「まあ普通に気付いてただろうけど、俺も当然彼女のことが好きだった」
卒業式の後のパーティーの二次会で、二人でゆっくり話せそうなタイミングになった瞬間、オカは切り出してきた。
「だから、まあ結構彼女のことを見てたわけだ。すると、何故か目が合う回数は意外と多かった」
オカはジュースーー…に偽装した酒を呑みながら、独白するように言う。
「俺は最初、もしかしたら彼女は俺に気があるのかもしれないと思った。彼女の目は、どう見ても恋をしている女の子のそれだったからだ」
そこで、オカは少し離れたところで友達と喋っているリンに視線をやり、苦い顔をした後、また口を開いた。
「でも、良く見ているうちに分かった。彼女が見ていたのは、お前だった。ただ、俺はお前の近くにいることがこの三年間多かったから、お前に恋してる彼女と、彼女に恋してる俺の、目が合う回数が多かっただけ」
まあでも、とオカは区切った。
「そのおかげで一時とはいえ彼女と両思いかもしれないなんて夢を抱けたから、良かった………のかも、しれないな」
「………」
「そんな顔すんなよ。悪かったな、最後あんな見せ物みたいな告白にしちまって。俺の恋が破れることへの、八つ当たりがしたかったんだ。それに、ああでもしないと、お前らお互いに黙ったまま卒業しそうだったし。でも、本当に悪かった」
悪かったーー…と、オカは言った。
「頼むから、それ以上謝らないでくれ。本当に、立つ瀬がなくなる」
謝らなくちゃいけないのは、絶対に、俺の方なのに。
殴ってごめん。気が付かなくてごめん。辛いことをさせてごめん。リンと付き合うことになって、ごめん。
でも、そんなことを俺が言うのは、余りにも傲慢だから。
ただ、礼を重ねるしかない。
「俺とリンを繋げてくれてありがとう。俺とずっと友達でいてくれて、本当に、ありがとう」
感謝してもしきれない。こんな残酷で、自分勝手で、鈍感で、お前をずっと傷つけてきた俺とーー…ずっと親友でいてくれて、本当に、本当に、ありがとう。
「お前が友達になってくれた時、俺、本当に嬉しかった」
俺は小学校卒業と同時にこの中学校の辺りに引っ越してきて、勿論、クラスに知ってるやつなど誰もいなかった。
総合の授業中にグループを組めと先生に言われた時、周りがガヤガヤと組んでいく中、一人ポツンと突っ立っていた俺に、お前が笑顔で声を掛けてくれて、どこまでホッとしたか。
どれほど、嬉しかったか。
体育の時間で二人組を組めと言われて誰にも声を掛けることが出来ないでいた俺に、「一緒にやろう」と言ってくれて、どれほど安心したか。
お前はその時、沢山男友達から声を掛けられていたし、当てに困ることなど無かったのに。それに、今度は、好きな人まで。
「なのに、俺は、お前に何も返せていない。ただ貰っただけで、何も報いていない」
オカは、酒をテーブルに戻し、言った。
「お前、やっぱり良い奴だなあ。うん」
神妙に、頷きながら。
「あんな告白の仕方をさせて、まさか感謝されるとは思わなかったぜ」
苦笑いしながら。
「何も俺に返せてないなんて絶対にないよ、レン。それにさ、俺たちの合言葉だろ?友情はーー…」
「…ーー見返りを、求めない」
「そゆこと」
オカは、にっこりと笑った。
そして、もうそこまでが限界だった。
「オカっ、オカぁぁっ………」
俺は親友の肩に顔を埋め、声を押し殺すこともせずに激しく泣きじゃくった。
オカは俺の背中にポンポンと手を置いて、声を押し殺しながら涙を流した。
卒業式後の二次会ということもあってか、何人かは俺達に貰い泣きをしているやつもいた。
そして、俺は心の中で思った。
こいつに会えたのは、間違いなく、俺の人生の中で一番の奇跡だ。
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