学校の先生などは、よく考えることはいいことだ、などと言うが、よく考えすぎるのも問題と言うものである。
「この問題の答えを、鏡音君、答えて」
黒板にチョークをつきたてながら、先生がレンのほうに声をかける。
しかし、答えが聞こえないので、先生は振り向き、レンにもう一度声をかけた。
「鏡音君。答えて」
しばらく待つが、やはり答えない。
「鏡音君!」
教科書を立てて顔を隠す格好になっているので、レンが聞こえていて無視しているのか、すっかり眠ってしまっているのか、先生の位置からでは確認できない。
「寝てるの? 仕方ないわね」
「寝てません!」
レンの代わりにリンが答えた。
「ただ…。心ここにあらずって感じです」
すると、ミクがリンの言葉に付け足す。
「なんだか違う次元を見てる目だよね」
こくこくとリンが何度もうなずいた。
「えー。じゃあさ、俺が何しても大丈夫?」
ふと思いついたようにレオンが言った。その言葉を聞いて、プリマがペンケースからはさみと、かばんから彫刻刀を取り出した。その日は、美術があったのだった。
しかしそれに気がつかないレオンは、そっとレンに近づく。これも日常茶飯事なので、クラスメイトたちも悪乗りしてはやしたて、誰一人とめようとはしない。先生からしてみたって、止めたってやめるような相手じゃなし、レンをどうにかしなければいけないしで、とめる気も失せているようだった。ただし、リンだけは別で、
「あ、レオン君、やめたほうがいいと思うよ」
と、少しだけとめた。
そっと近づいていき、思い切って飛び掛ろうと思い切り踏み切ったとき、レンがむくっと体を起こし、レオンが目の前を通過していくのを見て、自分の前を通り過ぎると、思い切りその背中にけりを入れた。そして、かわいそうなことに、レンの隣はプリマであった。
彫刻刀をレオンのほうに向け、プリマはいやな笑みを浮かべた。
「プリマ、彫刻刀が汚れるわよ」
まさに鶴の一声と言うやつで、すばやくプリマは彫刻刀を置き、代わりに飛んできたレオンに肘鉄を食らわした。
「ごふっ」
後ろのほうに転がって言ったレオンを、レンが蹴り飛ばして教室の外に追い出した。
「レン、生きてたんだ」
「何だよ、失礼だな」
「さっさと黒板の問題に答えられては?」
しばらくきょとんとして、黒板に目をやり、すぐに答えを導き出す。
「y=5xの二乗です!」
「はい、正解。授業に集中していてくれれば、満点だったわ」
どっと笑いが起こった。
ついでに、レンを恨めしそうににらんだレオンが教室に戻ってくると、さらに笑いが起こった。
「――大丈夫、ルカ?」
テーブルに突っ伏したルカに、メイコが声をかけた。
「具合が悪いなら、部屋で休んでていいのよ」
「いえ…。大丈夫です、少し貧血気味なんですわ。きっと」
頭を手で押さえ、ルカは顔を上げて笑顔を作り、答えた。
「今日はレバーとほうれん草のフルコースね」
「本当に大丈夫ですから、気にしないでください」
とは言うものの、どうも顔色が優れないし、明らかに無理をしているのが見える。
「でも…。少しだけ、ベッドで横になってきても良いでしょうか?」
「ええ。少し寝ると良いわ。夕飯まで起きてこなかったら、部屋まで運んであげる」
「それまでにはおきてきますわ」
にこっと微笑み、ルカはふらふらと自室へ戻っていった。
それを不安そうに見送りながら、メイコはルカが買ってきた夕飯の材料に目をやった。
この間のカイトの様に夕食を作るのに、何かが足りないということになりかねないのでは、と思ったのである。いつものルカならそんなことはないが、どうも具合が悪いようだし、もしかしたら、と思ったのだ。
しかし、そんな心配は無用だったらしい。
しっかりと何一つ抜けることなく、頼まれた品物がそろっていた。ついでに、前日の酒盛りでなくなってしまったメイコの焼酎も、頼まれもせずに買ってきてあったのだった。
「本当に頼りになる使い魔ね、本当に!」
と、メイコは苦笑したのだった…。
鏡の悪魔Ⅴ 16
こんばんは、リオンです。
日付が変わってしまった…!
関係ないですけどね、あの、ね(何
方言ってやっぱり無意識に使うもんなんですかね。
社会科で方言についてやったんで、それで思わぬものが出てきたり。
え、何、本州で「ぼっこ」って通じない?
「こわい」とか(恐怖じゃないです)「めんこい」とか?
方言ってすごいってのを実感しました。
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