書き連ねられることは無かった
描き綴られることは無かった
本日も枠外のアパートで
愚迂多良に日々を浪費する
一糸も纏わぬ手ぶらの半生
後悔で塗り固められた私は
要る?要らない?要る?要らない?
要らなかったみたいだな
登場人物たる所以は 語るに足る生き様だったかどうか
堕落塗れの私に 役回りなど在るはずも無いだろう
また今日も四畳半の檻の中
酒を浴びながら瓶を放る
出入り自由の監獄で 大文字を刻んで不貞寝に耽る
立ち上る群青の狼煙
窓越し映る 歓声に押し上げられ
揺らめきながら 遥か遠くの空を染め上げ塗りつぶしていく
拡声器 最大出力で
轟音の叫びが耳を劈く
「群像劇に反旗を翻せ」
書き連ねられることは無かった
ついに記されることは無かった
舞台装置の一部になるには
あまりに空っぽだったから
無味無臭無色無情のまま置いて老いた
無様で無価値な僕は
検討するまでもないよな
要らないことは 分かっていた
登場人物たる所以は 語るに足る生き様を積み上げたか
拒み続けた僕には 出番も居場所も用意されてないや
明日も明後日も 枠外の路地裏で煙吐いて輪投げ遊び
切り取られた 掃き溜めで 自業自得だ 長い怠惰の末路だ
なびく群青の旗を掲げ
路地裏から歩き出していった
満足に動かせない身体で
消え入りそうな命一つで
夜明け前の空を睨みながら
息も絶え絶えに歌い出す
「群像劇に反旗を翻せ」
赤子になって青に染まらぬまま 白く枯れて灰に朽ちる
全編堕落の自伝だ そんな物語誰が読みたいもんかよ
空っぽのままずっと生きていた 時間を無下に使って 何も為せなかった 熟せなかった
酔生夢死の空欄人間だ
立ち上がるには今更だ
あまりにも時間は経ちすぎた それでも
手遅れの命で足掻いて 一矢報う為に
少年A少女B通行人Cにさえなれなかった 空欄達は
とうに色褪せた青の時代を
とうに枯れた身で始め出した
愚を極めた履歴を燃やして
ついに狼煙は空を貫いた
くすんだ青をぶち撒けて
緞帳(どんちょう)を引き裂いて這い上がる
命一つじゃ手に余る舞台を
命の限り塗りつぶすんだ
「群像劇に反旗を翻せ」
「群青色に塗りたくってさ」
いつかこの歌が凱歌になってこの街を飲み込んだのなら
一行ぐらいは 刻まれるかな
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