~~~~~どっぐちゃん視点~~~~~





こないだの勉強会から、Turndogの様子が少し変わった。

余り笑わなくなり、机に向かっている時間が長くなった。

のぞきこんでみると、『有機化学概論』とか『微分・積分』とか、少しわけわかんないものが並んでいた。

簡単に考えれば、ゆるりーさんたちに触発された……とかなんだろうけど。


事態はそんな簡単じゃないかもしれない。



だって……今のTurndog、ひどく辛そうだから……………。





「ふぅ……」


思わずため息もつきたくなる午後。

Turndogは相変わらず、机に向かったままだ。

余りに暇なので、こっそりTurndogの隙を見て私は廊下に出てぼんやりとしていた。まぁ、どっちにしろ暇なんだけどさ。


「あれ? どっぐちゃんが一人で外にいるのって珍しいね」


不意に声がして振り返ってみると、そこには受験生トリオの姿が。


「んー? まぁ、ちょっとね。それよりあんたらはどうしたの?」

「Turndogさん生物が超得意だってゆるから聞いたので、ちょっと教えてもらおーかなって。Turndogさんは?」

「あー、今部屋にいるけど、あまり関わらないほうが―――――」


そこまで言った時だった。





『グゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』





『んなっ!!!?』


突如Turndogの部屋から響く絶叫。

思わず反射的に、扉を突き破って駆け込んだ。


「Turndog!? どうしたのっ!!?」


Turndogは椅子に座って頭をかきむしっている。

そして私たちに気が付くと、焦点の合わない目で見据えてきた。な、なんかこないだの雪りんごと同じにおいがする。


『どっぐちゃあああん……今すぐ俺を殴れ』

「へ!? で、でもそんなことしたらあんた死」

『つべこべ言わずに殴りやがれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!』

『はいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!』



ということで。


力はなるべく込めずに、でも鞭のように腕をフルスイングした結果。

Turndogはなぜかたまたま開いていた襖の中の蒲団に直撃し。

大怪我こそしなかったものの30分ほど目を覚ましませんでしたとさ。





「いやー。びっくりさせちゃってすまんかったな」

「ホントだよこのバカTurndog!! 死んだらどーするつもりだったの!!?」

「だってどっぐちゃんなら死なさないでくれるって自信あったし……」

「こ、このぉ……///」


復活したTurndogは暢気に笑っている。口の端から血ィ垂らして笑ってんじゃないわよ、怖いわ。


「……で、なんで叫んでたんですか?」


ゆるりーが恐る恐る聞くと、Turndogは少し苦笑いを浮かべた。


「ああ、皆に倣って、勉強もう一度本気でやり直そうと思ってたんだけどな。わっかんない問題にぶち当たって、わっかんない理屈にぶち当たって、法則性の掴みにくい命名法にぶち当たって、ちょっと壊れた」

「ちょっとって感じじゃありませんでしたよっ!!?」


雪りんごから素っ頓狂なツッコミが入る。そうね、あれを知らない人から見たら全然ちょっとじゃないね。



……でも、あたしは知ってる。

一年前の今頃から受験が終わるまでは、、あいつは本当にあんな感じの事を毎日繰り返してた。

もっとひどいことも繰り返されてた。

自分を傷つけ。鬱になり。後悔を重ね。楽しげな仲間たちを妬み。

一時のTurndogは、狂う寸前だった。

でも同時に、勉強に対しての強い想いも持っていた。

結局、生来のサボり症のおかげで実を結びこそしなかったけど。

本当は己の義務を果たさなきゃならないことを、誰よりもわかっていた。



だって『ここ』に、待っている人がたくさんいてくれたから。



こんな自分でも、暖かく迎えてくれる人たちがいるところへ帰らなきゃならないことを、わかっていたから。



「……あの頃と同じぐらい、強い意志を持とうとしたんでしょ?」

「……うん」

「……だから苦しかったんだよ。今目指すべき夢は少なくとも4年先なんだ。受験と同じテンションでやってたら、苦しくて当たり前だよ。今は一歩ずつ、一歩ずつ。しっかりと踏みしめて歩いて行かなきゃ」

「……うん、そうだな。ありがと、どっぐちゃん。こういう時は、やっぱり頼りになるよ」

「う……あ、あんたがいつまでもそんなんだとあたしが眠れないから言ったまでよっ!!! 勘違いしてるとドラゴンスープレックスで吹っ飛ばすわよ!!?」

「はは、そりゃ勘弁願いたいね」


やっとTurndogの顔から緊張が抜けた。


やっぱこいつは、ピリピリしてるよりはのんべんだらりしてた方が似合うわ。


「……さて、と! Turndogさん、生物教えてー!」

「お? 覚悟しな雪りんごさん、俺の生物はキレが違うぜ?」

「え、なんかその表現引く……」

「ゆるりーさんサクッと酷いこと言うね……」

「まーまーまー、ほら勉強はみんなでやった方が楽しいですよ!」

「てぃあのいうとーりよ、Turndog!」


「……ああ、そうだな。おっしゃ、皆でやりますかねっと……!」










独りでは負けそうな時も。

必ずどこかで共に戦う仲間がいる。


必ずどこかで待っていてくれる人がいる。



受験生は、全世界を味方につけて志望校に挑むのだ。





頑張れ受験生。サクラサクその時まで。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町! Part9-2~Turndogの暴走~

頑張れ受験生、俺も頑張る。
こんにちはTurndogです。

こないだ何気なくセンターの問題をやり直したところ、本番の時の2/3もとれず愕然としております。
受験後のだらけは長引かせるとこうなっちゃうんだぜ。

因みに受験勉強終盤は、もはや『早くヴォカロ町書きたい書きたい書きた(ry』という執念から勉強してた感じでしたねw
どこに受かるとか昆虫とか何とかかんとかよりもピアプロに帰って、イズミさんやしるるさん、ゆるりんごに
「Turndogが帰ってきたよー!!」
と報告したかったw
リアルよりもPCの中に居場所を求めるあたり終わってますねこの大学生。リア友作れよ俺。

何はともあれ、どんなに長くてもあとたかだか4か月、短けりゃ2か月で受験生たちの辛い生活はひとまず終わるのです。
頑張れ。俺も大学辞めないよう頑張る。

閲覧数:220

投稿日:2013/10/31 22:39:42

文字数:2,498文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    その他

    受験、というか、そういう緊張するのは、一生したくないww

    勉強は自分の興味あること以外は、もうしたくないww

    基本私は、ダメ人間←確信


    どうでもいいけど、どっぐちゃんの耳にふーって息かけるとどうなるの?

    2013/11/04 00:50:14

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      しるるさんの意見に基本同意ww
      ……と言いたいところだが夢を叶えるため私はあと何度か受験や試験が待っている。
      嗚呼、無情……(怠け者めが!

      反射的にダンプを一撃で両断するチョップとか、タンカーを天空に吹っ飛ばす裏拳を喰らうんじゃないかなぁ……ww
      やってもびっくりして顔真っ赤になったどっぐちゃんを見る前に自分が消し飛びそうな気はするww

      2013/11/04 00:58:48

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