部屋を出た後、俺はマスターの部屋へ向かった。コンコン、とドアをノックすれば「入って」とマスターの声。中に入るとマスターは椅子に座って機械の前で色々と何か弄っていた。後ろ手で音を出さない様にドアを閉める。音がしなかったのに、マスターはこっちを見る。勘が良い。
「あぁ、来たね。ま、此処座ってよ」
そう言ってマスターが指したのは何時も俺が座る椅子。他にも椅子は五つあってそれぞれ個人のモノという固定がある。俺は椅子に座ってマスターと向かい合う。
「・・・で、何の用ですか?歌の事ですか?」
俺は思った事を聞いた。それ位しか呼ばれる理由が思い浮かばなかったから。するとマスターはフルフルと首を横に振った。おろしている黒髪がサラリと揺れる。
「・・・どう?此処の生活には慣れた?」
マスターの口から出た言葉が意外なモノだったので俺は内心驚きつつも、
「ハイ。まずまず・・・て所・・・ですかね」
応えるとマスターは「そう・・・」と言って、何処か懐かしい様な顔で俺を見た。
・・・何々だ一体。俺、何かやったっけ?
俺が心の内で迷っていると、マスターが
「ねぇ、レン。レンはいなくならないよね?」
と意味深発言をした。思わず俺は
「はあ?」
と言ってしまった。そして慌てて言葉を言い繕った。
「あ・・・いや、ごめんなさい」
「いやいや、別にそれは良いんだよ。私の方が年下だし。訳が分からないと思うけど、これだけは言わせて?
リンを悲しませないでね、絶対に。特に行き成りいなくなる様な事はしない、これだけは護って」
そう言ったマスターの顔は音合わせの時よりも、真剣なモノだった。水晶色の目に俺が写っている。少しだけ、ポカンとした顔をしている。
俺はマスターを見据え、出来る限りハッキリと、だけど力強く言った。
「分かってますよ。絶対リンは悲しませない。護ります」
最後の護ります、はマスターの言葉を護るのか、リンを護るなのか、どっちなのか自分でも分からない。
マスターは俺の言葉を聞いて、フ、と優しく笑うと
「なら良いの。あ、そだ。前に渡した楽譜、ある?」
言った。俺は手に持っていたそれをマスターに渡す。するとマスターは
「この歌、どんな歌だ?」
と聞いてきた。再びの想定外の質問に俺はまたポカンとしてしまった。
「え・・・・・・?恋の・・・歌じゃないんですか。結構淡めの」
「うん、そう。ちょっと待っててね・・・」
そう言うとマスターは楽譜のラストのページ・・・十一枚目の右端に何か書き始めた。
「あの・・・マスター?何書いてるんですか?」
「ちょっとねー」
書いている言葉を覗き込もうとすればマスターに足で蹴られた。忘れてたけど、マスターは大抵の楽器は直ぐに使いこなせる。なので無駄に握力やら脚力やら肺活量やらが多い。そして無駄に体力も多い。成人男性の数倍はあるだろうと思う。取り合えず、そんなマスターに蹴られたのだ、正直に言おう、かなり痛い。だがマスターはそ知らぬ顔。畜生。
「よし、と。ハイ」
書き終わったらしく、マスターは楽譜を裏返しにして渡してきた。それを元に戻そうとしたら「戻さないの」と言われた。さっきから本当 何々だ?
「これを鏡に見せてね。ただし、レンが一人の時。場所は何処でも良いよ。なるべく早めにね。それじゃ、これで用は終わり。お疲れ様」
ニッコリと笑ってマスターは言う。・・・何か訳が分からないけど・・・ つーか鏡?鏡にこれ見せろって・・・。しかも俺一人の時?・・・・・・まぁ、良いや。
「お疲れ様でした」
マスターに一礼して俺は部屋を出た。

「えー・・・と、鏡・・・鏡・・・」
俺はマスターの部屋を出ると、鏡を探し始めた。部屋にも一応、ある事にはあるが、リンがいるから。一人の時、て言われたから。
そもそも一般家庭がどの位鏡があるのか知らないが、取り合えずこの家には洗面所と風呂場、それ以外は持ちたい人が各自持つ、みたいな感じだ。
洗面所は行っても良いけど人に会うかも知れないし・・・だとしたら・・・他は・・・
「あった・・・」
思い出した。あそこしかない。人が殆ど来ない場所。それでいて、鏡がある所。
俺は足をその場所に向けた。

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真実を知った日 (レン消失話 その後) 2

2です。ちょっと此処からはレン視点です。
マスター、蒼がレンの楽譜に何を施したのか、それは見てのお楽しみ♪
・・・すいません、ツ○サ・ク○ニクル、モコ○パクリました。
・・・ま、まぁ、とにもかくにも、読んで下さり、有難う御座いました!

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投稿日:2010/05/21 17:47:27

文字数:1,723文字

カテゴリ:小説

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