数日後、とあるコーヒーショップ。そこには野口がいた。注文して出てきたジュースを飲みながら、誰かを待っているといった風である。しばらくすると、KAITOがやって来た。野口が手を振る。
「野口君、どうも」
「KAITOさんもどうも」
そうして2人は隣り合って座る。しばらくしてオーダーに来た店員にKAITOが注文を頼む。そしてしばらくしてやって来たジュースを口にする。
「…気が重いですね」
「ええ、大体何で呼ばれたか、想像がつきますから」
そう言って2人が待つ事しばし。
「すみません、お待たせしました」
やって来たのは雅彦だった。野口が手招きする。早速雅彦は2人の向かいの席に座り、やはりオーダーに来た店員に注文を頼んだ。しばらくして出て来たコーヒーを飲んで漸く口を開く。
「今日、2人に来ていただいたのは、僕とミクとの事ですが…」
「マサ、そんな事位分かってるさ。ま、俺で力になれるか分からねえけど。とにかく話してみろよ」
「僕もミクがその話をしたってめーちゃんから聞いているよ。ただ、僕も野口さんと同じく、力になれるか分からないけどね」
「そうですか。それでしたら、早速聞きたいんですが、僕とミクが結ばれるにはどうすれば良いと思いますか?」
その直球な内容の質問に2人は内心苦笑しながらも、野口とKAITOは考え出した。と言うものの、雅彦の質問を事前に予想してあらかじめ考えていたにも関わらず、雅彦が納得しそうな案を出せかったのに、今考えても名案が出る可能性はさほど高くない。
(人間とアンドロイドっつー2つの種族がくっつく為の相互理解がされるのはいつになるか分からねえし、そもそも世の中の考えってのが、相互理解する方向に向かうかも分からねえんだよな。まあ、それはロボットが生まれ、それがアンドロイドへと進化していく過程を考えると仕方無えが)
考えても良い案が出てこず、煮詰まったのか、雅彦を見ながら野口が思う。そうは思うものの、雅彦の考えを否定したいとは思わなかった。そのうちKAITOが何か考えついたらしい。
「安田君、君がミクのマスターになるというのは、考えてみたかい?それなら世間一般でも良くある関係だけど」
「はい、それは考えました。ですが、僕がミクのマスターになるというのは実際の関係がどうあれ、2人の関係は主従関係に見えてしまいます。それは僕が望む関係ではありませんし、きっとミクも望んでいる関係では無いと思います」
既にその事は何度も考えていたのか、雅彦はすぐに答えた。
(やっぱりそう答えるよなあ…。マサの事だから予想は出来たけどな。現状、最もハードルの低い方法なんだがなあ)
半ば答えを予想はしていたが、そう考えざるを得ない野口だった。そしてしばらく考えた後、次の質問を発する。
「なあ、ミクちゃんと距離を保ったまま仲の良い友達位の関係でいる訳にはいかねえのか?」
その問いに、雅彦はしばらく考える。
「…先輩、僕は、今のミクとの関係を何らやましい関係だとは思っていません。確かにミクは全世界のファンから愛されている存在で、そのファンの方々を裏切る事はしたくはないですが、それを除けば距離を保つ理由が有りません」
「マサ、結構頑固な所があるな」
野口が呆れ気味に言う。
「そうかもしれません。でも、僕も譲る気が有りませんので」
自信を持って言う雅彦。その言葉には、あくまで自らの意思を貫き通そうとする雅彦の強い意志が見て取れた。
(野口君の言う通り、安田君はかなり頑固だね。それに僕の見た所、普通の人やアンドロイドの持つ価値観とは一線を画した物を持っているな。そう言う考えだからこそ、種族を跨いだ恋愛と言う事に、ほとんど抵抗が無いのだろう)
KAITOはそんな事を考える。一方、野口は状況を把握しようと努めていた。
(マサは現実が把握出来ていないのか、それとも強がっているのか?マサはそこまで頭は悪く無いだろうが、恋は人を盲目にするって言うしな)
2人がそんな事を考えていると、雅彦の方が口を開いた。
「…やはり、現状は八方塞がりという事でしょうか?」
「そう言う事になるな。…なあ、マサ、そこまで現状を把握出来ているなら、ちったぁ妥協するって事も考えた方が良くねえか?あんまりマサを前にして言いたくはねえけどよ、世の中ってのは何でも自分の思い通りになる訳じゃねえ、無理な現状を認識出来ているなら、時には引く勇気も必要だぜ」
「確かにそうかもしれません。でも、僕はミクとの関係で妥協はしたくないんです。ですので、出来るだけあがいて何かしらの突破口を見つけたいんです。先輩なら分かって頂けると思っています」
その答えにため息をつく野口。どうやら説得する事を諦めたようだ。
「…安田君、ごめん、大した協力が出来なくて」
「いえ、構いませんよ。元々無理な話かもしれないんですし。それでは。お時間を取らせてしまってすみません」
そう言うと、雅彦は自分の頼んだコーヒーの代金を置き、一礼して席を立ってコーヒーショップから出て行った。
「…はあ、参ったな。マサは研究とかだと俺の助言を聞いてくれたりするんですけど、この件に関してここまで頑固だとは思ってませんでしたよ」
雅彦の姿が見えなくなって、野口がため息をつく。
「でも、僕も安田君があそこまで頑固になるのも分かる気がします。僕もめーちゃんの事になると、妥協したいとは思いませんから。仮にめーちゃんとの仲を世間から否定されても、めーちゃんと一緒にいたいですね」
「恋ってのは、あそこまで人を変える物なのかねえ…」
ポツリと呟く野口先輩。しばらく2人は雅彦とミクの恋の行方について考えていた。が、明るい未来について考える事は出来なかった。
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