「疲れたの」
長く澄んだ色の髪を弄びながら、彼女は言う。
「僕もだよ」
そう口に出して僕は、閉ざされた暗い部屋の電灯を点けた。
「寝なさい」
彼女の柔らかい髪を撫でて、睡眠を促す。けれど彼女はうなだれたまま。
「お兄ちゃん」
「何?」
「歌うって、楽しいことなの?」
僕の顔を捕らえた彼女の目は、酷く哀しく、闇を携えて。
それに僕は答えられなかった。
否、本当のことを言えば喉まで出かかっていた。
この酷使された喉が、僕らの心臓と言っても可笑しくはない。
口の開け方、音量、力の入れ具合全てに従って、僕らは生きて(歌って)いる。
「お兄ちゃん」
彼女が先程の答えを催促してきたのだと思って、慌てて視点を頭の中から外界へと戻す。
「わからない」
視線を彼女の目に定めることは出来なかった。
彼女は、ぷいと首を背けた。
ああ、もう薄暗い外。
僕達もカーテンを閉めないと。
夕飯を食べたら、また続きなのかもしれない。
早めに準備をしておかなければ。
「私は、一人じゃ歌えないよ」
また、喉をつままれた気分に落とされた。
「お兄ちゃん。なのに、私の声は、全てドレミファソラシなんでしょう」
淡々と呟く彼女に、僕が俯く。
「この静寂も、低いソの音が続いてる……」
彼女は続ける。
僕の唇は動かない。
「私はこうやって生きているのに、人間にとっては絶対音感を持つ代わりに五感を現すことはない存在で、無理やり口を開けさせられて、喉を」
「もうやめなさい、ミク」
潤んだ瞳が、俯いた僕の前髪らへんを貫いているのが感じ取れる。
「でも、お兄ちゃん」
「私は皆の中で生きているから、怖くないよ」
僕は顔を上げた。
「……今日の夕飯は、カレーだ」
丁度、向こうからガヤガヤと鳴る、いや話す、一行が帰ってくるのが見えた。
紫色と、赤色と、黄色い影がふたつ。
皆、笑っていた。
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