「リン、ご飯は?」
「……」
「オレ、もう学校行くからな」
「……」
レンは、ベッドにもぐりこんでいるリンに二つ三つ声を掛けて出ていった。
ショックだった。
今まで、レンと自分はいつも同じ気持ちでいると思っていた。楽しい時は一緒に笑ったし、悲しい時は一緒に泣いた。だから、自分が離れたくないと思っているように、レンもそう思ってくれていると信じて疑っていなかった。
――いつから一人になりたいって思ってたの?
レンにそう聞きたい。けれど、聞いたところでどうしようもならない。レンが一人になりたがっているのは、まぎれもない事実なのだ。
いつから、レンの気持ちが離れていってしまったのだろう。
少し落ち着いてから、リビングに出てみると誰も居なかった。母も出かけたらしい。
キッチンには、レンが用意してくれたお弁当と朝食が置いてある。
そっとお弁当を抱えて、鞄に詰め込んだ。
目は泣き腫らしていたし、まだ少し腰が重い。けれど、ずっとあの部屋にいるのもつらい。目を冷やして、今日は少し遅刻していくことにした。
「大丈夫?具合悪いってレン君がいってたよ」
登校すると、友人のミクが気にかけてくれた。レンは、リンが体調不良で休むといってくれていたらしい。
「大丈夫。すっかりよくなっちゃった。」
カラ元気で返してみるものの、ミクは心配なようだ。
「そういえば、来週に舞踏会があるよね?ミクも行くの?」
話題を変えようと、来週に街で行われる舞踏会の話を持ち出した。
この街では、なにか街でお祝い事があると舞踏会が開かれる。
「うん。彼が遊びにくるから……リンは?」
「私は行くよ。いつも家族みんなで行くもん。」
ミクの恋人は、リンも写真を見せてもらったことがあった。青い髪と瞳がとてもきれいな人だ。
恋人がいるのかと思うと羨ましい。今までは、リンにはレンがいたから、そう思ったこともなかったのだけれど。
今まで、リンはレンと踊ってきた。一度目は、6歳のとき。二度目は10歳のときだ。今回の舞踏会が3回目になる。
……けれど、今回は一緒に踊ってくれないかもしれない。
「じゃあ、レン君も行くんだ。レン君ってかっこいいから踊ってほしい女の子多そうだよね。」
「レンがかっこいい?全然かっこよくなんてないよ。ちっちゃい頃なんてしょっちゅう泣いてて、私がいないとだめだったんだから……」
――そう。レンには私がいないと、ダメだった。
「ちょっと。いつの話よ。」
ミクのツッコミを聞きながら、自分の語尾が過去形になってしまっていることに、少なからず寂しさを感じた。
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