囚われの姫君へと堕ちた私は、

真っ暗闇な時間(牢獄)の中で罪を償う。

綺麗なドレスと亜麻色の髪を失って。

初めから、全てをやり直すことなんて出来ないと解っているのに。


静寂に耽り、貴方を想う。

震えた指先が掴んだ虚無。

懺悔という泥沼の中を、罪悪感という足枷を嵌めて行く。


喜劇を望むことなんて許されなくて、悲劇さえ訪れない。

彷徨うアリス。毒林檎を食べた白雪姫。野獣に囚われた美女。

私には、どれがお似合いなのかしら?


太陽は、もう私の前には現れてはくれない。

満月も、もう私の後ろで鏤められはしない。


懺悔の祈りを捧ぐたびに、貴方の傷が視える。

今更だと罵っているの?

過去の罪に縛られたままのこの私を。

きっと、貴方はそんなこととっくに忘れ去って、

煌めきと輝きの中心でその優しさを与えているのでしょうね。


淡彩と極彩の世界の狭間に漂って、私の心はもう、昔の明るみには戻れない。

凍えた手を組み合わせる。何者も通さぬ闇が、私と世界に絶域を創った―――

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忘却ノカナタ

前作『追憶ノカケラ』の別視点バージョンになります。両方合わせてお読みいただくのがいいかと。

閲覧数:70

投稿日:2010/05/06 15:05:42

文字数:452文字

カテゴリ:小説

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