-光臨-
 時は少し前にさかのぼる。
 あの後――カイトがランをとめたすぐ後までさかのぼることになるのだが、すぐにランは眠ってしまって、カイトとレンは落胆していた。
「…カイト兄、レオンが居た部屋に連れて行ってくれないか?腰が抜けちゃって、一人じゃ行けそうに無いから」
「何のために?」
「聞きたいことがあるんだ。部屋もわからないしさ。…だめ?」
 上半身を起こしてそう頼んだレンをカイトは少しだけ睨みつけて、それから深くため息をつくと、ランの体を持ち上げていった。
「回復はしてやる。けど、部屋に連れて行くのは無理だよ。リン――ランと呼ばれているんだっけ?――兎に角、彼女をみていなければいけないのと…それに」
 そこで一旦、カイトは言葉を切った。
 大体後に続いてくる言葉は予想できたが、あえてそこは何も口をはさまないことにした。
 それを言うカイトの気持ちも、痛いほどわかったからだ。
「ここまで傷ついて、何を聞き出そうって言うんだい?俺は言ったよね?自分が傷ついて苦しむのは、君じゃない。あの子じゃないのか?俺はあの時、レンが魔界に連れ戻されたとき、君を助けるためだけにわざわざルールを変えたんだと思っているのか?それなら、自信過剰もいいところだな。彼女が酷く悲しんでいるようだったから、レンに会いたがっている様だったから、ルールを変えたんだ!それを、今から死ぬつもりでもいるのか!?俺は死人を蘇生するようなことはできない。それは、めーちゃんだってるかちゃんだって変わりないだろう。そんな風に人が苦しむことをどうとも思わないなら、好きにするといい」
「リンが苦しむのをみたいわけじゃない!!けど…けど、俺は知りたいことがあるだけなんだ!!」
「それが、結果的に相手を苦しませんことかもしれないのにか!?」
「そうさせないように注意は払う!!」
「注意をしていたって万全にはならないだろう!!」
 二人とも熱くなって、カイトもいつもは出さないような大声を出して罵倒している。
 それに応戦するかのように、レンも大きな声をだして今にものどをからさん勢いでにらみ合っていた。強いまなざしに押されたようにカイトがまた深くため息をついたときだった。
「――ゲホッゲホッ」
「レン!?」
 口に手をあて、咳き込み始めるレン。いきなりのことに驚いてどうしたらいいのか、何が起きたのかを理解するのに少し時間がかかったが、カイトはすぐにレンの背中をさすって声をかける。
「大丈夫かい、レン?」
 やっと咳が止まったかと思い、レンが手を下ろしてみると、二人は驚いた。その手に、赤い血がべっとりとついていたのだ。
「…血痰だね。なんかの病気とか」
「な…うそ」
 もはや「ここまでくると笑うしかない」なんていうのも通り越して、なくこともなし、苦笑いするしかなくなっていた。まあ、苦笑いも笑いの一つといえば笑いなのだが。
「いや、これがレンの自作自演でもなければ、命に関わるかもしれない」
「どうしよ…」
「とりあえず、早めに病院に行ったほうがいいね。できれば、魔界の。――まだ、あの彼に会いに行かなきゃ行けないのかい?」
「―――ん」
 まだ血の味がする口の中から、声をだした。
「――わかった。回復してやるから。部屋は、二階の階段上ってすぐのところだから、わかりやすいと思うよ」
「カイト兄…」
 仕方がないというように回復魔法を使うカイトを見て、レンは少し嬉しいような、でも病気かもしれないと発覚した直後で混乱している中だから、素直にありがとう、とはいうような気分ではない。
 回復が終わると、レンはカイトにそっと礼をいい、その場を飛び出した。

「レオン!!もういいから、あの子の毒をといてやって!」
「やだ」
「なんで!」
「面白くないし、気に入らないね」
 ミリアムがいうのも聞かず、レオンは一向にリンにかけた魔法を、毒を解こうとはせず、あろうことか倒れているリンを尻目に、部屋を出て行ったのだ。唖然としているミリアムたちに見向きもせず、レオンは階段のほうへと進もうと、そちらへと目をやった。すると、鮮やかな金髪がその階段を駆け上がってきたところだった。
「――ってめぇ!!」
 いきなり突っかかってきたかと思うと、レンはレオンの胸ぐらをつかみ、レオンを強く睨みつけてきたのだ。
「何?」
「聞きたいことがある」
「へえ。何が聞きたいのかな?」
 少しおどけて見せたレオンにひるむことも無く、レンは続けた。
「何故、お前は俺たちの両親が死んだことを、惨殺されたことをしっているんだ?」
 確かに、あの事件は親族が幼く刺激がつよすぎるという理由と、マスコミからの過剰なインタビューなどを回避するため、操作も秘密裏に行われ、公開もされなかった。それを、レオンが知っているというのは、不思議な話である。
「そんなの、すぐにマスコミにもれるに決まってるだろ。それに、半信半疑のままきみのお姉さんの記憶を探ってみたら、けっこう深いところにその記憶があったからね、確信したんだ」
「…」
 そこまでいったあと、レオンはレンにわかるようにわざと不敵な笑みを浮かべ、レンを見た。その表情にレンが不信感を覚えると、レオンが出てきたドアに目が止まった。
 まさか、と思ったときには身体が動き出していた。

 部屋の中へレンが駆け込むと、倒れたリンをメイコとルカ、ミリアムの三人が囲んでいるところだった。
「リン…っ」
「レン。リン様が…」
「リン、どうしたんだよっ!?」
「レオンの魔法で、毒を受けたらしいわ。毒の種類がわからないと、どうしたらいいのか…」
 そういってうつむくルカをみて、レンは脱力感を覚えた。それからすぐにリンのもとへ駆け寄ると、リンは苦しそうに顔をゆがめてレンが来たことにすら気がついていないらしい。
「リン、大丈夫か、リン!!」
 しかしその声にリンはこたえず、苦しそうにヒュウヒュウと息を繰り返すだけだった。
「このままでは、リン様が…」
「リン、リンっ」
 そう叫ぶように言ったレンの青い瞳から大粒の涙が流れ出した。
 その涙が血へと落ちる前に小さな光を発し始め、次第に光が大きくなって言ったかと思うと、その光は徐々に光のたまになった。
 あの、光だ。その光はルカやメイコ、ミリアムたちを退けるほどに強い光となっても、レンはその場から退けられることなく、まるで光はレンとリンに吸い寄せられるようにその場にふよふよと浮いていたのだ。
 そういえば、とレンは思った。
 あの時、初めて光の玉ができたとき、リンが大方の話をしてくれたが、その話ではこの光の玉で勇者の傷が完治したということではなかっただろうか。それが本当ならば、そう思い、レンは光の玉に触れ、リンの胸の辺りへ光を誘導した。すると光はわかっているとでも言うようにリンの胸にすぅっと入り込んで消えてしまった。そうして光が消えたかと思い、ルカたちが顔を上げるとそこには傷が癒え、すやすやと眠っているリンと地をはいて倒れているレンがあった。

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鏡の悪魔Ⅲ 18

こんばんは。
そろそろ終わりですね。レンも倒れました。めでたしめでたしですね。
今日の要約いってみましょう。
「血痰はけったんと読むらしい」
自分も血痰をちゃんと理解しているかといわれると自信が無いので、らしい、とつけてみた。
今、初めてエアアニメというものを知りました。
小説を書きながら別のタブを開いて「きらめきドリーマー」を聞いていたんですが、コメントを見たらアニメ化というのがあったので、ちょっと真に受けていろいろ見てみた結果、エアアニメの意味に到達…。ご愁傷様です、自分。
皆さんはきっとこんなことしなくてもわかるんですよねー。あはは…。
明日は学校だー。面倒くさーい!!イェーィ!!
と、いうことで!!(←毎回毎回どういうことなんだ)
また明日!!

追記 8/24
画面を見ていたところ、誤字を発見。
ですが面倒なので修正しません。心の目で間違いを正しておいてください。
ちなみに間違っていたのは、最後の『血を吐いて』と書くところを、『地を吐いて』と書いてしまったことです。
どうぞ心の目で。

閲覧数:573

投稿日:2009/08/23 22:37:27

文字数:2,913文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    ご意見・ご感想

    こんばんは、みずたまりさん。
    誤字で吹かないでください(涙)!!
    面白いものもありますが…。心の目で。
    みずたまりさんはやればできる子だって信じてます!!(←何)

    あー。レオンは近々マフラーを買おうともくろんでいるようです。
    きっと、自分でグサッとやったあとで、そのグロさに耐え切れず逃走(部屋を出た的な意味で)。
    レンが行っちゃってからトイレに直行じゃないですか?

    て、徹夜ですかっ!?
    あーやっぱり、そんなことを書いてましたか。レンは二次元に頼るしかなくなったんですね、精神的に。
    捕獲された後は書かないであげてください。かわいそう過ぎます。
    きっと…て(笑)

    あ、漢字は自分も苦手なので、ノートに書きとめたらそのノートごとぱらぱら漫画をください。
    レンに見せて泣かせておきます。(←ショタレン好き)
    ありがとうございます!!がんばって投稿しますね!!

    2009/08/24 20:04:43

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