「カガリビト」1章【悪ノ娘】①の続きです。
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カガリビト・・・体の一部を生贄にし、物語の主人公の心にカガリ火を灯し、物語を正しい終焉へと導く存在。普段は異空間にあるカガリビの里でひっそりと暮らしているが、カガリビトに選ばれると、物語の世界を、カガリ火を灯して飛び回る使命を負う。カガリ火を操る以外は普通の人間と変わりない。目的地へは夢の御告が頼りで非常に不便。また、カガリ火への干渉も一定距離以上近づかないといけないので非常に不便。遠隔操作とかできればいいのになぁ。(byアレク)
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「大丈夫か?召使いのアレンの所まで送っていこうか?」
ガストはそう言いながら、僕の左手に包帯を巻いてくれた。
「ありがとう。でも、僕の仕事だから」
包帯を巻き終わったので、僕は改めてガストにお礼を言った。
「ありがとう、ガストさん。貴方の物語が素晴らしい結末を迎える事を願っています」
そう言い僕はガストの部屋を後にした。出て行く時、独り言のようなつぶやきが聞こえてきた。
「アレクといい、アレンといい、今どきの若いのはしっかりしてるなぁ・・・」
ガストの部屋を後にした僕は、武器の沢山飾ってある部屋、王女の椅子のある部屋を通り抜け、中庭を目指して歩いていた。夢で見たとおりの美しい内装の宮殿だった。でも、どこか少し冷たかった。
長い廊下を抜け、大きな中庭に出た。手入れの行き届いた芝生に美しい植木。ティータイムができるように設置された豪華なイスと机。そして中央には大きな噴水が水を吹き上げていた。
痛む左手をさすりながら、月明かりと満点の星空に照らされたそれらを眺める。
「・・・・・・・・・兄さん・・・」
「呼んだか?」
独り言に答えが返ってきたので、驚いて思わず尻餅を着いた。
「久しぶりだな・・・アレク・・・」
茂みの奥から姿を現したのは、黒いマントを着た僕と同じ白髪の青年。
「エ・・・エレク兄さん・・・?」
エレク兄さんは僕の兄だ。成績も優秀で能力も高く、一族始まって以来のカガリビトになると期待されていた。だが、ある日失踪。その直後から世界のカガリ火の異常が増加した。そこで急遽、僕がカガリビトに抜擢されたのだった。
「エレク兄さん!今までどこ行ってたのさ!!連絡もよこさないで!!」
兄さんは僕の左足と左手を見た。
「・・・・やっぱりこんなの間違っている・・・」
「・・・兄さん?」
「なぁ、アレク。俺と一緒に来ないか?一緒に世界を変えよう。こんな誰かが犠牲にならなければ成立しないような世界、間違っていると思わないか?このカガリビトの力があれば簡単に世界は変えられる。主人公のカガリ火を消してしまえば、誰かが必ず負ける勝負も、身を割くような恋人との別れも、何も起こらずに物語は終わっていく・・・」
僕は理解した。兄さんが今までしてきた事を。そして、これからしようとしている事を。
「兄さん・・・」
「アレク・・・見ず知らず物語なんかの為にお前が犠牲になる必要はない。お前も知っているだろう?カガリビトに選ばれたら最後、その命全てを物語に捧げるまでその悪夢は終わらないことを・・・」
兄さんは手を差しのべる。
「俺と共に来い。アレク」
「兄さん・・・・」
その時、廊下の奥から声が聞こえた。
「アレン!アレンは居らんのか?!」
「くそ、邪魔が入ったか・・・。いいか、アレク。この物語はもうすぐ終わる・・・巻き込まれる前に早く逃げるんだぞ。次の物語で待っている・・・」
そう言うと、エレク兄さんは闇に消えていった。
「兄さん・・・」
考える間もなく、廊下の奥からドタドタと、豪華なパジャマを着た金髪の女の子が走ってきた。
「アレン!アレン!どこじゃ?!ん?おい、そこのお前!」
僕の姿を見るなり、命令口調で近寄ってきた。
「その方・・・見ない顔じゃな?新しい召使いか?まぁいい。おい、アレンを見なかったか?」
僕の顔を覗き込んできたのは、夢で見た金髪の少年そっくりの少女だった。
「ん?なんじゃ?泣いておるのか?どうした?このリリアンヌに言うてみい。わらわも今すごくむしゃくしゃしていて泣きたい気分じゃ。そこでアレンをいじめてやろうと思うてな・・・」
何だかすごく無神経な少女だった。さっき起きた事をゆっくり考えている暇は与えてくれそうに無かった。
「僕も丁度アレンさんを探しているんだ。一緒に探しましょう」
そう言うとリリアンヌはすごく嬉しそうな顔をした。
「お主、名はなんと申す?」
興味有りげに色々と質問してくるリリアンヌ。
「そうか、アレクか。どうして髪が白いんじゃ?ネツマ族の者か?」
「アレンか?アレンは何を考えておるか分からん!たまにすごく悲しそうな顔をしている・・・その顔を見ると、無性に虐めたくなるのじゃ!」
色々と自分から話してくれた。戦争で皆忙しく、話し相手も居ないのだろう。しかし、どうして王女がこんな時間に一人でウロウロしているのだろう?よっぽど戦争でばたついているのだろうか?
話しながら厨房でこっそりオレンジを頬張り、馬小屋でリリアンヌの愛馬・ジョセフィーヌを見せてもらい、いよいよ、問題のドアへとたどり着いた。
「汚いところじゃのう。こんなところにアレンは住んでおるのか?」
ドアを開けると、ベッドと机とタンスだけの小さな部屋だった。そのベッドの上に小さく疼くまる、リリアンヌそっくりの金髪の少年。
「なんじゃ?アレン?すっかり寝ておるのか?うりゃ、うりゃ、起きろ!アレン!」
リリアンヌがアレンの顔をつつく。
「う~ん・・・・」
うっすらと目を開けるアレン。
「アレン!リリアンヌが来てやったぞ!ほれ、起きんか!」
アレンを執拗に攻撃するリリアンヌ。しかし、アレンの目は虚ろで生気がない。
「リリアンヌ?・・・あぁ・・・もういいんだ・・・」
「な!なんじゃと~?!こら!打首にするぞ!」
「何でもいいよ・・・もう・・・どうせ首切られて終わりなんだし・・・」
僕はアレンの目をのぞき込んだ。あれ?おかしい。カガリ火が完全に消えている。カガリ火が消えていると言うことは、もう死んでいるも同然、物語と関係ない存在だと言うことだ。
「これはまずい・・・」
僕はアレンに馬乗りになっているリリアンヌを下ろし、アレンを起こして向き合った。相変わらずアレンの目は虚ろで口からヨダレを垂らしている。
僕は目を閉じ、自分の左手に深く息を吐きかけた。
「ふー・・・」
すると、僕の左腕が燃え上がった。
リリアンヌが悲鳴を上げる。
「きゃあああ!なんじゃ?何をするのじゃ?」
熱い。痛い。身体が焼けていく。
リリアンヌが両手を広げ僕の前に立ちはだかる。
「どいて、リリアンヌ。これが僕の仕事なんだ」
「ダメじゃ!そんなことをしたら!アレンが死んでしまう!」
「どくんだ!リリアンヌ!」
「嫌じゃ!嫌じゃ!絶対に嫌じゃ!」
なんだか・・・すごく懐かしい。
あれは、カガリビの里の裏山。
エレク兄さんと一緒に秘密基地を作った日、帰ろうとしたら熊が出て・・・
その時、兄さんも僕をこんなふうに守ってくれたっけ・・・
「早くそれを下げねば人を呼ぶぞ!?衛兵!衛兵!!」
大声で騒ぎ始めるリリアンヌ。人が来てはマズイ。
「・・・ごめん!」
「きゃっ!」
僕は右手でリリアンヌを突き飛ばした。
「我が左手を贄とし、この者に再びカガリ火を灯したまえ!!」
僕は燃え盛る左手をアレンの腹に突き立てた。
「うっ!うぅ・・・・」
唸るアレン。その目には徐々に生気が戻っていく。
「うぅ・・・あれ?ここは?あっ、リリアンヌ様!大丈夫ですか?」
リリアンヌに駆け寄るアレン。無事を確認した後、今度はこちらを向いて
「あっ!お前は!?白髪の魔術師め!俺に怪しい術をかけるだけでは飽き足らず、リリアンヌ様にまで手を出すとは!許さないぞ!」
そう言うとアレンはリリアンヌを抱きかかえた。
「アレンッ!アレンッ!!アレンッ!!」
リリアンヌが泣きながらアレンに抱きつく。
「・・・・良かった」
僕の目には、アレンの中で轟々と燃え上がる美しい黄色い炎が映っていた。リリアンヌと同じ色の、世界で一番美しい炎が。
静まり返った眠る街を駆けゆく。
「南門の方へ逃げたぞ!」「絶対に逃すな!」
衛兵たちの怒号が飛び交う。
そんな中、僕は痛む左腕を抱えながらただひたすらに走る。走る。
僕は一日中走り回り、何とか、半分焼けた、焦げ臭い森の奥へと逃げ延びた。
「ハァハァ・・・・」
今は無い左腕の付け根が痛む。それにお腹も空いた。
「ハァハァ・・・くそっ・・・」
僕は森の中の少し開けた所にあった、古井戸にもたれ目を閉じた。
夢を見た。孤独な科学者、孤独なロボット、足りないココロ・・・。
「おはよう。目が覚めた?」
気がつくと、薄暗い部屋の中だった。
「え?痛ッ・・・・」
左肩が痛む。あぁそうか、もう左腕はないんだった。
「大丈夫?まだ動かないで!」
緑の髪の美しい少女だった。
「ありがとう・・・ここは?」
「ここは、井戸の中の隠れ家よ。私はミカエラ。よろしくね」
そう言うと彼女はにっこりと笑った。可愛い笑顔だった。
「外に出てみると、貴方が怪我をして倒れていたから。見かけない服装ね。旅人さん?それとも傭兵さん?」
「ある意味旅人・・・かな?僕の名前はアレク」
「アレク!素敵な名前ね。私の大切な人もよく似た名前なの。あと、その白い髪も親友にそっくりなの!」
ミカエラは嬉しそうに語った。
ミカエラの炎は少し特殊だった。ただそれでも、すごくキレイな緑色をしていた。僕たちはたくさん話をした。カガリビトの事、魔法使いの事、大切な人の事・・・・。
「そうなんだ・・・。アレクはお兄さんの事が大好きなんだね」
「うん・・・本当はすごく優しい人なんだ。でも、僕・・・どうしたらいいか、わからなくて・・・」
「大丈夫。アレクが間違っていると思ったら、ちゃんと言えばいいのよ。『お兄ちゃんは間違ってる』ってね」
「えー・・・言いにくいよー・・・」
「初めは認めてもらえなくて否定されるかも知れないけど、分かってもらえないって簡単に諦めちゃダメだよ?」
「うーん・・・でもなぁ・・・」
ミカエラは僕の方を向き直して、真剣な顔をして言った。
「いい?アレク。アレクが諦めちゃったら、それこそ物語は終了よ?どんなに辛くても必ず希望を捨てたら絶対ダメだよ?」
僕は余りの迫力に戸惑ってしまった。
「う、うん・・・」
ミカエラは僕の返事を聞くとニッコリ笑った。
「よし、じゃあ、約束ね」
僕たちは指切りをした。
「ありがとう・・・・。じゃあ、そろそろ僕は答えを探しにいくよ」
「もうケガは大丈夫?」
「うん!ミカエラのおかげでだいぶ楽になった。ありがとう!」
「どういたしまして。気を付けてね」
「ありがとう。ミカエラも元気でね!」
僕はそう言って、隠れ家の小さなドアを出た。
ドアを出るとそこは見知らぬ研究室だった。
「カガリビト」2章【ココロ】①へ続く→
「カガリビト」1章【悪ノ娘】②
※これはmillstones様の素晴らしい楽曲「カガリビト」を元にした「悪ノ娘」「ココロ」「✽ハロー、プラネット」の二次創作です。私の妄想です。
ちなみに
「カガリビト」・・・楽曲を聞いただけ。設定読んでない。
「悪ノ娘」・・・小説は一回読んだけど実家に置いてきてしまった。
「ココロ」・・・楽曲は聞いた。小説もミュージカルも見てない。
「✽ハロー、プラネット。」・・・楽曲は聞いた。ゲームやりたいなぁ。
てな感じで、かなり原作様とは食い違っていると思います。勉強不足ですみません。
・あらすじは、カガリビトの少年アレクが楽曲の世界を回ってカガリ火を灯していくお話です。
・中途半端に原作を汚されたく無い方は観ないことをお薦めします。
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