顔を地面に強打したがちゃ坊がそのままの恰好で、うううと唸っていると、ガチャ坊、どうしたの?とよく知っている声が響いた。
「こんな時間にひとりでどうしたのよ。」
釣り目気味の瞳をぱちくりと瞬かせて次姉のリリィがそこに立っていた。学校帰りなのだろう、まだ制服姿で大きな鞄をその肩にかけている。
 もうここは、いつもの商店街で頭の上には夕方の赤い空が広がっていた。
「それにしてもがちゃ坊。本当にこんな時間に何してるの?お姉ちゃんも一緒?」
転んだままのがちゃ坊を起こして、怪我をしてない?などと言いながら服の泥を払い、リリィはそう訝しげにそう問い掛けてきた。その言葉に、ううん一人、とがちゃ坊は返事をして。はたと自分が持っている紙袋の存在を姉に知られないように、がちゃ坊は慌てて背中に隠した。
 だがしかし、その一連の行動を全てリリィは見てしまっている。弟の明らかに怪しい行動に、ガチャ坊、と咎めるような口調でリリィは言った。
「こんな時間にひとりで歩き回って、更に隠し事?」
怒っている様子で腰に手を当ててリリィが睨んでくる。この姉が怒るとかなり怖い。
 でも折角頑張って用意したのだから、このお花のプレゼントの事は明日まで内緒にしておきたい。でもこのまま隠し事をしていたら確実にリリィのカミナリが落ちる。どうしよう、とあわあわしているがちゃ坊に、止めを刺すようにリリィが言葉を続けた。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんにいいつけるよ?」
厳かに告げられた言葉に、それは駄目。とふるふると怯えながらがちゃ坊は首を横に振った。
 長姉や兄は、リリィが起こるよとも怖い。というか怖いを通り越して恐ろしい。
「というか、がちゃ坊が五時を過ぎてもひとりで遊びまわっている時点で既に、お兄ちゃんたちに怒られるのは確実だね。」
そう言いながらリリィは自分の言葉に納得するようにうんうんとうなずいている。どどどどどうしよう、とその言葉に涙目になってしまったがちゃ坊に、だから、とリリィは続けた。
「それ、何を隠してるの?」
教えてくれたら一緒に謝ってあげる。と、がちゃ坊が背中にまわして隠している紙袋を指さして、リリィは苦笑交じりにそう言った。

 そして。
 5時のチャイムが鳴っても帰ってこないがちゃ坊を心配していたグミには、やっぱりお説教をされてしまったが、リリィが一緒に謝ってくれたおかげで酷く叱られる事は無く。夕ご飯の後の時間。母の日には一日早いけれど。とがちゃ坊はそれぞれにお花のプレゼントを渡した。
「四つ葉のクローバーって初めて本物を見た。」
と、嬉しそうにそっと緑のはっぱを撫でるリリィ。
「私に指輪をくれたはじめての男の人はがちゃ坊かぁ。」
と、貰ったばかりの指輪を指にはめてちょっと茶化すように笑ったのはグミ。
「男でも花を貰うというのは嬉しいものだな。」
と、しみじみ呟いたのはがくぽ。
皆が喜んでくれた事を嬉しく思いながら、いつもありがとう。とがちゃ坊は少しはにかみながら言った。

 その夜。こっそりとお布団の中で三人への手紙を書きながら、あのお姉さんとお花屋さんにもお礼の手紙を書かなくちゃな。と、がちゃ坊はそんな事を思った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

母の日のぼうけん・6

ここまで読んでいただきありがとうございました!
かなりオリジナル色が強いので、苦手な方がいましたら申し訳ないです。
というか、かなり俺得な感じです。

ガチャガチャというアイテムを持ってくる時点で、このネタを使いたくて仕方がなくなっていたのです(笑)
というわけで、がちゃ坊にホットミルクとサンドイッチをごちそうしてくれたのは、別の場所でやっている日記的小説からオリジナルキャラに出張してもらいました。
興味がある方は、私のブログのリンクからどうぞ~

「母の日のぼうけん」というよりも「ガチャ坊☆初めてのお使い編」の方が正しいかもなぁ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

閲覧数:117

投稿日:2011/05/08 01:05:51

文字数:1,319文字

カテゴリ:小説

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  • 時給310円

    時給310円

    ご意見・ご感想

    おかしい。ピアプロからの新着メールが来なかったぞ。

    ……という責任転嫁を試みたところで、おおかた僕自身が大量のスパムメールを片っ端から削除していて、気付かず一緒に削除してしまったというオチでしょう。遅ればせながら読ませて頂きました。(_ _;

    今回は何だかファンタジーなお話ですね。道を歩いていて、いつの間にか別の世界に迷い込むとか、僕が小さい頃に憧れていたシチュエーションじゃないですかw 小学生の頃は、鏡の中の世界とか地下の世界とかに憧れたものです。
    僕も花屋の主人に一票です。義理人情ですねー、粋ですよホント。学校の先生といい、花屋の主人といい、喫茶店の女の子といい、あったかい人達ばかりですね。もちろんリリィ、グミ、がくぽのインタネ家も。
    ファンタジーな展開にハートフルな人々、しかもそれを母の日と絡める辺りが斬新だなぁと思いました。
    あと個人的に、グミの「私に指輪をくれたはじめての男の人はがちゃ坊かぁ。」ってセリフが好きです。ホントいいなぁ、このセリフ。うちの誰かにも、いつか似たようなセリフを喋らせたいです。その時はパクリと罵って下さい。←

    今回もごちそうさまでした! たいへん美味しかったです!w

    2011/05/11 22:58:26

    • sunny_m

      sunny_m

      >時給310円さん
      コメントありがとうございます!
      新着メール、私も気がつかないで捨てちゃう事ありますよ?^_^;
      しばらくして、あれ?なんかうpされてる?みたいな(笑)

      不思議な世界に迷い込む。って誰もが一度はあこがれるシチュエーションですよね?!怖い感じでなければ、今でも私はちょっと迷い込んでみたいですw
      そして花屋さん、なんか人気でびっくりです!おお!!
      客商売は基本、喜んでくれる事を糧にしているところがあるからね、という感じの花屋だったのですが。そうか、こういうのが粋なのか。←
      かなりオリジナルな感じ(っていつもの事か^_^;)な話を書いてしまって、本当に俺得な感じなのですが、喜んでいただけて幸いです?。
      がちゃ坊視点は本当に子供の頃!って感じで視点を低めにしたいなとか思うのですが、今はもう、地面が遠いですね。やっぱり良く分からないよ小学生の思考とかww

      ちなみに、「私に指輪を?」の台詞は、絶対に言わせたかったので、アクセサリーの中でもあえて指輪をチョイスしました(笑)
      いや、グミならこういう事、言ってくれそうだ!と思ったので!!
      ぜひぜひ、使ってください?☆その際には、にやりと笑みを浮かべておきます(笑)

      それでは読んでいただき、ありがとうございました!!

      2011/05/12 22:38:03

  • 藍流

    藍流

    ご意見・ご感想

    大丈夫! 私も俺得でした☆(そりゃあそうだ←)

    早速素っ飛んできて読ませていただきました!
    がちゃ君が微笑ましいやら、先生ってあのひとよねとにやにやするやら、某所に迷い込むのを見て興奮するやらで大変でしたww
    やっぱりsunny_mさんのがちゃ君は可愛いなぁ。凄く自然な小さい子ですよね。……あれ、これ書くの2度目な気がする……。
    でも本当に、なけなしのお金をぎゅっと握るちっちゃい手とか、まるい膝小僧とかが目に浮かぶのですよ。
    ちょっと不思議なあの街の空気にもすんなり馴染むがちゃ君に和ませていただきました~^^

    あとさりげにお花屋さんが好きです。粋だわ。

    2011/05/08 01:51:47

    • sunny_m

      sunny_m

      >藍流さん
      コメントありがとうございます?☆
      も?書いててかなり楽しかった(笑)

      かなり掟破りだったかな^_^;と書きながら思ったりもしたのですが。
      もうね、やっちゃえ☆的な感じで(笑)
      子供の頃なんて昔すぎるのですが、自然といってもらえて本当に嬉しいです!
      でも実は、電車とかで小さい子をがっつり観察したりもしたw
      どれだけ不審者だ私ww
      花屋さんも好きになってもらえて嬉しいです?。粋ですか☆

      それでは、読んでいただきありがとうございました!

      2011/05/08 18:08:43

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