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自分の部屋に帰ってきて悠からの手紙を読み終えると、私は涙を流していた。
その日、どうやって家まで帰ってきたのかも、私はあんまりよくおぼえてない。
あのときは、美術室の入り口で座り込んだまま全然立ち上がることもできなくて、美術部のみんなにはすごい迷惑をかけちゃったと思う。
記憶はあいまいだけれど、美術部の誰かに支えられながら学校を出た気がする。ってことは、たぶんその人に家まで送ってもらったんじゃないかな。
私は……この手紙を読んで、ようやく悠がもういないんだっていうことを認めなきゃいけないんだって思った。
それまで、先生の話を聞いてから、私はそれを信じられなくて、認められなくて。周りのことを全部シャットアウトしちゃってて、そんなのウソだって思い続けてた。
そんなことしたって無駄なことだったんだろうけれど、でも、そのときの私にはそうすることしかできなかったんだ。
でも、手紙を読んで、私はそうし続けることができなくなっちゃった。
もう、悠に会えないんだってことを、私はあらためて思い知らされたんだ。
そうして、私はやっとのことで後悔しだした。
思い出せば思い出すほど、私には後悔することが山のようにあるって気づかされた。
悠へと最後に告げた言葉は「悠の……バカ……」になってしまった。
最後の悠の姿は平手打ちをされた姿で、私のほうは私のほうで泣いていた。最悪の……最後だった。
完成したら見せてくれるって言ってた絵も、結局見てないままだった。
結局一度も、ちゃんと「好き」って伝えてない。
一緒に帰るばっかりで、ちゃんとしたデートもしてなかった。
プレゼントをあげたりもらったりっていうこともなかったから、悠との思い出の品、みたいなものもあるわけなかった。
記念日って言えるような日さえ、ない。
あれって思った。
そのときまで、私はその事実にまったく気づいていなかった。
私……私たち……。
また涙があふれてほほを伝う。
まだ、恋人同士にもなってなかったんだ……。
「うぅ……」
涙は、いつまでたっても止まらなかった。
何度も何度も目もとを袖でぬぐったけど、ちっとも追いつかなかった。
「うぇぇ……」
ベッドにうつぶせに寝転がって、顔をまくらに押しつける。
まぶたの裏側に、悠の――もう会えない、最愛の人の――姿が浮かび上がってきて、涙は止まるどころか余計にたくさんあふれてきてしまった。
ああ。
ああ、私はなんてことを。
なんてことしちゃったんだろう。
……違う。
なんで、こんなになんにもしてこなかったんだろ。
もう、なにもかもが手遅れになってしまったんだって、そんなこと、どうして納得できるだろう。どうして理解できるだろう。
「うぁぁ……ああ……」
涙は止まらなくて、声も止められなくて、私はみっともなく泣き続けた。
泣いても泣いても、気は晴れなかった。
結局その晩は、疲れ果てるまで泣き続けて、やっと寝たときにはもう空が白みはじめていた。
そんな時間になるまで泣き続けて、私はようやく自分の初恋が終わってしまったんだと、そんな単純なことに気づいたんだ。
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