♯9 【恋は儚いものです。】

 メイコさんの話を聞いた後の僕たちは、何故だかとても、しんとしていた。

 でも、どうしてだろうか。
出会って間もない筈なのに、急にリンと何も話さずいるのが平気になった気がする。
喋りたくないから、じゃなくて。
 リンの傍で、とても自然に居られているような気がした。

 僕は、またいつの間にか変っていた窓の外の景色を見ている。
リンもまた、穏やかな顔で見ている。

 季節は、冬になっていた。

 「きゃあっ!」

 後ろの方から女の子の声がした。
リンも体を傾け、様子を窺っている。

 ドアの辺りで、1人の女の子が派手にコケていた。

 「あたたた…。」

 その子はむくり、と体を起こす。
きっと、向こうの車両に乗っていて、誰もいないからこっちへ来たんだろう。

 今度は僕が、その子に話しかけた。

 まだ座り込んでいるその子の前に膝をつく。

 「大丈夫ですか?」

 少女マンガみたいなやり方だが、他にかける言葉がわからなかった。

 「は、はい!すっみません!」
とてもテンパっている。

 リンの方を向くと、“その子の話も聞きたいから、連れてきて。”的な目をされた。

 僕は渋々
 「多分この電車には、僕たちしかいませんから。一緒にどうですか?」
と、笑顔で言った。

 流石にリンみたいに、強引に連れてくることなんてできない。

 「わわ。じゃ、お言葉に甘えて…。」

 上手くいったみたいだ。

 その子は、リンの隣に座るのかと思いきや、僕の隣に腰掛けた。
 「あたし、グミっていいます!お、お二人は…。」
座った途端に大きな声で喋り出した。

 「私は、リン。こっちはレン。」
また勝手に、人の自己紹介をとった。

 「グミさんは、何しに行っているんですか?」

 僕がそう言うと、グミさんはすんなり用事を言ってくれた。

 「ケンカしてる、友達に謝りに行ってるんです。」
なんだか恥ずかしそうに言った。

 「いやー、全部私が悪いんですけど、変な意地はって、もうかれこれ1週間です。」
ちろっと舌を出して、笑った。

 「お友達の彼氏さんに色目を使ったと勘違いされて…、とかですか?」

 これはないだろうと、気楽にリンが言った。

 「どうして分かったんですか…!」

 リンも自分で、びっくりしている。

 「…それってグミさん悪くないですよね。」
 「ううん。勘違いされるような行動した私が悪いです。」

 僕の問いかけに、グミさんはそう返してきた。

 「レンさん、優しいですね…。」

 グミさんの小さな呟きも、隣にいると聞こえてしまう。
彼女を見ると、頬を少し赤く染めている。

 …まさか、な…。

 そう思いながらも、自分も顔が赤くなっていくのがわかる。

 僕が、グミさんを意識し出したからか、どうにも話は弾まないままだった。

 でも、リンとグミさんはとても仲良くなった。
僕は2人に思い切りおいてけぼりをくらっていた。

 そうしているうちに、一つの駅で電車が止まった。

 「あ、ここだ。降りないと。」
 「え、じゃあ見送るよ。」
 
 いつの間にか、タメ口になっていた二人についていく。

 僕たちはここで降りないから、ドアまでだけど。

 「バイバイ。」
リンがグミさんに笑顔で言った。
僕らは、グミさんに大きく手を振った。

 グミさんも遠ざかりながら手を振る。


 「…バイバイ…。」



 今にも泣き出しそうな顔で、リンが呟いた。



 

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  • 非営利目的に限ります
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幽霊列車

次から、最終章ですかね?
ほとんど、「~編」
とか無かったですが。

閲覧数:98

投稿日:2012/05/27 16:24:28

文字数:1,471文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    あぁ!もしかして!?そういうことなのかな?ww
    幽霊列車の意味…www

    そんな感じで予想しながら、先をたのしみにしてますww

    グミちゃん、おっちょこちょいがかわいいなぁww

    2012/05/28 21:55:05

    • イズミ草

      イズミ草

      ええ。きっとそういうことですよww

      前作とは全然感じが違いますね、グミさんww

      2012/05/29 20:46:36

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