ある5月5日、ある商店街のスーパーのお菓子売り場で、1パックの柏餅を凝視するボーカロイドがいた。
餡を包む白くのっぺりとした餅に、更に普段ではあまり見る事の出来ない緑の葉っぱで包まれた和菓子(2個1パック)に興味を示したのか、キラキラと輝く純粋な瞳で穴が開くほど見つめていた。
そこにその子のマスターなのか、まだあどけなさが残る顔の少女が話しかけてきた。
ボーカロイドの子は自分がいかに柏餅に魅了されたのかを語り、まだ起動されて間もないせいの幼い感情を成長させるため様々な経験をするべきだと主張し、さらにただ純粋に食べたいのだと力押しをして説得した。
マスターの少女は全ての話を聞き終え、神妙に頷きこう言った。
「お前女やん。無理」
ボーカロイドの子、―――世間で『キャラクター・ボーカル・シリーズ01初音ミク』と呼ばれる電子の歌姫はとても世間には見せられない顔で絶句した。
「そ、そんな・・・・どうしてですか!?この世に神はいないのですか!!」
「ウチ神とか信じてないし。ちょっと大げさちゃうん?」
「こんな事があっていいのですか!柏餅はどうなるのですか!?」
「とりあえず落ち着き。ほらネギあげるから」
少女はスーパーの籠に入っていた袋入りのネギをミクに手渡す。ミクは両手でネギを掴み、袋の端からネギの香りをくんかくんかと嗅ぎ始めた。ミクが落ち着いたのを確認し、少女は続きを語る。
「あんなぁ、ミク。5月5日の端午の節句の日はな、男の子供を祝うお祭りやねん。ウチの家おとん以外男おらんやろ?せやからウチでは祝えへんねんで」
「で、では柏餅は・・・・・」
「うん。食べたらあかん」
ミクは「みくみくみくみく・・・」と泣きこの世の終わりのような表情でプルプルと震えた。その様子を見て、少女は後ろを向き、心の底から楽しそうに笑む。その笑顔はまさに悪魔である。
「あーあ、残念やなぁ。ミクが女じゃなくて男やったら良かったのになぁ。もったいないなぁ~」
少女が笑い声を漏らさないように口元を手で押さえながら残念そうにそう言うと、更にミクは「みゅぅうぅ~・・・」と蚊が鳴いていそうな声で泣くものだから、少女は肩を揺らしつつ笑顔を噛み殺すので必死になった。
「ううう・・・そんなの男女差別です!ミクは今、この世の差別を撲殺する為に立ち上がるのです!」
「いやその前に、自分人権持ってないやん」
長い浅黄色の髪を振り乱して「今はその話ではないのです!男と女の争奪戦なのです!」と真面目な形相で叫ぶミク。ただちょっと言葉の意味に齟齬が生まれている。
「でも3月に桃の節句あったで?それどうなん?」
またしても押し黙ってしまうミクであった。
「兜とか布の鯉より雛壇の方が豪華っぽいし、桃の節句やったらあられ食べれるやん。てか食べたやん自分」
「はっ・・・!そうでした、ミクは見落としていたようです・・・」
「うん、知ってる」
ミクが落ちこんで膝をつく様子を楽しそうに見下ろす少女。傍から見たら避けて通りたくなる図だ。
「うぅ・・・ミクに柏餅を食べる資格は無かったようなのです・・・。こんなにぷにぷにして美味しそうなのに・・・。でもミクには永遠に食べられないのです・・・・・」
「いやー、ほんまミクって面白いなぁ」
「褒めても何も出ないですよ・・・」それは褒められていないぞ、ミク。
ついに「みきゅぅぅううぅ・・・」と奇怪な鳴き声を発し始めたミクに「ぷっ!」と噴いて睨まれた少女はつったように直らないにやけた笑顔のまま、
「しゃあないなぁ、今日だけやで?」
そう言って柏餅1パックを腕に下げた籠に入れた。
「え・・・・大丈夫なのですかマスター!?天罰は下りますか?!」
「ウチ神とか信じてないし。その代わり1個頂戴」
「もとよりその心意気です!ありがとうございますマスター!!」
その5分後、近くの公園で、仲良く柏餅をほおばる少女2人が目撃された。
花より何とやら。な話
こんばんは、初めての方は初めまして。この度は読んでいただきありがとうございます!!
今日の夜急に、「そういえばGWネタ書いてねぇ」と思い立ち書いた作品です。こんなにやっつけで短時間な作品は今後出ないでしょうって位自己ベスト。楽しんでもらえたら何よりです。
食い意地が張った熱いミクに、作品初訛ったちょっとSなマスターのお話。一応大坂弁・・のはずです。もし間違ってたらどうしようかと悩みながら書いた生まれも育ちも大坂人な作者。間違ってたら教えてください!(他力本願!? その他アドバイスも書いてくださると嬉しいです。
このたびはよんでくださりありがとうございました!よいGWをお過ごしください!
コメント7
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6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)
時給310円
If I realize this one secret feeling for you
I dont think i would be able to hide anymore
Falling in love with, just you
Tripping all around and not ...今好きになる。英語
木のひこ
「私には悲しむ資格が無い」
そう言えるのもこの声のおかげ
「幸せになる権利が無い」
そう言えるのもこの声のせい
代わりに語れば何になる?
この現実から逃げてるだけ
当たりのハンデ背負ってるくせ
当たり判定適当なんだ
才能あっても仕方がない
どうせ消えるなら仕方がない...才能の殺し方 歌詞
MidLuster
ミ「ふわぁぁ(あくび)。グミちゃ〜ん、おはよぉ……。あれ?グミちゃん?おーいグミちゃん?どこ行ったん……ん?置き手紙?と家の鍵?」
ミクちゃんへ
用事があるから先にミクちゃんの家に行ってます。朝ごはんもこっちで用意してるから、起きたらこっちにきてね。
GUMIより
ミ「用事?ってなんだろ。起こしてく...記憶の歌姫のページ(16歳×16th当日)
漆黒の王子
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
命に嫌われている
「死にたいなんて言うなよ。
諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
実際自分は死んでもよくて周りが死んだら悲しくて
「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
誰かを嫌うこともファッションで
それでも「平和に生きよう」
なんて素敵...命に嫌われている。
kurogaki
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ご意見・ご感想
秋徒
その他
Oh!磯さんへ
早速来ていただきありがとうございます!
私は大坂人ですが・・・よくアニメとかに影響されて訛りが変化します。最近は名古屋弁がマイブームきてます(え
ミクは何となく片言・・・。もっと可愛い口調にしたかったです。僕っ娘とか。
コメントまで頂きありがとうございました!
2009/05/18 22:12:18
Oh!磯
ご意見・ご感想
セリフの言い回しが瑞々しくてよいですね。^^
私は神戸人なのでイントネーションもバッチリです。(ぇ
言葉って生き物だと実感させていただきました。
2009/05/18 19:16:26
秋徒
ご意見・ご感想
きゃらめる☆アイスさんへ
ちょ、授業中に何やっちまってるんですかww!連行されてお菓子もらうとかwww
ルカ様ですかー。そういや私も、祝発売の一作以来全然出てきませんねf^_^; なんと言うべきでしょうか、書こう書こうと思っても展開的に出しづらいと言うか、ぶっちゃけ女王様は書きづらi…おや、誰か来たようd(ry
それでは今日はこの辺で。誰かが呼んでいるみたいですからねw次回はきっと本編書きますm(_ _)m
2009/05/17 20:32:14
秋徒
その他
アリス・ブラウさんへ
ようこそお越しくださいました!読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
ミク単品(+マスター)を出すのは初めてだったので、兎に角可愛くしたかった。そしたら天然になりましたw
柏餅は、久しく食べていません…。兄が早くに成人してしまったせいです;;
よろしかったら、また書いて下さると嬉しいです。ありがとうございました!
2009/05/11 07:47:19