「……あ、ルカ姉!こっちこっち!!」
ミクが扉の前で手を振っている。ちょっぴりうなだれたリンとレンを引き連れたルカがそこに駆け寄っていった。
「もうっ、リンもレンも無茶しちゃダメでしょー!?ルカ姉もんの凄い形相でぶっ飛んでいったんだからね!?」
(ミク姉が言うかミク姉が……)
心の中でぼやくレンだが、あえてそれを口には出さない。自分たちも無茶をやりかけたのは事実なのだから。
「はいはいそんぐらいにしてさ。……ここか」
「うん、そうみたい」
ミクの立っている前にある扉には、『Engineroom』と名が振ってあった。おそらくはここが、この空中戦艦の心臓部―――――
「もう量産型もほとんどを叩き落とした……あとはこの船を止めてしまえば私たちの勝ちよ」
「うん……!!」
ぐぐ、と拳を握りしめるミク。リンとレンも、もう我慢できない様だ。
「うっし、行くわよあんたら!!」
『『りょーうかいっ!!!』』
そう叫ぶや否や、リンとレンがダブルドロップキックを扉に決めた。ひしゃげて千切れ、ぶっ飛んでいく扉。
勢いよく駆け込んだ三人がそこで見たのは――――――――――
「……うわぁお」
「これは……」
『……何だこれ』
《ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン…………………》
――――――――――重低音を響かせ、蒼い光を放つ巨大な回転体だった。
左右に10本ずつのアーム。その先端から伸びる計20本のレーザーが、一つの焦点で交わって眩い光を放っていたのだ。
「……これが、動力炉……?」
「何のエネルギーだろう……電気や熱じゃあないことは確かだけど……」
想像以上に異様な物体を前にして、一同は思わず足も手も止めて考え込んでしまった。
――――――――――戦場では、一瞬のスキが命取りになりかねないという常識も忘れて。
《ガゴォン!!》
『なっ!!?』
轟音に思わず振り返ると―――――先程扉を破壊したはずの入り口が、分厚い金属板でふさがれていた。
衝撃の展開に思考停止―――――する暇もなく、次の『防衛設備』が起動する。
『侵入者発見、侵入者発見。迎撃ヲ開始スル』
「むっ!?」
動力室の2階部分―――――本来ならば人が通るべき通路なのだろう―――――そこから幾体ものロボット兵が出現。皆手には一様に銃を構えている。
『攻撃―――開始』
無機質な電子音と共に、ロボット兵の銃が火を噴いた。―――――エネルギー弾の弾幕だ!
『みんな下がって!!『Vivid・Shield』!!』
咄嗟に前に飛び出したミクが、紫色に輝く盾を展開する。弾かれたエネルギー弾は真っ直ぐに跳ね返され、弾を放ったロボット兵を確実に撃ち抜いた。
『やった!!これで邪魔者は―――――』
『いえ、まだよ!!』
喜びかけたレンをルカが手で制した。―――――視線は壊されたロボット兵に向けられている。
『侵入者発見、侵入者発見』
無機質な音声が響いてロボット兵の残骸が撥ね飛ばされ、下から新たなロボット兵が現れる。次々と新たなロボット兵が現れ、再び同じように銃撃を始めた。
バチバチと音を立てながら『Shield』に弾き返され、同じようにロボット兵が壊され、そしてその残骸の下から新たなロボット兵が補充される。
『……読めた。ありゃあ、リュウトの体と同じ……『超再生バイオメタル』が使われているわね』
メイコの拳の直撃を喰らっても瞬く間に再生したバイオメタル。それと同じものが、恐らくはロボットの設計図か何かのプログラムを組み込まれ、無限再生を行っているのだ。
『これじゃあいつまでたっても動力炉を壊せない!』
『なら直接狙っちゃうか!!そおれ、『Power』っ!!!』
リンの手から放たれた大質量の音波が、動力炉へと叩き込まれた。
―――――が。叩き込まれた音波弾は淡く輝き、一条のレーザーとなって弾き返された。
レーザーはミクの『Shield』に直撃。許容量を超えたのか、バチンと音を立てて弾けて消える。
『きゃああああ!?』
『『adagissimo』!!』
咄嗟にルカの『サイコ・サウンド』が発動。寸前まで迫ったエネルギー弾がその動きを止める。
腕を振り抜くと、エネルギー弾はそのベクトルを反転してロボット兵を吹き飛ばした。勿論すぐに再生するが、ミクが再び『Shield』を展開する。
『はーっ、はーっ……ドアホー!!リンの馬鹿―!!死ぬかと思ったわ!!』
『だ、だって跳ね返してくるなんて想像できないでしょー!?』
汗だくのミクとリンが言い合う中、ルカとレンはその動力炉の特性を考えていた。
『……エネルギーを持った攻撃を動力炉のエネルギーに転換して撃ち返す、と見たが、どうだろう?』
「多分大正解ね。恐らく殆どの音波が通用しないでしょう……周りも厄介だし、あれの対処は後回しかしら」
『となるとこのロボット群をどうするかだが……参ったな……』
レンが腕組みをして唸り始める。
と―――――ルカの眼が、一つのロボット兵に止まった。
「……ん?アレ……なんで再生してないんだ?」
そのロボット兵―――――頭部が破壊され、すでに動きは沈黙していたが、他の兵の様に再生することはなかった。
一体何故?そう思って他の破壊されたロボット兵と見比べるルカ。
『……まさか!』
一つの『仮説』に辿り着くと同時に、その手から音波弾を打ち出し、胴体だけが残ったロボット兵の残骸を吹き飛ばした。
すると――――――――――
『侵入者発見。侵入者発見』
砕かれた残骸の下から―――――新たなロボット兵が現れた。
自らの考えに確信を得たルカ―――――このロボット兵は、胴体に『ロボットが健在かどうか』を判断する装置か、またはプログラムが組み込まれている。
胴体ごと砕かれてしまえば、当然ロボットは再生してくる。だが、頭部だけが砕かれ、胴体に損傷がなかったならば―――――ロボットは『健在』と判断され、再生機能も働かない。
(迂闊なものね……そんなところに仕込んだらこういった誤作動が起きることも予測できるでしょうに。やはりあいつら、マスター達と違って考えが甘いわね)
だがしかし―――――それで問題が解決したかといえば話は別だ。
何せ求められる技の操作とは、『敵の弾幕の中動力炉に攻撃を当てないよう全ての敵の頭部だけを破壊せよ』―――――という結構な超難度の物なのだから。
「……ミク、リン、レン」
『『『うん?』』』
ルカは3人に、手短に自分の考えを伝えた。
つい数時間前に潜在音波を手に入れたリンとレン。つい数時間前にエラーを修正したミク。
この3人ならば、もしかすると自分の考えの及ばぬ方法を編み出してくれるかもしれない。
果たして――――――――――その考えは的中する。
『ふーん……つまり、胴体さえ残せればいいんだな?』
「レン、出来る?」
『確証はないけどな、多分『あの音波』なら……行けるかも!なぁ、リン?』
『うんっ!』
元気良く答えたリンの全身の波形モニターが、ほんのりとピンク色の輝きを放った。
同時に、レンの波形モニターも、青紫の輝きを放つ。
ピンク色の空気を纏わせたリンの左手と、青紫の空気を絡ませたレンの右手がパン、と合わさって―――――――――――――――
『『耳塞いでないと危ないよっ!!『Sweet&Serious サウンドオブアンインストール』!!』
《フォゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ンンン………》
甘さや優しさと、切なさや憂いを十重二十重に絡ませたような、重厚かつ甘美で、包容力に満ち溢れた音色が響き渡る。
だがそんな優しげな音に似つかない、吐きそうなほどの虚脱感がミクとルカを襲った。耳を塞ぎ切れていなかったのだ。
(うっぐ……何っ、これ!?)
(戦闘本能……いや、『行動』を司る『機能』をダウンさせる音か!)
ただ戦闘意欲を無くさせるだけではない。ただ働きたいという意欲を無くさせるわけでもない。
問答無用で生物の脳や機械のAIの『活動』を司る部分に作用し破壊する、いわば『強制植物化音波』―――――――――――――――!!
『……緊急事態発生。全機能停止シマス』
中央のロボット兵がそう言葉を放って沈黙したのを皮切りに、次々とロボット兵が緊急停止し銃を下ろして俯いていく。
わずか数秒の間に、全てのロボット兵がその活動を停止し、静寂が空間を支配した。
しばらくして、にんまりとした笑顔を張り付けたリンとレンが振り向いて―――――
『だい!』
『せい!』
『『こうっ!!』』
元気良くハイタッチ。パーン!と小気味いい音を響かせた。
『……っすっご―――――――――――――――い!!!ねぇリン!!レン!!!さっきのなに!?なによさっきの!?すごいすごいスゴ―――――――――――い!!』
『えへへー、私たちもよくわかんない!』
『わかんないのかよリン』
『レンはわかってるの?』
『……………わかんねぇけど』
『『ダメじゃん!!!!!!』』
喜びを全身で表現するリンとレン、そしてミク。どんな効果の音波かなどは二の次だ。今はただこの苦境を乗り越えたことを喜びたいとばかりにはしゃいでいる。
やれやれと苦笑いしつつ、ルカは残った問題児―――――轟々と唸り声を上げる動力炉に振り返った。
「さて、あとはこいつをどうするかだけど……」
『おおっとそうだった……つっても本当にどうしようか』
大質量のエネルギーを纏い、恐らくは何かしらのエネルギーを含有した攻撃であればあらゆるものを弾き返す特性を持った、とてつもない厄介な代物。
とてもではないが、簡単には破壊できなさそうな機械を前に、ミクら3人が作戦会議を始めようとするが―――――
『……ルカ姉?』
「あんたたち、下がってて」
その喧騒を片手で制したルカが一歩前に出る。
そして静かに瞑目して―――――全身の発音装置を起動した――――――――――
『……………試したいことがあるの』
ルカの潜在音波―――――『サイコ・サウンド』とは、音波を自らの脳波とシンクロさせることで、意思を乗せた念波へと変え、対象に手を触れることなく干渉するという能力である。
しかしこの力―――――実は、ルカは常に『サイコ・サウンド』のシンクロ率を100%まで合わせているわけではないのだ。
ひとえにそれは、この音波が脳―――即ち人工知能にかける負担の大きさに原因がある。
音波と脳波のシンクロ率を100%に引き上げてしまった場合、それは『念波』などというレベルではない―――――情報処理が凄まじいスピードで行われ、増幅された思念が音波の媒介無しに直接放出されるのだ。
それにより人工知能にかかる負担は計り知れない。少なくとも潜在音波覚醒直後のルカの脳であれば、余りの負担に0.1秒すらも持たずに人工知能の回路が焼き切れてしまっていただろう。
それ故、普段ルカは無意識の内に『サイコ・サウンド』のシンクロにリミットをかけている。大体6~7割のシンクロ率と言ったところだ。
これにより『サイコ・サウンド』は僅かながら性能が下げられている。音波が完全なる念波と成り切ることができないので、発音から効果発動までに若干のズレ―――即ち意志を持って発せられた音波、空気の波が対象に届くまでのタイムラグが生じるのだ。
それだけでも十分強力な音波であることは間違いないが、空気の運動エネルギーを含有する『音波』としての特性を持ったそれは、打ち消されることもあれば阻害されることもある―――とにかく様々な制約を受ける。
……………だが、もしも。
ルカが『意図的に』音波と脳波のシンクロ率を100%にしてしまったとしたら―――――どんな能力になるのか?
キン、と空気が震え、何かがかちりと嵌った様な雰囲気がルカを包む。
すっと開けられたルカの眼は―――――世界中のどんな色を比べても敵うことのなさそうな、澄み切った桃色だった。
そしてルカの口が開き、『サイコ・サウンド』が発動する――――――――――
≪――――――――――爆ぜろ≫
《ドッッ!!!!》
直後――――――――――動力炉が爆散した。あらゆるエネルギーを弾き返す特性を持った動力炉が、何の抵抗もできずに、何の予兆も見せずに砕け散り、瞬く間に燃え上がった。
『シンクロ率100%』――――――――――それはまさしく『思念こそ音』であり『音こそ力』であり、故に『思念こそ力』である世界。
音波を対象にぶつける必要などない。それどころか空気を揺らす必要すらない。
シンクロが完了した時点で、『音こそ力』の世界に『思念こそ音』の概念が入り混じり、そこに『思念を向けた瞬間対象への干渉が始まる』世界が誕生する。
もはや物理法則に囚われるエネルギーは何一つ必要ない。この常識を飛び越えたような能力に必要なのは、対象に干渉出来るほどの強靭な意思と、その強靭な意思から生み出される莫大な情報を処理できる人工知能のスペックだけ。
音波の概念を飛び越え、完全なる『サイコキネシス(念動力)』として機能する―――――それこそがルカの潜在音波『サイコ・サウンド』の真の姿なのだ―――――
『……すっげぇ……』
ぽつりとレンが言葉をこぼす。興奮を隠しきれない笑みを浮かべ、しかしその後に、歓喜の叫びは続かない。
ルカの並外れた能力にただただ圧倒され、皆言葉を失っていたのだ。
その興奮が収まらぬうちに、能力を解いたルカが怒号の如き警告を発する。
「ボッとしてんじゃあないわ!!すぐに衝撃が来るわよ!!備えなさい!!」
『『『うひゃ!?ひゃい!!』』』
一喝された3人が飛び上がりながらもすぐに体勢を整え、衝撃に備える。
ルカもまた体を『サイコ・サウンド』で固定する。
直後、推進力と浮力を失った空中戦艦が、重力に引かれて急激なGによる衝撃と共に落下を――――――――――
―――――――――――――――始めなかった。
SOUND WARS!! Ⅷ~動力炉爆破作戦~
キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアルカサンカッコイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!
・・・・・・ハッ
こんにちはTurndogです。(しらっ
ルカさんの『サイコ・サウンドシンクロ100%』のくだりは、構想を練り上げていたころから一番書きたかったシーンです。
何せ機能の説明とかそういうのすっごい好きなんでね。
もうここに入ってから筆が進む進むw
さぁいよいよ戦艦攻略も佳境に入っていくぞ!
次回は動力炉を破壊してもなお動き続ける戦艦の仕掛けに迫る!
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