゃあネル。そのこと、教えてくれないか。」
「え・・・・・・ホントに?」
「もちろんだ。」
「・・・・・・いいの?」
「ああ。」
「いいんだね・・・・・・じゃあ・・・・・・立って。」
ネルはわたしの手をとった。
「でも・・・・・・あたしだってあんまり良く知らないんだから。」
「いいんだ。知ってること全部、教えてくれ。」
「・・・・・・部屋に行こう・・・・・・。」
「ああ・・・・・・。」
やっと分かった・・・・・・。
本当にあたしのこと好きじゃないの、なんて、そんなの大間違いだった。
あたしはどうかしてたんだ。
雑音が博貴さんのワイシャツの匂いを嗅いでるところを見てしまって、あたしは嫉妬したかもしれない。
それが間違いだった。
博貴さんは雑音の開発者、ううん。もっと深い関係なんだから、好きなのは当たり前。
あたしのことも好きなんだ。
博貴さんには長い間会えなかったから、寂しいのも当然。
ただ、そのことをあたしに相談できなかっただけなんだ。
あたしが馬鹿だった。
あたしは、雑音のことが大好きだし、雑音もあたしのことが大好きだって。 今日、それが一段と深まったんだ。
色々教えるとかいっても、余計なことは不要だった。
直に雑音の温もりが伝わっきて、暖かくて、それだけで、十分幸せ。
二人で、幸せだよ。
良かった・・・・・・雑音・・・・・・。
コメント2
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ご意見・ご感想
FOX2
コメントのお返し
申しわけありません。「様」が抜けておりました。
深くお詫び申し上げます。
2010/04/24 20:47:23
sukima_neru
ご意見・ご感想
突然の出来事に顔から火が出そうでした。
しかし、よくぞやってくれたって感じですね。
あー、私にも文才があれば・・・
2010/04/23 11:44:43
FOX2
ありがとうございます。
どうしてもやりたかったのです! この二人!!
雑音さんは男と女の意味が良くわからず同姓の方にも恋心を抱いてしまい、またネルさんは雑音さんに恩と友情があると同時に一目見た時から特別な感情を抱いていた節があり、お二人は不思議と惹かれていったのですね。百合は素晴らしいです。花と花が美しく咲き乱れます。
sukima_neruにも、きっと何かできることがあると、私は思いますよ。
2010/04/23 17:24:13