アイ・ストーリー
第四話「新しい仲間」 其の二

 研究所に到着すると、すぐに奏兄さんの姿を見つけた。
でも今日はいつもと少し違っていた。

「……ん?みんな、どうした?」
「奏兄さん……彼女は、いったい……。」


 奏兄さんの隣には見知らぬ女の子がいた。

 年は私達と同じぐらいで、黄緑色の髪の女の子。


「初めまして!私、GUMI(グミ)っていいます!」

 GUMIと名乗った女の子は、満面の笑顔で挨拶してきた。
見た目といい、名前といい……彼女は……。

「初めまして、私は氷室美冬。
えーと……GUMIちゃん……って、VOCALOIDだよね?」
「はい!そうです♪」
「GUMIはつい最近、別の研究所で製作されたVOCALOIDだ。
社会勉強の一環というか、しばらくうちの研究所で
預かる事になったんだよ。」
「へぇ~……そうなんだ。」
「よろしくお願いします!」

 礼儀正しいなぁ、GUMIちゃん……。
良い娘そうだし、これから仲良くなれそう。

 …………。

 ……それにしても、よろしくお願いしますって……。


 一瞬、私とKAITOが初めて顔を合わせた時の事を思い出した。


「……マスター?何ですか?」
「え?……べ、別に何でもない。」


 いつのまにかKAITOに視線を向けてる自分がいる。


「あ、そーだ!美冬、ちょっとKAITO借りてもいいか?」
『は?』

 奏兄さんの突拍子もないセリフに
私とKAITOは同時に奏兄さんに視線を向けた。

「お、相変わらず見事なシンクロ率だな。
実はさぁ、今度KAITOの派生VOCALOIDを製作しようって
昨日の会議で決定したんだよ。」
「僕の……派生VOCALOID……。」
「あぁ。ミクとかMEIKOとかには派生がいるのに
何だかんだとおまえの派生だけはまだ一人もいないだろう?
んで、色々事情があって最近のデータが必要だからさ。」
「……はぁ。」

 KAITOはあまり乗り気ではないような返事をした。

 ……どうしたんだろう?
さっきみたいにスーパーの特売の事を気にしてるとか?
もしそうだったら……。


『どんだけアイス好きなんだよ!!』


 と、つっこみを入れたい。


「……ん?どうした?おまえが乗り気じゃないなら
別に断ったっていいんだぞ?」
「……いえ、そういう訳では……大丈夫です。
研究のお手伝いが出来るのなら、僕は喜んで貢献します。」
「そうか!良かった!じゃあ、早速作業を始めよう。
一緒に来てくれ。」

 奏兄さんは早々と歩き出す。KAITOもそれに続こうとした。

「KAITO、待って。……本当にいいの?
KAITOが嫌なら、私が奏兄さんにちゃんと……。」
「……マスター。僕は本当に大丈夫ですよ。
気遣って頂いてありがとうございます。」


 KAITOはいつものように私に笑顔を向ける。

 ……何だろう。何か心に引っかかる……この感覚。

 でも、KAITO本人が大丈夫って言ってるのに
私が無理に引き止めてもなぁ……。


「……そっか。じゃあ、また後で。」
「はい、また後で。」


 研究所の奥へ入って行くKAITOの後ろ姿を
私は唯、見つめるだけしか出来なかった。


 と、その時。

「みっちゃ~ん!!!!!」
「わぁっ!?ル、ルコちゃん?びっくりした……。」

 後ろからいきなり抱きついてきたのはルコちゃんだった。

「あ……ごめんね?まさかそんなに驚くとは思わなかった。」
「え、あ……ううん。ちょっと油断してただけだから、大丈夫。
それより、どうしたの?何か嬉しそうだね。」
「えへへ、新しい友達が出来たからさ!ね、めぐちゃん!」
「はい♪」

 ルコちゃんが言った『めぐちゃん』とはGUMIちゃんの事らしい。

「めぐちゃん?」
「あ、私を製作した研究所のVOCALOIDは名前が二つあるんですよ。
私の正式名称は『めぐっぽいど』で、そこから。
何で名前が二つあるのか、詳しい理由は分からないんですけど。」
「ふ~ん……。」
「実は私の付き添いで兄もこの研究所にいるんですよ。
兄にも、もちろん名前が二つあります。」
「え、GUMIちゃんのお兄さん?どんな人?」
「すっごく格好良くて、優しい人です♪」
「……何となく今すぐ会ってみたい。」
「あ、でも……今何処にいるのか分からないです。
すぐ一人でふらっと出歩いちゃう人でもあるんですよ。」



 すっごく格好良くて、優しいGUMIちゃんのお兄さん……。



 私はその言葉を聞いて、GUMIちゃんのお兄さん像を
美化してしまった事を、後悔する羽目になる。



……続く。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

アイ・ストーリー 第四話 其の二

もそもそと更新しております。

まさかの(?)GUMI登場です。
アイ・ストーリーを考えた当初は時期的に
GUMIの存在はもちろん無かったのですが
『せっかくがくぽの話なんだから!!』と、登場させました!!

とりあえず最初に考えてた内容よりは流れがずっと良くなったので
個人的には満足してます。
ただ、GUMIに今後マスターが出来るのかとか
その辺は全く考えていません←

そしてだいぶ前に説明した(?)KAITOの
派生VOCALOIDネタがやっと出せました。
もちろん第五話(予定)の伏線ですw

文中のミクやMEIKOの派生とは多分存在どころか
名前すら登場しないと思いますがハクとかネルとかMEITOの事です。
どっかにいるという事だけ頭の隅にでも……ね?

追記:もしかしたら読んでない方がいるかもしれないので
   一応、アイ・ストーリーの世界観の補足。↓
   http://piapro.jp/content/wlxdfdxbi9l9v5j6

閲覧数:262

投稿日:2009/08/21 19:31:05

文字数:1,942文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました