-転校生-
今日も退屈な毎日が始まる。
今日からまた五日間、金曜の夕方ほどまで毎日毎日、学校での退屈で面倒な授業を繰り返さなければならないのかと思うと、“反吐”が出そうだ。
「――リン?どうした、学校行かないのか?」
そんなことを考えていたリンの妄想を断ち切ったのは、金髪青目の整った顔の少年だった。
「人が物思いに浸っているのに、いきなり現実に戻さないでくれる?」
不機嫌そうに言ったリンは自分の使い魔であるレンをにらみつけた。
「はいはい。申し訳ございません、ご主人様?――学校、行くぞ」
「…うん。母さん、行ってきます!」
しぶしぶ頷くとリンは玄関で見送るメイコとルカに手を振って、レンの手をつかんでいつもの通学路へと飛び出した。それを追いかけるようにレンが扉を閉めて歩道へと出てきた。
学校に着くなりクラスメイトから面白そうな目で見られ、リンとレンは後ずさりをした。
「今日もラブラブだね、リン。いいなぁ」
「やっぱり似たもの同士、気が合うんじゃない?邪魔しちゃ悪いわね」
「そうね。行きましょ。リン、彼氏を大事にするように!」
この二人はクラスで公認のカップルのように見られているらしく、こういわれるのが日常茶飯事なわけだが、二人はそれをみとめようとはしない。
「違う!!」
同時に言うと自分と同じことを言ったもう一人を思い切りにらみつけた。しかしそれすらも年頃の女子達には“ラブラブカップル”に見えるらしく、二人は先生がはいってくるまで女子の相手をしなければいけないことになった。
めがねの先生が入ってきて、日直が
「起立、礼、着席!」
と号令をかけてクラスをまとめた。
すると先生が満足げに頷いて、話を始めた。
「転入生を紹介します。――入ってきなさい」
それを合図に入って来たのは、少し色黒で短い金髪の少年だった。少年は余裕とも取れる不敵な笑みを浮かべて、瞳には怪しげな光をたたえ、身長は同年齢の男子よりもずば抜けて高い。
「レオンです。外国からやってきましたが、幼いころにこの国にいたので、言葉に不自由はしないと思います。どうぞ、よろしく」
「皆、仲良くするように!レオン君は、あの後ろの…」
「金髪の男の子のとなりですか」
そういうとレオンはレンのほうを指差して先生に確認を取った。確かにレンの隣には今までなかった誰も座っていない席が一つおいてあった。
「そうそう。隣なんだからいろいろ教えてあげなさいね。――それからクラス対抗仮称コンクールについて…」
「はい。―――よろしく」
「…よろしくな。レン」
「え…」
何故、自分の名を知っているのか。
それを考える余裕もなく、朝のホームルームを終えるチャイムがスピーカーを通して大きく教室に響いた。
すぐに女子達がレオンの周りに集まってレオンを質問攻めにした。
「ねえ、外国ってどこの国?」
「スポーツとか、得意?」
「好きな食べ物とかはある?」
まるで拷問のようでもある女子達の力の入れように呆れたレンは、スールバックから本を取り出し、しおりを挟んでいたページから黙読し始めた。
「終わった!!」
学校が終わり、嬉しそうに伸びをしたリンは清々しいほどの笑顔でノートや教科書、参考書をスクールバックに押し込んでレンの服の袖を引っ張ると教室を出た。
「リン、俺、用事があるから先に帰っていてくれないか?できるだけ早く帰るから」
「うん。わかった。じゃ、早くね!」
「わかってる。リンも気をつけて帰れよ。また変なことに巻き込まれたりしたら、困る」
その言葉にリンは微笑んで応えると、レンに手を振ってあと一階分もある階段を元気よく駆け下りて行った。
それを見届けてレンは図書室へと急いだ。
図書室で本を返すだけのはずが、途中で先生に捕まって本の整理を手伝わされてしまい、思いのほか時間がかかってしまった。
館への道を急いでいたとき、視界の端にうっすらと見覚えのある何かが見えた。それに顔を向けるとそちら側は小さな公園で、そこに立っていたのは今日転入してきたばかりのはずのレオンだった。
相手もレンに気がついたらしく、優しく微笑んでレンに手招きをした。それに応じてレンが公園の中へ入っていくとレオンはさも可笑しそうに腹を抱えて笑い、レンに一度背中を向けた。
「…なんだよ。用がないなら、帰るけど」
「いや、悪い。…そう急ぐなよ。時間はたっぷりある」
「お前にあっても俺にはない。今日は家で兄弟が待ってるはずだから」
相手の言葉を玉砕してレンは公園ベンチに腰を下ろした。
「…お前、何者?こっちの世界に住んでいたやつじゃないだろう。どっちかって言ったら裏の世界――人間界にすんでいたような」
「鋭いな。流石は神威を倒しただけはある。それに怖気づくそぶりすら見せない」
「意味がわからない。さっさと用件を済ませてくれ」
意味ありげな言葉を発したレオンをもう一度玉砕すると、レンはスクールバックの中から携帯電話を取り出し、リンに遅くなるとメールを入れようとした。
「そんな必要はない。いや、別に用といった用はないんだけどね」
そういってからレオンはわざとらしく手をぽんと叩いて微笑むと、
「さっき君のお姉さんに会ったよ。家を探しているようだったから教えておいた」
「そうか。じゃ、かえっていいか」
「…じゃあ、明日、学校で会おうね」
気になる点はいくらかあった。
一つはあの意味ありげな言葉。二つ目はあのわざとらしい素振、三つ目は人違いでもなければ何故アイツはランが姉であることに気がついたのだろうか。確かに似てはいるが、だからといって姉だと限定することはあるまい。四つ目は何故家を知っていたのか。アイツはストーカーまがいのことでも趣味にしているのだろうか。あるいは、ホモ――やめておこう。とレンはそう思って頭の中に浮かんだレオンの人物像を全力で打ち消した。
去っていったレオンを見ていて、五つ目の疑問が浮かんだ。
「あっち側って、学校のほうじゃないか?」
ということはレオンはわざわざ自宅とは逆の方向にある公園で、それも中学生が制服のまま一人で何かをしていたということになる。もしかしたら何かを待っていたのかもしれないが、レンと話を終えると何かを待つような風でもなく帰っていった。ならばレンが来る前にその相手にあっているのだろうか。しかしそれならばもうこの辺りにはいないはずだ。
考えれば考えるほど疑問はふえ、レンは頭を抱えた。
鏡の悪魔Ⅲ 1
こんばんは、リオンです。
新シリーズ突入ですが、やっぱりこの設定は考えやすいですねぇ…。
本当はね、もっと前に書き上げられていたんですけどね、早く投稿しすぎていつも見てくれている人に見つからないとかっていうのは、あまりにも避けたい事態だったので…。
このシリーズは前回、前々回とつながっているはずなので、それを見ていない方はそっちを先に見ることをお勧めします。
と、言うことで(どういうことだ)また明日!!
コメント1
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ご意見・ご感想
リオン
その他
みずたまりさん
うあ゛っ 間違ってました…。ま、いいや(←訂正する気0)
誤字です。というか脱字ですね。指摘アリガトウございます!しかしあえて訂正はしないッ
レオンが悪役に見えるのは私もです(ぇ
私となまかなんですよ!!
どんどんいいですか!?
楽しみにだなんて、アリガトウございます!わかりました、アリガトウございます!!
楽しみにしてください!!
2009/08/02 20:56:59