-日記-
ふと目を覚ますと、そこはカイト邸の部屋の一つ、寝室だった。
酷い頭痛がして、頭を押さえてみた。天井は真っ白で掃除がいきわたっているのだろうことがわかる。そこから首を動かして辺りを見回してみたが、殺風景な部屋でどうやらあるのはこのベッドと小さな本棚だけらしい。しかも本棚には本といった本も無く、雑誌が二冊と日記らしき古ぼけたリングノートが一冊、無造作に立てかけるように入れられ、三冊全てが埃をかぶって色あせ、リングノートはもとが紅かったのであろうことはわかるが、今はくすんだ茶色になってしまっていた。
額に乗っていた冷たいタオルが枕元に落ちた。
上半身を起こし、時計を探したが時計すらも無いらしく、落胆してもう一度ベッドに横になる。無音の時間がしばらく流れた。
うまく誰かが部屋を見に来てくれればいいのだが、そうはいかずになにもないまま時間が過ぎていく。
もう睡魔が襲っては来ない。眠れない。
暇で暇で暇で暇で暇で暇で暇で。けれど頭痛で立ち上がることもつらいくらいで、起き上がってぼうっとしているくらいしか、やることも無いのだが、まあそれも暇なわけで。
取り合えず起き上がって重い頭を抱えながら、本棚に向かう。適当な本を探すが、雑誌は二冊とも女性誌らしく、レンが見て楽しいような内容は載っていないように見えた。だから、というのも変だがリングノートを手にとってぱらぱらとページをめくった。中は鉛筆で文字が書いてあったのだろう、ページとページがすれて黒くなってしまっているが、後ろのほうのページは読むことが出来る程度にはなっていた。
それをそっと黙読し始めると、それがやっと何なのかが理解できた。母親の日記だったのだ。惨殺される直前まで日記を書いていたらしい。
ふと、そのうちの一ページに目が留まった。そのページも黒ずんでいたが、どうにか目を凝らせば読めないことも無い程度かと思える。
『今日は、家族で買い物に行った。最近薬の飲み忘れが多い。医者にはずいぶん言われていたけれど、忘れてしまうものは仕方がないと割り切っている。
どうも最近、夫の妄想癖に拍車かがったらしく、可笑しなことを言い出しているけれど、子供たちにおかしな影響が無いかが心配。そういえば、今日はリンとレンが学校のテストを持って帰ってきた。レンはいつも百点だけど、今日に限ってなぜか八十点台だった。どうしたのか聞くと、逆に子供は嫌がるというのを前に何かで見た気がしたから、あえて聞かずにリンのテストを見ていた。リンのテストがとてもよかったので、褒めてやった。しばらくしてレンは部屋にこもってしまって、リンは夫にもテストを自慢していたけど、夫は無関心でリンはつまらなそうだった。カイトはまた食べきれないくらいのお菓子をもらってきて、「バレンタインじゃないのにね」と笑っていた。』
この場合の薬は、医者に言われるというのだからまともなほうの薬なのだろう、母には持病があったのだろうか、と考えてみたが思い当たる節は無い。
夫の妄想癖、三人も子供がいる中で夫に酷い妄想癖があるとなれば、母親としては心配な限りなのだろうな、とレンは思った。
ページをめくる。
『最近、段々レンに元気がなくなっている気がする。明日は病院に連れて行こうかと思う。
それにくらべてリンはいつも以上に元気で、育ち盛りだからかご飯もよく食べて嬉しい限りだ。』
このページには特にこれといったことは書かれていないらしい、ページをめくった。
『今日、レンを病院に連れて行った。すると、医者からレンは酷い病気だと告げられた。
病名は確か、グッドなんたらっていう名前で、肺があぶないだのなんだのっていわれて、頭がくらくらして貧血で倒れそうになってしまった。レンはきょとんとしていたけれど、レンは頭がいいから実は感づいているんじゃないかと思ってしまう。
どうしたら直るのかと聞いたら、移植をして持ちこたえることができたら再発する可能性が低いといわれた。けれど、病院にも移植ができるドナーがなくって、ドナーが見つかる可能性も低いといわれた。なんでも、最近はドナーを提供することに恐怖感を覚えるとか、自分の親族の体の一部を提供することに非協力的なんだとか、そんなことをいわれた』
「グッド…なんだよ」
そうつっこんでみたが、答えてくれるはずも無く、また無言になった。
これが、この前の吐血の理由だろうか。
また、ページをめくってみた。黙読を始めた。
もうリンは回復しきっていて、はやくレンに会いたいとわめいているくらいだ。
「ルカ、私、もう平気だよ。ねえ、どうしてレンがいないの?」
そうきかれてもルカだってレン達のほうの理由をちゃんと把握しているわけではなく、その役目はメイコの役目となっている。
と、そこにメイコが紅茶とハチミツを持って入ってきた。
何も話そうとしないルカに、何か感づいたのか、リンは仕方なさげにため息をついて話題を切り替えた。
「じゃあ、何か面白い話でもして。あ、そういえば、あのミリアムって人、ルカの名前知っていたよね、なんで?」
その質問に少し困ったような表情を浮かべたルカも、すぐに意を決したようにリンをメイコに向き直って話し出した。その間にメイコは椅子を持ってきて椅子に腰をかけた。
「聞いていただけますか、私が主の使い魔になる前の話なのですが。私は純潔の天使なのですが、私の父がどうも遊び人というか女好きで、愛人がとても多くて。その中でも私は正妻との間に生まれたのですが、勿論愛人との子供も多いわけですよね。そんな中で、私の母が、病気でなくなってしまったときに父は、自分の愛人と子供を引き連れて葬儀にやってきました。私はそれが許せなくて、その愛人と子供、それに父ですらも拒んで葬儀には出席させませんでした。まあ愛人たちからしてみれば、自分の相手の妻の争議になんか出たくも無いでしょうから、すぐに帰ってしまったんです。けれど、一人だけ、私と同じくらいの年恰好の女の子が言ったんです。『私の父の奥さんは、私の母でなくても赤の他人じゃないですから。葬儀にくらい、出てもいいでしょう。それがダメなら、私は貴方とお話がしたい。貴方のお母さんがどんな人だったのか、聞いてみたい』そういわれては、拒みようも無いですから、彼女だけを受け入れました。その子がミリアムでした。話を聞けば、私が生まれたわずか三ヵ月後の生まれたというのですから呆れました。けれど、二人意気投合しました。ミリアムは私と性格が同じなわけではありませんが、何故か趣味があったのです。ミリアムは料理がうまくて優しく姉御肌で、まるで兄弟ができたようでした。腹違いの兄弟ってヤツですね。よく二人で遊びました。ミリアムの母もミリアムが幼いときになくなったらしいです。それで、私は主の使い魔として呼び出され、それ以来ミリアムとはあっていませんでした。まさか、こんな形で会うとは思っていませんでしたが」
そう言って苦笑したルカを見ていたメイコは、どことなく悲しげな印象を受け、その空気を打ち消すように紅茶を勧めた。
話が終わった後のルカは、どこかつき物が落ちたような幸せそうな表情をして紅茶を飲んでいた。
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リオン
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こんばんは、になってしまいましたが、みずたまりさん。
私の地方はどうも夏休みが短いみたいです。その分冬休みがちょこっと長いですから、いいんですけどネッ!
宿題、ぎりぎりまでやってました。みずたまりさんもがんばってー!!
あれ、小学校の先生に言われましたか?あれー。不思議だなー。…流しましょう。
ああ、書かないであげてください。書きたくても書かないであげてください。レンが後ろで涙目です。あ、レンをパシッときます。そっちに十時ごろには着くと思うので、ノート渡してください。
ショタレンはいいですよね!!本当に!!マセレンとかイケレンもいいですが、やっぱりショタレンも捨てがたいんです!!
グッドパスチャー症候群です。(←何故におぼえてるし)
Wiki、見てみると出るはずですよ。ほ、本当にするんですか?わざわざ…がんばってください。
ルカとミリアムを頭の中で考えていたら、二人とも長髪でお姉さんキャラで、釣り目っぽいようなイメージがあったので。
じ、上手だなんてそんなっ!!「才能分けてくれぇぇぇぇぇ!!!」って友達に言いまくってます(汗)。まあ、イラストのほうですが。
見てくれてありがとうございます!!次も見てやってください!!!
2009/08/25 20:14:41