-出発準備-
 しばらくすると、教室は静まり返った。
 それから、どっと笑いが起こる。何故笑われているのか分かっていないのは、メイトただ一人だった。きょとんとしているメイトを見て、皆が笑っていることは明白だった。
「…メイトさん、それ、棒タイです。ネクタイじゃありません」
「…え?」
 よくみると、メイトは何を勘違いしたんだか、紅い棒タイをネクタイのように結んでいて、何を作ろうとしたんだか、よくわからないものができていた。それにやっと気がつき、メイトはあわてて蝶々結びに直そうとするが、どうも上手くいかない。と、いうか、結び方がわからないらしい。
 おろおろと試行錯誤した結果、できなかった。
「貸してください」
 仕方がないというように、ルカがメイトの棒タイを結びなおそうとすると、また教室が沸いた。白く細いルカの指が、器用に紅い棒タイでリボンを作ると、メイトは感心したようにため息をつき、ルカはできたことを知らせるようにメイトの胸の辺りを軽く叩いた。
「あ、ありがとう。…やっぱ、器用なんだなぁ」
「…なんでもいいですけど、私たち、何しに来たか覚えてらっしゃいます?」
「…何しにきたんだっけ?」
 きょとんとしたメイトに呆れるように、ルカはため息をついてメイコから預かった『忘れ物』を取り出すと、メイトにもよくわかるようにひらひらと動かして見せた。
「忘れ物を届けに、です。…リン様、これ、忘れ物ですわ」
「あれ、ありがとう。これ届けるためにここまでしたの?」
「やりたくてやったわけではございません」
 言い切ると、ルカは帰ろうとして、まだ自分がメイド服のままであることに気がつき、更衣室に入って、
「あけたら命はありませんことよ!」
 と訳のわからない言葉を残して、『バタンッ』と大きな音を立ててドアを閉めた。…大人気ないといったら、この上ない。
 それをぼけっと見ていたメイトも、自分の服装に気がつくと、ちょっとおろおろして更衣室に戻っていった。勿論、ルカとは違うほうの更衣室である。
「…俺たちも着替えていいのか?」
 落ち着かないレンが、ふと尋ねる。その問いにリンも首をかしげた。
「レン君、もうちょっと口調を変えてみるとかさぁ――」
「レオン。」
「はい、すいません」


「…そんなことがあったの。大変たっだわね」
 キッチンに立ち、夕飯を作りながらルカたちの話を聞いて、メイコは少し呆れたような楽しいような、不思議な声のトーンで言った。しかし、そんなことで動揺しないのが、やはり年長者の余裕というものかもしれない。
「すげぇ焦った」
「あら、メイトも何かあったの?」
「服を着替えている間に、魔法が解けて小さな姿に戻ってしまったのですわ。いきなり大きな声を出すから、何かと思えば」
「あら、まあ」
 いきなり魔法が解けてしまい、メイトは少し困ってしまった。何故なら、姿を変える魔法というのは、悪魔などを例外とするならば難しい魔法なのである。悪魔などは生まれつき身体を他の小動物などに変える、いうなれば擬態能力に長けており、覚えようとしなくても成長するにつれて自然とその魔法をみにつけることができるのだが、それにしても使用する魔力が大きい。
 だから、そう何度も何度もこの魔法を使うことはできないのだ。取り敢えず、ルカとレンの手助けでどうにかその場は取り繕ってきたのだが、どうも、そのときは全員があわててしまった。しかし、本人が一番焦ったのだろう。
 そんな事実を聞いた後でも、メイコは動じずにトントントントンと包丁とまな板で音を鳴らしていく。しばらくなっていた音が、ぴたりとやんで、メイコはふと顔を上げた。
「…どうしたの、母さん?」
「別になんでもないけど、そういえば、メイト。最近、カイコちゃんとはどうなのよ?」
「カイコ?」
「…カイコは…うん、まあ…ね」
「ははぁん、そういうことか」
 あやふやなメイトの言い方に何かを感じたメイコは理解できたというように、意味ありげな笑みを浮かべ、もう一度下を向いてトントントントンと包丁を動かしていた。理解できないのは、メイコとメイト以外の三人だった。
「明日は隣町のメイトの教会に行くわよ。早起きしなさい。…とくに、リン」
「はぁい」
「早く起きろよ。でないと、俺の仕事が増えるんだからな」
「それじゃ、早く寝るために宿題、写させて」
「…。それとコレとは話が別だろ?」
「一緒です」
 そういってレンを部屋に引っ張って行くなり、リンは自分のスクールバックからほぼ落書き帳と化しているノートを取り出した。所々に花やらハートやら星やら、いろいろなイラストが書き込まれている。もはや何が宿題になっていたのかさえかかれていない。
「…これは、時間かかりそうだな」

「あ――もうッ結局起きないんだろうが!!」
「後五分だけだからぁ…」
「ダメ!起きろ!」
 布団を転がしながら、今週末も忙しくなりそうだな、などとレンは心の中でため息をついた。それも、思い切り大きく深いため息だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡の悪魔Ⅳ 3

こんばんは、リオンです。
…。え、あ、はい。とりあえず、言い訳、いいですか。
指摘される前に。
「教会ってキリスト教じゃね?」
とか言っちゃだめっス。だってなんていっていいのかわからなかったから…っ!
メイト君はおっちょこちょいでいいと思うんです。可愛いから、いいんです。
それでは、今日はこの辺で。また明日!

閲覧数:480

投稿日:2009/11/04 22:41:26

文字数:2,091文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

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    こんばんは、みずさん!
    メイト君いいですよねぇ。ダメイトって言ったらもう、ウチの子が一番です(笑
    リンレンはもう意思の疎通が成り立ってるんでしょうね。だから、こういえばこう返されるってのがわかってるんでしょう。
    レオンさんは、プリマさんの手によって還るべき場所へ還りました(大地へ的な意味で)。
    もうあの正義は神の領域…聖域なんですよ!世のちょい腐な人の救世主ですね。わかりますよ。
    レオ「そうだよね。もっと、やってもいいよねぇ!?」
    プ「ミク様の視界にお前みたいな不潔なものが入るのかと思うと…。もう、夜も眠れませんわ!」
    レオ「…(結構傷ついた)」

    もう、レオン君の出番はほぼないかとおもいますが…。あるとするなら、大分後の方かと…。
    レン達って言うか、今回はメイコの方が活躍するかも知れません…。
    レオンの本気は舞台裏で★

    2009/11/05 21:17:21

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