3.つながる「0」と「1」
ドンドン ドンドン 扉を激しく叩く音が響く。
「ほいほい、そんなに叩かんでもすぐに行くわい。それにしてもこんな時間に誰かの?」
そう言いながら、玄関へと向かっているのはトラボルタだ。
玄関の扉の外は激しい雨が降っている。それに普段ならもう皆寝てしまっている時間である。
疑問を抱えながらもトラボルタは、ゆっくりと玄関の扉を開けた。
突然の稲光、玄関の前に立っているズブ濡れの女性がその光に照らし出された。
老人はその姿に一瞬恐怖を感じたが、その女性の顔を見るやいなや叫んだ。
「シンデレラ!! シンデレラか!」
ズブ濡れの女性は、力ない瞳でトラボルタを見つめた。そして、か細い声でつぶやいた。
「トラボルタ……この子を、この子を助けて。もうあまり時間がないんだ」
そう言うと、左手に抱えた布に包まれたモノを老人に差し出した。
布からは長い髪とわずかに手足がはみ出している。
「こ、これは?! どうしたんじゃ? この少女は」
シンデレラが差し出したモノを受け取ったトラボルタは、その中身が少女であることを知った。
「……メルト症候群か。それもかなり末期じゃ」
老人は少女を見るなり、その症状を言い当てた。
「……お願い、その子を助けて。私の、私のせいで……」
少女を助けてと懇願しているその女性は、体中傷だらけで立っているのもやっとである。
女性の足元は彼女の血で真っ赤に染まっている。
「シンデレラ、お前……その足、一体どうした?」
女性の右足がついていないことを確認したトラボルタは慌てた様子で訊ねた。
「私は平気だから……、早くクミを……、おねがい……」
シンデレラは力なくそう答えると、その場で倒れこんでしまった。
シンデレラは、やわらかなベットの上で目を覚ました。
起き上がろうとしたが、体は1mmも動かせない。
「ちょっ」
かろうじて声は出せるようだった。
その声を聞いて、ベットのそばで眠っていたトラボルタも目が覚めた。
「おお、よかったー。ようやく目が覚めたか」
老人はベットで横たわっている女性の顔を見ながら、本当にうれしそうに言った。
「わ、わたしは……」
シンデレラはまだ目が覚めたばかりで、状況の整理がついていない様子だ。
その様子を察したトラボルタは、記憶の整理を助けるように状況を話し出した。
「しかし、心配したぞ。お前さんが傷だらけで戻って来た時は。
しかも、メルト症候群の女の子も一緒だとは――」
その言葉を聞いたとたん、シンデレラの表情が一変して、話が終わるのを待たずに叫んだ。
「ク クミは? その女の子は?」
「落ち着け、落ち着くんじゃ。そんな体で興奮するでない。大丈夫じゃ。あっちを見ろ」
トラボルタが指差す方向をゆっくりと向く。
その指差す方向には、もうひとつベットがあって、その上には少女が横たわっている。
シンデレラはまだぼやける目で、しっかりと確認する。
間違うはずがない。それはクミだった。
「安心せい、女の子は無事じゃ。ちゃんと適切な治療もしたし、制限装置もすでに着けておる」
シンデレラの頭の後ろの方から、老人の声が響いた。
「問題なのはお前の方じゃ。足も焼き切れておるし。普通なら死んでおるぞ」
後ろから響いてくる老人の声は残念ながら、シンデレラには届いてはいなかった。
「よかった……。本当によかった」
安心と喜びで彼女の胸はいっぱいになっていた。
「――い。――のか。――い、聞いとるのか?」
ようやく、老人の言葉は彼女の耳に届いたようだった。
「ん? ああ……」
気のない様子でシンデレラが答えた。
「まあ、よい。とにかく、怪我が治ったら、
どうしてお前の症状がその女の子に移ったのか。色々とその経緯を聞かせてもらおうかの」
シンデレラは少し深刻そうな表情になって、しばらくの無言のあと一言。
「わかった」とだけ答えて、少女の方を向いたまま再び眠りについた。
薄暗い部屋の中、シンデレラは目を覚ました。
窓から月の光がまっすぐ部屋の中に差し込んでいる。
彼女はおもむろにベットから起き上がり、隣のベットへとゆっくりと向かった。
向かった先のベットの上には、静かな寝息をたてて、少女が眠っている。
その少女の寝顔をシンデレラは悲しい顔で見つめている。
シンデレラが少女を抱えて、トラボルタのもとを訪ねてきてから二週間が経過していた。
適切な治療の甲斐もあって、二人とも順調に快方へと向かっていた。
シンデレラも松葉杖をつきながらなら、歩いてまわれる程に回復していた。
一方、クミも治療と装置のおかげでメルト症候群の症状は抑えられ、
命の危険はないところまで、回復していた。
しかし、いまだに少女の意識は戻っていなかった。
「……クミ。私、生きてるよ。クミのおかげで……。
でも、そのせいでお前が……。ねえ、わたし、生きてていいのかな?
どうしたらいいの? 許してくれないよね。どうやったら君を助けられるの?
クミを犠牲にしてまで生きたいなんて、思ってなかった。
あの時、あんなこと願わなければ、こんなことにはならかったのかな?」
後悔と自責の念にとりつかれたまま、シンデレラはベットの横に立ちつくしている。
彼女の瞳からは、悲しみでも嬉しいでもない涙がこぼれ落ちている。
「泣かないでよ……」
優しい声が部屋に小さく響いた。
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命に嫌われている
「死にたいなんて言うなよ。
諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
実際自分は死んでもよくて周りが死んだら悲しくて
「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
誰かを嫌うこともファッションで
それでも「平和に生きよう」
なんて素敵...命に嫌われている。
kurogaki
1A
もしもボクに
ヒレがあったなら
上手に泳げたのかな?
人の波も、人生の荒波も
振り向く間もないまま
流れていく
1B
ぶつかった ころがった
いたい いたいな...サカナ
ハルピコ
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