のぼせたまま湯冷めのまま見上げて
月の無い空はそれでも寂しくはなさそうで
不揃いの雪駄をパタパタ鳴らして歩いた
明るい場所が苦手なのを知っている君は
すぐにろうそくを吹き消して迎えてくれる
星だけでこんなに明るいのなら確かにね
小さな話をいくつか紡いでは解いてく
昔のことも今のこともどうしたいかも全部
自信のなさそうな声の中に見えた楽しさは
私のせいだったらいいのになんて
遮光カーテンは朝陽を剣に変えてしまう
レースのカーテンだと二度寝が許されない
「地下室で過ごしたい」と言うと君が笑った
この井戸水はまだ通っているらしい
土の付いた野菜はすぐに輝いて宝石のよう
ぬか床も味噌も念入りに発酵させたもの
遙かな大地をいくつか借りては耕して
嫌いなものも好きなものも知らないものも全部
自信のありそうな眼差しに混じった弱気は
私のおかわりですぐに消えてった
何も無い時間は一足一歩を刻もうとする
何もかも許されていてでも私でありたいと強く
余計な言葉はもったいないから耳を澄ます
感じたことを誰かに伝えようともしない
過ぎてくことをどこかに残したって傲慢だ
ここにしかいなくてそこにはもういないだけ
通り雨が湿らせた地面も西日で乾いてく
誰も来ないバス停の中で不器用な雨粒と歌う
傘を持ってきてくれた君に向けてもう一曲
晴れた夜空に傘を差して回してみた
この場所に来て過ごした時間は
とても短いって知ってるのに
宝物にするには大きすぎるんだ
だから写真は一枚も撮らなかった
街灯が消えることの無い街に戻る
きっと今も誰かが起きて一日を始める
何もかも違う時間の中だけど私は
別に良いよって言ってくれる気がした
光の絶えない街の声が星のように
吐息の消えない月の影が信号のように
生ぬるい風がまとわりついて流れ
少しだけ体温を奪って消える
少しだけ思い出を奪って消える
もう戻らないんだ
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